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オタクと美少女はバンドでギャルゲーソングを知らしめたい?!  作者: 獅子尾ケイ
再誕!完成されたギャルゲーソングバンドへの道編
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第五十四話「市長のお父さんにギャルゲーソングは通じるか?」

 まさか、芹沢さんのお父さんが市長だとは思いもしなかった。


 どういう経緯で僕らの学校へ転校してきたかは家庭の事情であるものの、父親が市長であることは大いにおどろくことである。


「……ということは、ギターを芹ちゃんに教えていたというお父さんが、このしちょーさんってコト?」


「えっ、ええ。つまり、そういうことですよね」


 ひそひそと響子や瑠奈は小声でそう話している。


 それだけ、まだ信じられずにいるのだろう。しかし名刺をもらい、その名前を見たら同じ名前であることがわかる。


「こっ、この度は娘さんにこんな音楽をやらせて申し訳ありませんでしたぁぁ!」


 僕はいきなりその場で土下座をして、市長こと芹沢さんのお父さんに謝った。


 ギャルゲーソングなどをやらせてしまい、変な同好会に巻き込んでしまったことに僕はどうしようもなく恥ずかしさを覚えた。


「きええええい! 岩崎ぃぃぃ。なにが、こんな音楽だぁ! ギャルゲーソングをなんだと思っているんだ」


「金本先輩はだまってろぉぉぉ! というか、その名を口に出すんじゃあない。でていけぇぇぇ!」


 いきなり気持ち悪い声を上げる金本に、僕も同じような声で返す。突然の土下座と、僕らのやりとりにみんなはポカンと口を開けたまま。


 しばらくして、正気を取り戻した僕に、芹沢さんのお父さんが口を開いた。


「岩崎君、なにも土下座をする必要はないよ?」


「いやぁ……しかし、練習していた曲がかがわしいゲームに使われていますし、やっぱり親として由々しき問題かなぁと」


「うっ……うむぅ」


 僕がそう話すと、芹沢さんのお父さんはどこか納得してしまうような表情を見せた。


「そんなことないよ! 岩崎君。わたしはこの曲のために頑張ってきたのだから、全然悪く思うことないよ」


「……芹沢さん」


 そう芹沢さんは力強い声で、僕に話す。


「そうですよ、先輩! 俺たちはギャルゲーソングの良さを広めるためにバンドをやっているんですし、岩崎先輩がそんな考えではだめですよ」


「「そーだ! そーだ!」」


 瑠偉が続けて話すと、その後ろから響子たちのヤジが飛ぶ。


「そっ、そうだよな……いや、でも市長の娘にギャルゲーソングは……ううん」


 瑠偉の言うことに間違いはないのだが、僕の中ではそう思う気持ちもあった。


 すると、芹沢さんのお父さんが大きな笑い声を出す。


「はっはっは! 君たちは本当に面白い子たちだね。あきらの言っていた通りだよ」


 笑い声に僕らがおどろくと、そのまま話を続ける。


「この子が突然にギターを始めて、聴いたことがない曲を練習していたからどうしたと思ったが、君たちとライブをやるためだったとはね」


「はっ……はあ」


「あまりにも必死にギターを弾いていたから、力になったけれど。それは、結果的に良かったよ」


 芹沢さんを見ながら、機嫌が良さそうな口ぶりで話している。そこに、僕は尋ねてみる。


「あの……前に聞いたのですが、僕らが演奏した曲を気に入ってくれたのは本当ですか?」


「ん? ああ、そうだね。わたしも昔はギターを弾いていた者だが、曲を聴いた時は実に良い曲だと思ったよ」


「ありがとうございます。けど、その……原曲はいわゆるギャルゲーソングなのですが、ご存じないですよね」


 ギターを弾いてきたということならば、いろいろなジャンルの曲を聴いてきたのだろう。その中で、ギャルゲーソングを知るはずもないし、無縁だったと思う。


 そんな得体のしれないジャンルの曲を知って、どう感じたのだろうか。


 アニメの曲とは違い、マニアックなギャルゲーソング。あまり、いい印象にはならないと僕は芹沢さんのお父さんを見ながら思った。


「もちろん、初めて知ったね。ギャルゲーというものがどういうゲームなのかも、申し訳ないが知らなかったよ」


「ですよね……ははは」


 僕は苦笑いを浮かべながら、そうたどたどしく答える。


 たとえ曲が良くても、ギャルゲーに抵抗がある人もいる。もしかすると、この人もそうではないかと不安になった。


 だが、芹沢さんのお父さんが放った言葉に僕はそれが間違いであったと気づかされる。


「だから、知らないからこそ良い曲であったと思えるのではないかな? それがたとえ、いかがわしいゲームだったとしても別に否定はしないさ」


 ギャルゲーソングはオタクしか好まないものと思っていたし、それをいろいろな人に聴いてもらって考えを改めてもらう。


 僕らの部活はそういう目的で活動しているが、はっきりと言葉にしてそう言ってくれる人に出会えた気がする。


 少なくとも、芹沢さんのお父さんはギャルゲーソングを良い曲だと言ってくれたのが、僕が同好会をやってきてよかったと思えるものだった。


「それに曲もいいけれど、娘がステージに立って演奏した姿を見れたのが、今日の大報告会で一番感動させてもらったよ」


「……親バカだねー」


 響子が失礼なことを言うと、校長がわざとらしくせきをする。


「んんん! 市長、そろそろお時間では?」


「おお、そうでしたな。この後は、学校関係者のみなさんと会議でしたね」


 そう言って芹沢さんのお父さんは腕時計で時間を確認すると、校長と部屋を出そうとしていた。


「あの! 今日は、僕らのライブを見に来てくださってありがとうございました」


「「ありがとうございましたー」」


 僕がお礼を言うと、その後にみんなも続けてお礼を言う。


「いやいや、こちらこそ良いライブをありがとう。今度、我が家に遊びに来るといい。あきらのお友達なら、大歓迎だ」


「市長。では、参りましょう」


 最後に芹沢さんのお父さんがそう言って、部屋を去っていく。僕らは頭を下げ、その姿を見送った。


「はあああああ! 緊張したぁぁ」


 あっという間の出来事に僕はそうホッとしたように口にする。


「あの……みんな、おどろかせたみたいでごめんね」


「いやいや! まさか、二人が親子だったなんてね。縁というものは近くにあるらしい」


「金本先輩が変なことを言わなかったから、安心しましたよ」


「失礼だな、岩崎君! 僕だって、緊張くらいはするものだぞ」


 金本が不満そうな声を出していると、僕らは笑う。


「芹沢さん。全然、気にしないでね? 今は、ライブが成功したことを喜ぶできだし」


「そーそー! 結果的にはいいライブになったと思えばあたしらの勝利ー。ギャルゲーソングを人前で弾けたんだからさー」


「ですね!」


 そう。響子が言うように、結果はどうあれ僕らのライブは良い出来だった。今日、演奏を聴いた人の中にも曲を好んでくれた人もいるはずだ。


 芹沢さんのお父さんがその一人なのだから、ギャルゲーソングを広める活動としては、成功したと言えよう。


 軽音楽部の代わりで出た大報告会の演奏はこうして終わった。僕らのバンドは、また一つ成長したと思えるようなイベントになったと僕は思うのだった。 

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