2022年3月10日
女の子たち中々来なかった。シロとステファニーが腹減ったと俺の周りを彷徨く。17時、仕方なく、ポリバケツを開けて今日買ったばかりのイナバの猫缶を開けてステファニーに一口やったとき、きよのちゃんが息せき切ってやって来た。勝手口前の井戸のコンクリート蓋に座ったきよのちゃんのその第一声は、「かなえちゃんもうここには来ないと思う」だった。
「あいちゃんは?」
「あとで来るよ」
「で、かなえちゃんがどげんしたんか?」と俺。
きよのちゃん、感情的に捲し立てる、「かなえちゃん信じらんない。前にうちらのグループに居て、悪口とか告げ口とかが酷くて二度追い出した野口って子がいるんやけど、かなえちゃん、その子と、うちらとも仲が良いゆうちゃんと一緒に三人で帰ろうとしてたん。かなえちゃん、うちらに対する当て付けっていうか、弾除け?にゆうちゃんを利用してるん。これにはさすがに我慢できんで五人で話したん。野口が言うにはかなえちゃん、うちらと居るのが嫌なんやって。それにかなえちゃん、うちらと三人で居るときは野口の悪口言ってたのに、うちらに隠れてこっそり野口に謝って仲直りしてたみたい。野口、うちら二人とは嫌だけど、かなえちゃんなら良いんやって」
「何かそいでここに来るのが遅かったんやな」
「そう」ときよのちゃん。
「じゃぁかなえちゃん、野口っていう子とゆうちゃんでまた三人でクループ作るつもりなん?」と俺。
「三人グループではないみたい。ゆうちゃんは良い子でどちらにも加担しないから」
やってきたあいちゃん、憤然としている、「猫じいこれ」と俺にプリクラを渡した。
「友達の断捨離やな。これ俺がお前らの代わりに捨てるんか?」
あいちゃん、「違う。今からこれ全部切り刻む。猫じいも見てて」
「ああええぞ。よほど腹が立ったんやな」
きよのちゃん、「うちらの楽しかったこの1年、何だったって話よ」
あいちゃん、「猫じい工具貸して」
「工具って?まぁ切れんことはねぇがハサミの方がええんやないか?」
「うん。じゃぁハサミ」とあいちゃん。
俺は、「分かった」とハサミを二つ用意してやった。
まぁ第三者の俺の目から見たら、このまま三人グループでいるのは難しかっただろう。かなえちゃんとあいちゃん、かなえちゃんときよのちゃんというふうに、二人でいるときはめっちゃ仲がいいのだが、三人になると途端、あいちゃんときよのちゃんによるかなえちゃんイビりが始まってしまう。このこと、二人にも質したことがあるんだが、認めた。
俺が、「かなえちゃんが泣きながらお前らと一緒に居たいって言うたんは嘘やったんやな?」
「嘘も嘘!真っ赤な嘘よ!」と憤るあいちゃん。
「二人になったっていうことはもう一人加える予定はねぇんか」と俺。
あいちゃん、「中学になってそういう子が現れたらね。でもうちはマリア(きよのちゃんのこと)が大好き!マリアと一緒がめっちゃ楽しい!暫くはマリアと二人がいいかな。ねぇマリア」
俺は、「おっと言い忘れとった。きよのちゃんのお姉ちゃん見事広大合格したげなな。おめでとう」
「ありがとう猫じい。お姉ちゃんD判定だったんだよ。信じられんやろ」
「ほんじゃぁきよのちゃん、夏休みとか広島に遊びに行けるな」
「うん。広島で牡蠣食べる。広島の牡蠣はこの辺の牡蠣とは美味しさが全く違うんやって」
「おうそれは当然や。そいに粒の多きさが豊前牡蠣たぁ全然違うぞ。そういえばお姉ちゃんの彼氏はどこに受かったん?」
「山口。遠距離になるね」
「いや、山口と広島って隣県同士やん。車やったら二時間以内やで」
ステファニーとシロとアムアムに餌をやったあと、あいちゃん、「さぁやるよマリア」と、問題のプリクラのかなえちゃんの顔の部分のカットに取り掛かる。それを紙皿に入れていく。ジジイの俺には小さ過ぎてよく見えない。
門限が来て、「猫じい、このプリクラポリバケツの中に保管してて。明日また続きやるから」
「明日は授業五時限までだから早く来るよ猫じい」ときよのちゃん。
「ああ分かった。またな」と俺。




