第三十二話「いけ、岩崎!ギターパートはこれに決めた!」
ギターパートの譜面を完成させ、僕らは響子たちにそれを伝える。
「へー! 完成したんだね。それで、どんな感じのギターになったの?」
興味深そうに話す響子の後ろに金本の姿があった。
「ふむ! 僕のアドバイスをもとに、二人で完成させたようだな……岩崎君」
そう話す金本に、僕と芹沢さんは視線を合わせてうなずき。譜面を机に置いた。
「ええ。金本先輩の助言を聞きつつ、僕たちのギターパートを作り上げました! 以前よりも、かなりの出来で」
「では……見ませていただこうか、このニューギターの性能とやらを」
「金ちゃんが、あの彗星っぽい人の真似しててウケるー」
「茶化すんじゃないよ、馬場さん! どれどれ」
響子に笑われながらも、金本は黙って譜面を読んでいく。その様子を僕らは、緊張しながら見つめた。
しばらくの時間が流れる。
前の時みたいなすぐに見終わるわけでなく、金本は時折足でリズムをとっている。
「岩崎君。金本先輩はどう思っているのかな?」
「……わからないけれど、よく読んでくれている気がする」
芹沢さんにそう尋ねられた僕は、金本の雰囲気を感じつつ答えた。
「ねーねー! 金ちゃん。ギターはどんな感じなん?」
「おっ、おい響子! 今、金本先輩が集中しているんだから邪魔したらブチ切れるぞ?」
「ねーねーってばー!」
僕の声に耳を傾けることなく、響子は金本の肩を激しく揺らす。
「きええぇぇ! だまらっしゃいー!」
金本は奇声を上げ、思いっきり椅子から立ち上がった。くるりと振り返り、僕に向かって近づいて口を開く。
「岩崎君。このギターはある程度弾けるのかね?」
「え? まっ、まあ……一応」
ギターパートを作る際、ある程度は弾いて覚えていた。そうことを金本に伝えると、僕に無言でギターを手渡す。
「あの、金本先輩? なぜ、ギターを? それに、まだこの譜面でいいか感想を聞いていないんですが」
「とにかく、この場で弾いてみなさい。芹沢さんも、ご一緒に」
「わ、わたしもですか?」
急に言われた芹沢さんは驚いて、僕に顔を向ける。
謎の圧力を感じつつ、弾かなければならないという雰囲気で僕らはギターを構えた。
「じゃあ、イントロのところを軽く……芹沢さんは一緒に弾けそうなところだけで大丈夫だよ」
「うん。けど、わたしも覚えているから……やってみるね」
そうして僕らはピックを手に持ち、ギターを弾こうと始める。全員がその様子を見守っている中で。
「じゃあ、弾きますね。せーの!」
芹沢さんに合図を送り、僕は右手のピックを弦へと振り下ろす。
ギターに繋いだアンプから、僕らが弾く音色が部室に響いていく。
曲のイントロ。しかも、最初のフレーズを繰り返して弾くだけの音。
それでも、弾いた音からはこれがギャルゲーソングの曲だとはっきりとわかるものだった。
ーージャカジャカ! ジャラランー!
僕の弾くギターに、芹沢さんが上手く合わせて弾く。
一緒にギターを弾いて譜面を作ってきたのか、芹沢さんのギターは安定した音を出して重ねていた。
互いに違うパートをやるけれど、一つの音へと形作る。
短いながらも弾き終わり、僕らのギターがフェードアウトしていった。すると、みんなはおどろいた顔をして僕らを見つめる。
「先輩……本当にそれ、二人で作ったんですか?」
「あ、ああ。そうだぞ? 琉偉のベースラインにも、合うようにきちんと考えたフレーズだ」
「いや、すごいですね。ギターだけなのに、原曲ってわかります」
琉偉がそう話し、口を開けたままでいる。瑠奈も、同じくおどろいたまま黙っていた。
「いやー、いいじゃん! すごいよ、キョウちゃんたち。いや、すごーい!」
響子はすごいの一言しか言わないが、やたら気に入った様子でいる。
「なんかわたしたち……喜んでいいのかな? 岩崎君」
「まあ響子たちは、これで良いって感じな雰囲気だよね」
好印象なみんなに少し安堵するが、問題は金本の反応だ。ギャルゲーソングを知り尽くす、この男からの評価が重要になる。
「あの……金本先輩?」
僕がそう金本に尋ねると、その口を大きく開けてさけぶ。
「ブラボー! おー、ブラボー! 素晴らし過ぎて、僕は感動している!」
「……へ?」
金本はいきなりさけんで、僕の手を握り大きく振るう。芹沢さんにも同じように、握手をし始めた。
「いやあ、君たちが作ったものがここまで化けるとは思わなかった。譜面を見て、それを確信したよ」
「は、はあ」
呆気にとられる僕らに構わず、金本はひたすらしゃべりまくる。
「原曲を上手く再現したギターのリフ。そして、きちんと主人公たちのイメージを意識したフレーズ! まさに完璧な楽譜じゃないか」
「あの、これで良かったってことでいいんですか?」
「当たり前だろう! このギターに、他の楽器が合わされば素晴らしいカバーになる! 間違いない!」
金本は満足そうに話し終わり、笑いながら去っていく。
「いや、言うだけで言って帰るんかい」
「けど、金本先輩からお墨付きをもらったからギターはこれで決まりでいいよね?」
芹沢さんは嬉しそうに話した。どこか安心したような、達成感得た笑みで。
「ということは、これで全パートの譜面が完成! 本格的なバンド練習ができますね!」
琉偉が興奮気味に話すと、部室がわあっと歓喜にあふれる。
「岩崎先輩たち、お疲れ様でした! いやあ、おめでとうございます」
パチパチと拍手に包まれる僕と芹沢さんだが、僕はみんなに向かって話す。
「今は喜ぶ暇はない! 楽譜はすべて完成したんだ。すぐにでも楽器をもって練習……そして、ライブを目指すぞ!」
楽譜を完成させて喜ぶのは早い。きちんと、曲にしてからだ。そして、それを金本たちに聴かせる。
そんな思いを胸に、さっそく練習を開始した。
この曲を僕らバンドのセカンドソングとして、ものにするために。




