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ノアの方舟  作者: 望月真昼
霧隠れ編
44/50

不殺の証明 その5

27話


第二次、第三次試験共につつがなく終了する。

第一次試験が本番みたいなもので、第二次と三次はその試験であぶれたものを見つけ出す、後期試験みたいなものだからな。

当然のように、ピット、メヌエット、ノアの三名は合格を手にした。

「ピット・セラフィエル。ノアル・ウェイト。アーサー・ミッドガルド。メヌエット・ルナレスの以上四名は別室に呼び出すので待機しているように」

ということで、待機する。


「まずはこの場にいる四名、合格おめでとう。成績が圧倒的だから、先に呼び出させてもらったよ」

「ありがとうございます」

一番に反応したのはアーサー。

「学園長がブチギレてたから、これが終わったら謝りに行った方が良いよ」

「え、そんなに?」

「初めて見たよ。あんなにキレてるの。ということで、次は自己紹介ね。僕の名前はアストレウス。専攻は占星魔術。君たち、特待生もとい問題児の特別教師、なにかあったら僕を頼ってほしい」

「特待生ですか?」

「そ、そ。特待生といっても階級があるから、どの階級になるかはこれから行われるレクリエーションで決定される」

狙っていた特待生を獲得できて、心の中でガッツポーズする。

特待生、最低でも学費免除が約束される特権階級。

「僕の専攻は言ったね。占星魔術っていってね、占いで未来を見通せる。少し時間を貰うよ」

彼の能力は占いの結果を詩で表せるというもの。

ピットとメヌはすんなり結果が出たが、己はかなり時間がかかった。アーサーは数年前に彼から既に啓示を受けていたらしく、彼女は己よりも時間がかかったらしい。

「みんなどうだった?」

「私は紙の月は胡蝶之夢に沈む。受け入れるのも一つの解だろう。って書かれてた」

紙の月はメヌエットのことか?

胡蝶の夢っていうのはいい内容か、悪い内容か、どっちかというと後者っぽいが。

「ボクは酒池肉林も堅牢の檻もあなたには大差ない。待っていれば、自然と欲しいものは手に入る。故に言うこともない」

ピットのは明らかに良い内容だ。

前半部分が、これからたどる内容、そして後半が、その未来に対するアドバイスということか。

「私のは確かね。王として未熟なあなたはその月の瞳と右腕を失うことになるだろう。今の内から公私というものに考えを馳せると良い。だって」

これは明らかに悪い内容、公人か、私人か、厳しい選択を強いられるということだろう。

「僕のは二振りの双剣が混じりあう火花の残影にあなたは飲み込まれるでしょう。あなたにはどうすることも出来ない。後継を育むと良いでしょう」

この四人の中で己のが、ぶっちぎりで悪い内容だろう。

死ぬみたいな内容が書かれてあるし、回避する手段もないとか言われてるし。

「やっぱり、基本的に悪い内容だね。最近、こんなんばっかなんだよ。多分、君たちの世代で大きな戦争が起こる」

戦争とか恐怖でしかないが、そんなことより今は。

「これって、占いってことは回避できるんですよね」

戦争が起こるのは最悪、よいとして、死ぬのは絶対に嫌だ。

「ん~~、この占いって自分で言うのもなんだけど、かなり精度が良くて、今まで何百人と詠んできたけど、回避できたのは知ってる限り、2、3人しかいない」

「知りたくなかったんですけど!」

「ごめん、でも知らないと回避は絶対にできない。それだけは断言できる」


「学園長、今年の新入生はどうですか?」

特待生の案内も終わり、散々な占い結果に気疲れしたアストレウスは学園長に声をかける。

「総評としては何十年ぶりの豊作だ。それで占いはどうだった?」

ふっかふかの椅子に深くもたれかかり、形の良い口髭を擦る。

「最悪な占いが出ましたよ……」

「儂なんて飲み込まれるなんて可愛い表現じゃなくて、死ぬって言われたからな」

「見ていたんなら、聞かないでくださいよ」

そう、最初に悪い占い結果が出たのは学園長からだった。百年余り、自他ともに認める最強として、学園を守護してきた彼が殺されるのは想像がつかない。

「諦めないでください。それに、老衰かもしれないじゃないですか」

「この不殺の証明の主が老衰? 取られるくらいなら殺された方がマシじゃ」

「またそういうことを言う」

「ハッ、まあ、死ぬのは怖くないんじゃよ。さて、アストレウスよ。そろそろお主も自らの運命を織るフェイズに入ったと思わんか?」

「確かに、今年の四人、彼らが戦争のど真ん中の世代でしょうからね。占いますかあ!」

占星魔術師、星詠みのアストレウスは占い師らしく、自身の運命は占わないという制約で占いの精度を上げてきた。

多少、占いの精度が落ちても、この国トップの星詠みは失えないというのが、自他ともに認める共通認識。

「っと、出ましたね。愚鈍なあなたは鐘の音に気付かない。無音の一度目のファンファーレがあなたを殺すでしょう。せめて生徒に惜しまれる良い教師であろうとしなさいっと。終わったああ」

この絶対的な死の宣告が怖かったのもあって、今まで占ってこなかった。

けどまあ、出たら出たで、意外にすっきりするもんだなあ。

「儂ら、悪すぎじゃろ! 取り敢えず、今日くらいは忘れるか。話を変えて、今年の中で誰が一押しじゃ?」

「そうですね。伸びしろが一番あるという意味で、メヌエット氏ですかね。内に秘める残酷さも期待しています。見てましたか? 彼女のエリア、生存者誰一人いないんですよ」

「なるほどなあ。儂はノアにするかの。あやつの持つ首飾り、第六の角、元は儂の物じゃし、きっとえげつない因果が纏わりついておるぞ」


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