五章10〜“先行投資”
買い物をした。
そこそこのブランドらしい弓。
これはレイスの分だ!そのお値段銀貨8枚。
有名メーカーらしいバックラー。
ミシェイルの盾だな…こちらのお値段は銀貨3枚ほど。
全員分の防具。
基本的に部分鎧になる。
全員成長期なので成長を妨げが無いようにするためにそこはよく話し合って選んだ。
また戦うよりも逃げることに重点を置き、強度よりも軽さである。
後は待ち合わせのローブの耐魔コーティングの確認などの整備。
全員ナイフのような短剣は別であった方が良いと、お揃いの短剣を5本、数が合わない?レイスはなんか2本。
揃いも揃ってセットで合計金貨1枚。
さてここからが本題。
ミシェイルのご要望のドグナロク印のレイピア!
なんとそのお値段聖貨2枚飛んで金貨5枚。
さて、非常に俺は驚いた。
しかしあれだ…この世界の通貨は4種類だ。
銅貨銀貨金貨聖貨と…。
つまり銅貨は千円、銀貨は一万円?いやいやなんかよくわからなくなってきてるぞ?
ついでに昼食は銅貨2枚だった。
もちろん物々交換なんてのも流行りだ!
銅貨1枚にも満たないようなのとかは銅貨1枚に値するまで足すか、妥協するか、物々交換を持ちかけるかなど様々だ。
何が言いたいかというと、金銭感覚がよくわからない。
てかみんなお小遣い金貨1枚だよ?
合計聖貨2枚金貨7枚銀貨1枚。
しかしながら高いのか?いや、安くはないのだろうよく分からんが…。
それでも俺たちの命に関わる可能性がある以上、金に糸目をつけるつもりはない。
しかし、やらなければならない事がある。
「えー、いくらか安くなりません?」
「「………」」
勿論沈黙が走る。
レイスはなんかニヤニヤしてる。
ミシェイルは首を傾げている。
エイルーナは無表情だ。
ちなみにオヤジさんは…そういうのは予想してましたという顔…。
なんか恥ずかしい。
俺は剣聖の一族ですってのを隠さず過ごしてるからみんな貴族である事、つまり金がある事は知っている。
さらに言えばなんか剣聖…武闘派なんだからそんなケチ臭いイメージはなく、ドーンとお金を使うような…これは俺のイメージだな、うん!
しかし何が悪いっ!
節約は大切じゃないか!
このお金は俺のジィジやママンが溜め込んだお金だ!大事に使わなければならないのだ!
それに俺の持っているのは学費と言う名の保険だ!
最悪入学費を払わなければならないかもしれないからこう大金を持っているわけで…。
しかしオヤジさんはちょっと待てと言って裏に入って行った。
数分程度で出てきたオヤジさんの手には剣が握られていた。
「これを旅に持って行ってくれませんかね?」
「…えっ?」
同時にさっきの話を思い出した。
剣聖に自分の剣を持って貰う事…その憧れについて…。
「そしたらお代は無しで構いません!」
オヤジさんの真っ直ぐな目が俺を見つめている。
「俺は剣聖じゃないですよ?もしかしたら跡を継ぐ前に俺が死ぬ可能性だってあります」
オヤジさんの願いはわかった。
実に大人の…それも賢いやり方だ。
つまりは先行投資しようって話だ。
俺がどうなるか分からないが、順調に剣聖を継げば、自分の剣を剣聖が使っていると言う事になる。
俺は話だけ受けておいて安くしてもらい、剣を適当に使うなり売るなりって悪い考えも浮かんだが、そんな考えをすぐに脳内から弾き出す。
「わかってます!自分の打った剣がドグナロクの剣より優れてるなんて思っちゃいません、ただ俺も男です!自分の名を世の中に残すチャンスが目の前にあっるんです!」
オヤジさんは俺に深々と頭を下げた。
見る者にとっては情けない話だろう。
だがそんな気持ちもわからないわけではない…自分の夢が叶うチャンスがあるのだ、それも順調に行けば剣聖を継ぐ可能性がある俺に剣を託すだけで…。
俺はオヤジさんの剣を鞘から抜き放つ。
それは片刃の少し湾曲している剣…俺にはわかる!これは日本刀だ!
「獣族の剣を少しアレンジしたものです…斬れ味は保証します!どうか…夢を託させたくれませんか?」
そうだ悪い話じゃない。
安く手に入るのだ。
金銭感覚が自分で買い物をしなかったり、働いて稼いでないせいでよくわからない危険な状態だが、お金は大事なのは間違いない!
オヤジさんは俺みたいなガキに恥を忍んで夢を託そうとしている。
チャンスを感じて…、もしかしたら俺も同じ立場なら同じ事をするかもしれない。
レイスもミシェイルもエイルーナも何も言わない。
ただ視線が集まっているのだけがわかる。
俺は刀を鞘に納める。
「…オヤジさんの名前…聞いてもいいですか?」
「ラウズ・アスティラムです」
刀をもう一度見つめる。
鞘には確かに家紋らしき紋章が刻まれている。
「わかりました、貰っていきます!」
「ありがとうございます!」
オヤジさんは目を輝かせて、もう一度深々と頭を下げた。
「ただし!」
俺の続けて発した言葉に少し空気が固まる。
俺は懐からお金の入った袋を取り出して、そこから聖貨3枚取り出した。
「お代は払います!お釣りは結構です」
そう言ってカッコつけてみた。
レイスの吹き出す声が聞こえてきたが気にしてはいけない。
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俺たちはそれぞれの確認を終えてから店を出た。
「それ、どうやって使うつもりですか?」
はじめにそう聞いてきたのはエイルーナだった。
ミシェイルも少し気になるという感じでこちらを見ている?
レイスは…、なんかニヤついた腹立つ感じの目線を俺に向けている。
多分カッコつけた俺をからかうタイミングを探しているのだろう。
しかし簡単だ、そんな隙を与えなければいいのだ!
まぁ値切り交渉したのにそれ以上に高く払うというカッコつけ丸出しの、何をしたかったのかわからない馬鹿と言われればそれまでなのだが……そんな事は置いておこう。
「試してみたい事もあるんだ、まずそれを試してみてからかな?」
俺が試してみたい事…2つある。
まず日本刀を手に入れた時点で男の子ならやってみたい事はあるだろう。
そう居合だ!
剣でもやれなくないが、やはり居合といえば日本刀…刀である。
抜刀と共に踏み込み、最短ルートを走らせた最速の一撃。
これは試してみたい!全ての日本男児が思うはずだ!
そしてもう1つは二刀流だ!
刀と剣という変則的に見えるかもしれないが、それも試してみたい!
ただ、俺の場合魔法が右腕に依存している事…、手が空いていないと選択肢は極端に少ないのだ。
しかし、魔法に合わせて利き腕とは逆の左手の訓練を行ってきて左手で右手と変わらないレベルで剣を振る事が出来るようになっている!
このために訓練したわけではないが、二刀流をチャレンジするのには最適な気もしなくもない。
俺の頭は早くもそんな事で、イメージトレーニングが続いていた。
そのせいか反応が遅れてしまった。
いや、この国の…この町の治安が良いからか油断して安心しきっていたのだ。
「レオッ!」
「えっ?」
事件は起きた。




