五章26〜“言葉で表す距離”
俺の正面にレイス、俺の右隣りにエイルーナが座っている。
レイスの隣にはミシェイルが座りその隣にはメリエルが…そしてその向かいにルシエルが座っている。
何かと言われると簡単である。
ルシエル達には世話になったので、本日の夕食をご馳走する事になり、適当な店に入ったである。
木造りのテーブルと椅子。
年季の入った店のレトロな雰囲気は少し落ち着かせてくれる。
しかしそれはあくまで店の内観のものであって、一纏めにした雰囲気の話ではない。
価格の安いからかこの店は冒険者風の者たちから、さっきまでトンネル掘ってましたと言いそうなドワーフ達が酒を飲んでどんちゃん騒ぎをしている。
簡単に言えば大衆居酒屋の雰囲気そのままである。
そんな中で適当に飲み物や料理を頼む。
ちなみに全員ガキンチョなのでノンアルコールである。
「今更なんだけどさ、ルシエル達はどこに向かってるんだ?」
沈黙を破って話を始めるのは俺……。
一部を除いて別に仲が悪い訳ではないのだが、やはり少し壁がある…というかルシエルを中心に壁があるあって、メリエルはみんなどうやって対応すればいいのか理解できてないってところだろう。
俺からすればレイスが静かな事もあるんだなと思う程度である。
まぁこれからの内容次第じゃ、このままじゃいけないのだが…。
「別に何処ってのはねぇな」
ルシエルの目的からすると、目撃情報が無い以上とりあえず移動して情報を集めていく方向性なのだろう。
そしてそれらしき情報を得ればそれを追う。
「そっか、今後の目的地とか決めてないのか?」
「…ああ、何せ情報がねぇからな」
俺が聞きたい情報は聞き出した。
問題は遠回しに行くか、ストレートに行くかである。
そしてルシエルの性格…よく知らないが、遠回しにってタイプじゃなさそうな気がする。
レイスに視線を向けると、レイスも軽く頷いている。
「ルシエル、仕事の依頼がある」
俺の言葉にミシェイルとエイルーナも手を止めて俺に視線を向ける。
話に興味を持たずに料理に夢中なメリエルは置いておくとしよう。
「…とりあえずリズまで、俺たちの護衛をして欲しい…、お前が護衛してくれるなら心強いからな」
「……別にいいぜ?」
あれ?
なんか理由とかなんだとか色々聞かれたりするのかと思ったがあっさり了承を得ることができた。
なんか拍子抜けである。
しかし物凄く、嫌そうな顔をして、俺に視線で訴えてくる1人の女性がいる。
レイスの予想通りだ。
レイスもルシエル達に頼むのは反対しなかった。
まぁ場合によっては案内人も必要かもしれないが、戦闘力としては申し分ない…、そして今変に裏切ったりしなさそうだと……恐らくメリエルがあんな感じだからだろうか?
少し一緒に過ごすだけでもわかるが、ルシエルはメリエルの事を常に気遣っている。
まぁ完全に放置してる時もあるけど……。
ミシェイルは恐らくそうと決まれば普通に対応するが、エイルーナはどうかという話をしていた。
エイルーナは別にルシエルを嫌ってるわけじゃないのだろうが、非常に敵対心を剥き出しにしている。
その理由が理由だけに残念な感じになっているが…。
ただ言い包めるという気はない……敢えてそれには触れないという選択肢で行く。
「じゃあ、しばらくよろしく頼むよ」
俺の言葉にひらひらと手を振って返事するルシエル。
「じゃあ改めて、レイス・アルメニアだよ」
「ミシェイルだ!よろしく」
レイスが簡単に名乗れば、ミシェイルがそれに続く。
特にミシェイルはどうという感じには見えない。
「……エイルーナ・ナスタートです、よろしくお願いします」
エイルーナは無視された事に少し冷たい視線を向けてきたが、俺がスルーしている事で諦めたのかルシエルはスルーして、隣のメリエルに自分の名を教える。
「わかった、メルって呼んで?」
「私もルーナでいいですよ」
メリエルの屈託のない笑顔に一瞬たじろいだように見えたのは気のせいだろうか?
「私もメルと呼んでいいか?」
「うんっ!」
嬉しそうに笑顔を見せるメリエル。
自然とこちらも表情が柔らかくなっている気がする。
しかしミシェイルが何かを思い出したように固まると、すぐに俺に鋭い視線を向けてくる。
「な…なんですか?」
「ずっとレオに文句を言ってやろうと思っていたが、タイミングがなかった」
文句ですか?
俺何か文句言われるようなことしたっけ?
少し構える俺を睨むように見つめるミシェイル、俺たちに視線が集まる。
今回はメリエルもまじまじと見ていて、逆にルシエルが興味なさそうに飲み物を飲んでいる。
「お前はいつまで私をミシェイル様と呼ぶのだ!敬語もそうだし」
「…へっ?…あー、すいません」
「違う!」
平謝りしたからか椅子から立ち上がりながら机を叩いて声を上げる。
それでも騒がしい店なのでこのテーブルに視線が特別集まるわけでもない。
「あ、えーっと…ごめん?」
「……」
まだ怒りの含まれた目で俺を見て黙っているミシェイル。
俺を見て笑いを堪えているレイスに、呆れたように俺を見るエイルーナ。
何故か応援しているように拳を握るメリエルと欠伸するその弟。
レイスがなにか口パクしているのを必死に見て、唇を読むように努める。
なんとなくミシェイル、という動きだけ理解したと同時に何を求められてるのかもわかった。
「悪かったってミシェイル」
「よし!仕方ないから許してやる」
何故か少し照れて顔を背けているが、なんとか許してもらえたようである。




