キリストの花嫁
「朋子のお腹の傷、分かるわね。」
ハーブティーをいれ、バームクーヘンを切って出してくれました。
「はい。分かると思います。」
「何でだと思う?」
「高校三年生の時、ラブレターを渡したことがあります。手ひどく振られちゃいました。ほかに決まった人がいるって。」
「決まった人?」
「嫁ぎたい相手がいると。それで振られました。」
「その相手。誰だと思う?」
「赤ん坊の父親じゃないんですか。」
「イェズス様のこと。」
「そうなんですか?」
「決まっているわ。あの子の夢だったんだもの。小学校に入る頃から言っていたわ、シスターになる、シスターになるって。」
田村君は何がどのようになったのだか、こんぐらかりました。
「あの子も田村さんを慕っていたはず。でもノーチャンスだった。相手がイェズス様ではね。」
のち、和式美女医師のお話を聞くまで、また田村君は少しずつ物語を組み立て始めていました。自身を納得させるための......
“ ノーチャンスだったにしろ、俺は振られたわけでない。無下に断られたのとは違う。もしかしたら朋子のほうでも思っていてくれたのかも知れない。朋子はキリストの花嫁になろうとした。であるなら独身のまま俺ときょうだいでいられたのだ。今となってはきょうだいのようにしているではないか。プロポーザルの返事はYESと解釈すべきだった。あのとき俺が読み違えたのだ。”




