五章24〜“姉弟の正体”
ストーンタイガーは群れで行動する生物らしく、単体で遭遇する事は稀だそうだ。
単体ではそこそこ強い程度らしいが、集団戦闘に長けた魔物なので危険度はやはり落ちるらしい。
だから俺1人で倒せたのね…納得納得。
俺1人でAランクの魔物を倒せるくらい成長したのかとちょっと調子に乗るところだった。
さて、あまりその事に触れずに話を進めようとしてくれるナタリアはやはり大人なのだろう。
まぁ後からレイスの餌になるのは仕方あるまい。
自分のやらかした事なのだから甘んじて罰…ならぬからかいを受け入れるとしよう。
「傭兵崩れの冒険者だ、見た目こそガラの悪い奴らだが信頼は出来る、魔物相手の経験も豊富で腕も立つ、この辺の地理には詳しいから案内としてもいいはずだ」
「地理に詳しいのは助かるね」
まずい、さっきの醜態からあまり頭が…というよりナタリアの説明とかが入ってこない。
確か紹介してくれる予定の冒険者の情報を提供してくれている。
レイスがなんだかんだ対応はしてくれてるようなので、多少俺が腑抜けてもいいだろう。
いやよくないんだけど、ちょっとまだ折れた心の立て直しの方が俺の中では早急に対処しなければならない案件だ。
とりあえずリズまでのルートの護衛と案内人は確保できそうだ。
ナタリアの事を過剰に信頼しているわけじゃないがなんとなく大丈夫な気もしなくもない。
しかしナタリアが非常にメリエルを気にしている気がする。
メリエル本人が何か余計な事をしているわけじゃあるまいし…。
本人はというと、色々な人がいるのが珍しいからか周囲をキョロキョロと見渡している。
子供みたいだと言いたいが、精神的に幼いってより、そもそも俺たちは…俺を除くメンバーはみんな子供なのだ。
今でも俺やレイスは10歳、ミシェイルは11歳で、エイルーナは12歳。
ルシエル達も見た目からして多分変わらないのだと思う。
やけに落ち着いているエイルーナやルシエル、何かと達観してるレイスはやはり年不相応なのだと思うし、ミシェイルはあれでいて結構大人ぶった子供って感じだ。
そう考えるとメリエルは年相応なのかもしれない。
そんな事を話していると真面目な顔をしたナタリアが別の話を切り出してくる。
「少し2人で話してぇ…」
ナタリアはそう俺に告げてから、俺の後ろの2人に視線を移している。
「わかりました、レイス、メリエルさん…ちょっと…」
レイスが一瞬嫌そうな顔をしたが、納得はしているらしい。
「えっと行こっかメリエルちゃん」
「…レオリス離れるなって言ったもん」
レイスがメリエルの肩を叩いて、付いてくるように促すが、メリエルは首を振ってそれに抵抗を示す。
「ちょっとだけ、ちょっとだけレイスと待っててください」
メリエルは怒りを示すように頬を膨らませている。
てかなんか俺、懐かれてる何もしてないぞ?お菓子すらも与えてない!
「むぅ〜…わかった…」
渋々という形で了承を得たので、レイスと共に少し離れていく。
ナタリアもそれを見送った後俺に視線を移す。
「剣聖…何故アレと一緒にいる?」
「アレ?」
アレとは…メリエルの事だろうか?
レイスとは一応一度会っているはずだしそんな言い方はすまい…多分。
となるとメリエルの事と考えるのが自然だが…彼女はなんだというのだろうか?
「知らねぇのか?」
「……あの人の弟と少し関わりが出来てしまったので、成り行きで一緒にいますが、メリエルさんが何か?」
ナタリアは整った顔を歪めてため息を吐く。
この人は美人なのに表情と言葉遣いで損してるよな本当に…。
「弟…ルシエルも一緒か…」
あれ?なんか雲行きが怪しい?
メリエルだと別に何も思わないが、ルシエルの名前が出るとなんか悪い事に聞こえてくる不思議。
「あいつらはな、どういう事かわからねぇ、変異種なのか魔法か何かで取り繕ってるのか…」
「えっ?ちょっと待ってくださいよ、ルシエルやメリエルさんが……」
あ、何か色々あったり、人間にしか見えない見た目のせいで俺は大事な事を忘れてた。
俺は誘拐されて目覚めてからルシエルと戦った時の記憶が蘇ってくる。
確かに体を貫いたその感覚を…、そして再生していく化け物染みた様を。
俺はこの世界の魔法について詳しくないし、生物についても詳しくはない。
もしかしたら再生魔法というものがあってそれを使用して再生してのかもしれない。
だがあの感じ…俺は何処かで見た気もしなくない。
ダメだ記憶にない……。
そもそも俺の記憶なんて前世の記憶もあって、漫画やアニメの世界観に似た世界だからか、こんがらがってわけわからなくなる時だってある。
基本役に立たない。
しかし俺の表情を見たナタリアは目を細めて俺を睨むように見つめる。
「心当たりはないわけじゃなさそうだな」
そんなに顔に出てたのだろうか?
しかしルシエルと戦った記憶で、確かに気になるのは本心だ。
「まぁ…言われてみれば…」
ナタリアは一瞬周囲を確認しつつ、視線を一点に向けたまま話してくる。
おそらく周りに聞かれていないかの確認と、その視線の先にはメリエルがいるのだろう。
「知ってるやつはすくねぇが、あの姉弟は鬼だ」




