のろけてすみません
美人と言わずに美女と言えと指示される現代式和風美女ドクターへ、
あれから伯母様をお招きして食事会をしました。留守のあいだサ責の姪っ子さんが朋子といてくれた。
親父とお袋が『祝洗礼』なんてものを包んでくれた。ここ四年ぐらい、お袋は入門講座を聞きにカトリックの教会へ通うのだとか。ときどき親父を引っ張って行くようです。
「わたしはマリア様のいる教会が好き」とお袋は言います。
真菜先生、洗礼が決まって以来、伯母様は集中講義してくださいましてね。
『カトリック教会のカテキズム』という本を使って、大事な教えをピックアップしながら授業して下さった。聖書もあわせて使って。むしろ大部分は聖書ばかり見ていました。
自分でも新約聖書、それから詩篇を読み通しました。創世記から出エジプト記の十戒あたりまでも読みました。
なるべく全部読んでからあっちへ行こうと思っています。
「ノートをとりなさい」と、難しい勉強だったし厳しい講師でしたよ。
伯母様は、僕をカトリックにする考えはなくて、お父さんの教会で伝えているキリスト教と共通のところを選んで教えてくれました。
使徒信条をゆっくりじっくりやって、暗唱するようにも指導されました。僕は使徒信条をそらで言うことが出来ます。
しかも、伯母様は気をきかせてプロテスタント教会で唱えるほうを授けてくれた。
同じ使徒信条でもカトリックとプロテスタントとでは言葉が違うのですね。
暗唱のみではダメで、内容を信じる事が洗礼を受ける条件だと言われるから、この一週間をかけて信じるように頑張りました。
お父さんからは洗礼名をいただかないけれど、名乗るぶんには何を名乗るのも自由だと伯母様が言われます。僕は「テレジヲ」にしました。
今日からテレジヲ田村になりました。
伯母様には感激します。何度か僕は去年から伯母様の教会にお邪魔していますが、いつもお隣に掛けます。
ミサが始まる前、伯母様はロザリオを爪繰りながら呟くように祈っていられます。
僕と二人で食事するときは、ちょっと目をつぶって十字を切ります。いつも静かな祈りをする伯母様です。
今日、食事会の席では、雄弁な感謝のお祈りを奉げてくださいました。僕の洗礼を感謝してくれ、僕の祝福を祈ってくれ、親父の祝福を祈ってくれ、朝早くから食事を準備したお袋の祝福を祈ってくれ、みなで美味しく楽しい食事が出来るお恵みを神に感謝されました。
凄い人です。そういう祈りをするのはプロテスタントの牧師方だと思っていました。
一週間でも二週間でも泊まれるように大型スーツケースをいっぱいにして、タクシーに乗って帰ってきました。
早速支度をして朋子とのsmooching timeを持ちました。今日ばかりは80分間のノルマは難しそうです。
それから先生。以前のスースーいう寝息のことです。今はスースーでなくて、おとといあたりから、くーくーと鼾をかくようになりました。
胸に顔を埋めるとすぐに、小さく可愛く、くーくーとやりだします。
「朋子、そろそろ時間だよ」と揺り起こそうとしますが、余計体をあずけてきて離れたがりません。手を回してくることがあります。
今の時期だからか、じっとりと寝汗をかきます。でも僕は迷惑でありません。
朋子独特の匂いは、汗の匂いだと思うのです。
先生が言われたように、これを「体臭」といってしまったら失礼も良いところです。
不快な臭いでないどころか、世にも神秘的な匂いです。心が静まるにおいです。
僕は朋子の汗の香に包まれている時、幸せ者です。
洗礼の日にのろけてすみません。




