芽は継ぐ
16話
エンベズラの次の都市、リベリオン。エンベズラが市、商業の街だとするなら、リベリオンは冒険者の町だ。冒険者稼業といえば、今は廃れた斜陽業だとは両親の話だが、流石は冒険者の町というだけはあり、この地にはまだそれなりに夢がある。家督を継げなかった三男が夢を見てというのはいまだによく聞く話だ。場所を選ばずとも生活するだけなら冒険者も選択肢としてありだ。実際、両親も村のまとめ役兼、傭兵みたいな感じで生活している。腕っぷしというのはまだまだ需要がある。
「冒険者にならないかだって?」
「そうさ。知っての通り、金欠でね。一緒にひと稼ぎしないかということさ」
リベリオンまで目と鼻の先、馬車の中でピットはノア達に協力を持ち掛けた。
両親からは子供二人なら余裕のある路銀を渡されているが、なぜか今は3人分の出費だからな。余裕なんてあるはずもない。
「私も?」
「留守番するのも嫌でしょ?」
程度の低いクエストならメヌが居てもいいか。別にメヌが足手纏いだと感じたことなんて一度もないが、むしろあの戦いじゃあ、オズの方が足手纏いに感じた。
「ちなみにお前は冒険者登録してあるのか?」
「もちろん」
「何級?」
「Aランクだよ~」
強ぇなあ。
「マジかよ!?」
同行の冒険者が一様に吠える、吠える。
別に驚きでもなかった。両親でもパーティー組んでS級、個人ならA級中間の実力らしいのだ。確実にピットは両親よりも強いだろう。個人でS級でも驚きではない。
「なあ、俺らとパーティー組んでくれよ。取り分優遇するからよ」
「ボク、基本ソロだからごめんね」
ピットはやんわりと断る。
「ソロでA級……、って今誘ってたじゃねえか!」
「あはは、悪いね。今はこの子たちに夢中なんだ」
「「うげえ」」
己とメヌが同時にえづく。
それにしても凄い驚きようと食いつきだ。それもそのはずか、冒険者である彼らの目的地はこの冒険者の都市、リベリオン。A級がついてくれるなら新天地でこれ以上ない、スタートダッシュを決められる。
もし己がS級の黒龍討伐の息子だと知ればどのような反応をしてくれるのだろう。短くない旅を通してある程度気心知れた仲になったし言っても良いか。
「ちなみに僕はS級冒険者、黒龍討伐のジェームズとファイドの息子だよ」
「マジかよ!!」
先のピットの時よりも良い食いつき、子気味良いなあ。両親の威を借るのは良い。薄ぅい威だとばかりに思っていたが。己は普通に貴族とかの権威を振りかざすことに抵抗ないタイプだ。
「というか、その二人ってえっぐい貴族出身だったような……」
「はえ~、そうだったんだ」
腰抜かしてる他の冒険者たちとは違って、ピットはのほほんとしたものだ。
「ピットは反応薄くて面白くないなあ」
「誰の息子だとか興味ないし、それにS級って言っても出涸らしの方でしょ?」
「お前、マジか……」
冒険者たちが貴族相手のピットの発言に度肝を抜かれている。
「っぷ、お前、本当に面白いな。いいよ。一緒にパーティ組もう」
貴族相手にも物怖じ一つしないその姿勢に好感を覚える。ただの子供の己に興味があるのであって、誰かの子供には興味がないか。
「ありがとう」
「あっでも、僕のパーティーは借金返済のために取り分冷遇だから、それでもいいのか?」
「もちろん、お金に興味なんてないし」
ばっさり言い切る。お金関係なく、本当に己たちと組みたかっただけらしい。お金に興味ないってしけてんねえ。己なんてお金数えてるだけで幸せな気分になれるのに。
「イカれてんな。俺らの申し出断ってそれかよ」
「というか、ノアが二人の息子っていうなら、アルス様にもあったことがるのか?」
アルスというのは最後のパーティーメンバーの一人、めちゃんこ強くて、めちゃんこ優しい聖人君子だと聞いている。今はなんだっけ、聖教に追っかけまわされて生死不明の行方不明だっけか。
「残念ながらないんだよね。でも、オズには会ったことあるよ。長い間、魔法を教えてもらってた」
「魔法? 前見たときは剣を使ってなかったか?」
「そりゃあ、今となっては剣の方が得意だからね。それに、初めての長旅でこんな小さな体だけど、肩と腰にもきて、体がなまって仕方ない」
「流石だなあ、二人ともこんな大物だったのか、最後にこんな爆弾置いてきやがって、気になって仕方ねえじゃねえか!つくまでの間、質問責めだから覚悟しろよ!」
己も両親や、オズの自慢話を久しぶりに出来て気分が良い。リベリオンには多少滞留するが、彼らとの旅は最後の最後、今までで一番楽しい雰囲気で終わりを迎えることが出来た。
メヌさん空気気味。




