五章18〜“姉弟”
「おい、起きろバカ」
日々のバイトの連続…、さらにはテスト前で勉強もしていた俺はすでに体力の限界を体が訴えてきていた。
「眠いんだよ…」
「飯くらい食えよ」
今は昼休みだ。
仲のいい友人達と集まって食事をしながら談笑する。
もっとも全員がそういうわけでもない。
今はテスト前…1人で黙々と食事をしながら勉学に励む真面目な者もいる。
俺もテスト前は勉強する方だが、あんまり学校ではやらない。
何故かと言われると…なんとなく?無理にでも理由をつけるなら集中出来ないからだ。
「また遅くまでバイトか〜?いい加減にしねぇと身体壊すぞ?」
「……」
ケンジはたまに口煩い!
基本的に適当なところが目立つがたまにお前は母親かとツッコミたくなるほどうるさくなる時がある。
そんな時は大概俺の為なのだが…どうも素直をには受け辛い。
どっちかっていうといつもは立場は逆なんだけどな…。
「ったく…」
そう言ってケンジは買ってきていたパンを食べている。
身体が怠いし重い。
そんなに昨日夜遅くまでやったかな?
そんなつもりないんだけど…。
意識は深く沈んでいった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目が覚めた。
決して大きくないが、綺麗に手入れされているベッドに物の少ないながらも荷物の置き場所に困らないようにスペースを意識してレイアウトされている一室。
間違いない、宿である。
「昔の…夢……!!」
寝ぼけていた頭に意識が覚醒する。
同時に自分の…仲間の状況を思い出す。
「ぐっっ!!」
慌てて立ち上がろうとするが、身体の傷は癒えている様子はなく、支えることもできずに力なくベッドからバランスを崩して落ちてしまう。
両腕を立ててその力で半身を起こして立ち上がるために力を込めるが、扉の外から気配を感じた。
「ルシエルか?」
質問と同時に扉が開く。
ノックはなかった、ちなみにこの世界にそういう文化が無いわけでもない。
「…起きたの?」
扉をあけて入ってきたのはルシエルと同じ青い髪に赤い瞳、しかし癖のある長い髪…女の子だ。
「え、…っと、どうも?」
唖然としてしまう。
少女の服装はまさに下着だった。
大きくはないものの膨らみがわかる胸に、細い足が見える。
正直目のやり場に困る。
「メリエル・ノーバルギア…ルルのお姉さん、あなたは?」
ルル?…ノーバルギアってことはルシエルの事だろうか?
つまりルシエルの姉なのか?
「…レオリス・アストラル……」
とりあえず名前を伝える。
メリエルはそれだけで満面の笑みを浮かべて俺の手を握ってきた。
顔に熱がある気がする。
「ルルのお友達?」
キラキラした目で俺を見つめてそう質問してくる。
ルシエルの友達?俺が??
あいつのせいで捕まって、何かわけわからない理由でストーンタイガーと戦わされた。
今でも理由も良く分からない…。
今の怪我はルシエルのせいで負ったのだと言っても言い過ぎではないのでは?
最後の記憶的にはもしかしたらその後助けてくれたみたいだし?いや、ここまで運んでくれてるのだから助けてくれてるのだろう。
でもそもそも俺を攫ったりしなければ怪我は負わずに済んだのでは?
うん、そうに違いない。
俺は真っ直ぐメリエルの目を見返す。
「あ、はい、友達.かもです」
「嬉しい!ルルの初めてのお友達」
凄く、凄く嬉しそうである。
多分姉といっても歳は離れていないのだろう。
てか振る舞い的にもルシエルの方が兄に見えなくもない。
まぁあれはあれでちょっと…。
この子はなんか子供っぽい?よく分からないが、少なくともルシエルの纏う雰囲気とは全く違って姉弟っぽくない。
なので友達かと聞かれたら違うなんて言えなかった…言いにくかったんだ。
「あ!、ルシエルは何処ですか?俺の仲間は?」
少女の下着なんかで動揺して仲間の事を一瞬でも忘れるなんて俺はバカなのか…くそっ。
「ルルならお仕事、レオリスはじっとするの」
焦る俺をニコニコとしたメリエルが肩を押してベッドに寝かせようとしてくる。
俺は抵抗……アレッ?
抵抗しようとすると力が…力が入らない訳じゃない。
ただシンプルに力負けしてるのだ。
前言撤回……やっぱルシエルの姉弟である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〜エイルーナ視点〜
「助けに…ですか?」
流石に意味がわからないと聞き返すが、それに答えることなく私の拘束を解いていく。
「そう、助けに…仕事だがな」
遅れて帰ってきた返事……正直全然理解が追い付かないが、拘束は解かれたのだ…助けに来たという言葉とりあえず嘘ではないのかもしれない。
「……そうですか」
体に痛みを感じる箇所が多いが、そんな事を言っていられる状況でもないのかもしれない。
痛みを堪えて立ち上がると、男は私を見つめていた。
「…何ですか?」
「礼は?」
「仕事なのでしょう?」
私を見つめてくる男に睨み返すように視線を送る。
男は仕事だと言った……なら私を助けるのは当たり前なのだ…まぁ礼を言わないのは自分でもどうかと思ったが…。
「……そうか、まぁいい…着ろよ?」
そう言って男は自分の白いコートを脱いで手渡してくる。
今更だが乱暴されかけた私は服が破けていた。
慌てて腕で隠して体を隠して睨みつける。
「礼は充分貰った!」
その表情はカンに触る……。
私はこの男と仲良くなれそうにない…そんな気がする。




