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2022年3月4日

 義足の左足の痛みに耐えきれず八幡の中武義肢へ。学校、5時限目までだったようで、15時過ぎにきよのちゃんがやって来た。俺はミラージュの外装の拭き取りと室内清掃をやり終わってステファニーと戯れていた。きよのちゃん、だんごを探し捲っている、「だんご居ない!だんご居ない!」

 俺は、「きよのちゃん、ラインのアイコンだんごにしとるんやろ?」

「うん。あいちゃんはステにしてるよ」ときよのちゃん。

「えっ?アンバーやないんか?」

「アンバーのもあるよ」

「かなえちゃんは?」との俺の問いに、「サンリブ(近くの大規模スーパー)行ってから来るって」

「あいちゃん学校来たか?」と俺。

「来なかった」

「なら家で静養しとるな。入院とかしてねぇやろうし」


 きよのちゃん、暑いのか、上着を脱いでコンクリート地の駐車場に放っている。ステファニーだけ寄って来て、餌を与えて愛でていたら婆さんの敷地にこの前見たハチワレ猫が。

 俺が、「アンバーか?」

 きよのちゃん、「アンバーだよ」

「この前も来とったけど」と俺。

「アンバーにも餌やろう」と、きよのちゃんが餌で釣って駐車場におびき寄せた。

「あいちゃん、アンバーがこっちに来てるって知ったら怒るかも。アンバーはあいちゃんが居るときには俺のところには来んかったけんな」と俺。

 きよのちゃん、「写真撮ってあいちゃんに送ってみる。でもアンバーよく見るとお腹大きくない?」

「あれっ、アンバーってメスやったんか?」

 俺らがアンバーに構ってやってるのが気に食わないのか、愛想が悪くなって車の下に潜ってしまったステファニー、一変、寄って来て餌を奪う、「もうステ、これはアンバーにあげる餌なの」ときよのちゃん。

 その内、「猫じい、新しい猫缶開けていい?」

「おう開けろや。昨日は猫缶開けてなかったんやないか?」

「みんな大好き猫缶魚の身が美味しそう。人間でも食べられそうやけど…、やっぱり臭い!」ときよのちゃん。


「うち、あいちゃんの家に行って来る。猫じい餌見ててよ」

 すると、かなえちゃんが自転車を漕いでやって来た、「もうかなえちゃん遅い。30分までには来るって言ったやろ。あいちゃんの家に行って来るからぁ」

 かなえちゃん、「うちも行きたい。一緒に行こ」

「ダメ!うち一人で行って来るんやから。猫じいと餌の番でもしてて」

 俺の前にはステファニー、後ろのハスラーの下にはあいちゃんの愛猫、アンバー。紙皿に入れたトライアルで買った、売上ナンバーワンのみんな大好き猫缶の生餌、あまり消費するときよのちゃんに怒られるので、スプーンにほんの少しだけ載せて与える。

 俺、つい掌に餌をのせてアンバーに食わせようとして、がりっ!薬指を爪で引っ掛かれて血が出た。

「痛!やられた。血が出た」

 かなえちゃん、「気を付けないとアンバー引っ掻くよ」

「もうかなえちゃん、それ早く言って欲しかったな」

「猫じい大丈夫?」

「心配ねぇよ。ジジイの血は直ぐに止まるけん」

 かなえちゃん、「それほんと?」と怪訝な顔。


 住宅街の路地に女の子二人の姿。

『あいちゃんやねぇか!』

 あいちゃん、きよのちゃんの肩を借りて傘を杖代わりにしてやってくる。

 俺は、「あいちゃん無理して大丈夫か?」

 でも、あいちゃんの顔が見れて安心した。初めてあいちゃんに会ったのが去年の12月5日、1日は会えないことはあっても2日続けてというのはなかったような気がする。やはり、三人の中ではあいちゃんは別格だ。なんと言ってもかわいい。かなえちゃんは一人でやってきたことはないが、あいちゃんときよのちゃんが一人で餌やりに来たとしたら正直、あいちゃんの方が相手し易い。

 人が増えたことに驚いたのか、ステファニーがハスラーの下に隠れてしまったことを、きよのちゃんがかなえちゃんのせいだと怒りだした、「もう、ステちゃんと抑えててよ。あいちゃんが痛い足引き摺ってステに会いに来たっていうのにほんと使えないんやから」

 あっちゃ〜、また始まったか、かなえちゃんイビり。かなえちゃんとあいちゃん、またはかなえちゃんときよのちゃんというふうに、二人で居るときは仲が良いんだが。三人になると途端、こんな感じだ。


 かなえちゃん、俺から見たら恐る恐るという感じに見えるんだが、「あいちゃん大丈夫?」

「大丈夫じゃない!」とあいちゃん。あいちゃんもかなえちゃんがステファニーを逃がしたと怒ってる?

 仕方ないと俺は立ち上がる、「ステぇ、ステぇ」と呼び掛けて、油断したところを両手で捕獲して地面に下ろしたり離したりしながらぴょんぴょん跳ねさせる、「ステのパンジージャンプぅ!」と、三人に近付いて行く。

 あいちゃんの顔が綻ぶ。きよのちゃんがステファニーを受け取る。

「うちもバンジージャンプ!」と俺の真似をするが、形がなってない。

「きよのちゃん左手と右手の位置や。こうするんや」と手本を見せる。俺の指摘通りに持ちかえて、「バンジージャンプぅ!」

「おうそうや」と俺。

 ステファニーをあいちゃんの膝に乗せるきよのちゃん、「ステぇ、会いたかったよう」

 このあいちゃんの様子をアンバーが見ているような。

「あいちゃん、アンバーはええんか?」

「あの糞猫はどうでもいい。本当はあんまり好きじゃなかったん。うちはステが好きなの」

 俺はわざとらしくアンバーに引っ掛かれた指をあいちゃんに見せて、「やられたわ」


 俺はにやっと笑うと、「あいちゃん泣いたそうやな?」

「だって痛かったんやもん。サッカーなんてせんどけば(しなかったら)よかった。ポールはまだ空中にあったん。それを蹴ろうとして跳んだんやけど足首が曲がったまま地面に着いてぐきって。タクシー呼んで貰って帰った」

 きよのちゃん、「あいちゃんさっきうちが家に行ったときも少し泣いたね」

「今日の朝起きてお母さんがあいか学校行くって聞いたけど、嫌いな科目があったから行かんかった。うちの分の給食の魚フライサンド誰が食べたんやろ」


 かなえちゃん、バックからクッキーを三つ取り出して、「あいちゃんどれがいい?」

「三つとも欲しい」

 きよのちゃん、「うちも貰う」とチョコとバニラを手に取ってかなえちゃんに返す。かなえちゃん、残ったバニラをあいちゃんに。あいちゃん食べたくなさそうに、コンクリート地面に置いた。かなえちゃん、気にして、「チョコが欲しかったの?」

「うちは〜、三つ欲しい〜って言ったんやけど〜」

「あいちゃんごめん」

 俺は立ち上がって車の後部座席に置いていたバウンドケーキを掴んだが、止めた、『今はわざとらし過ぎるな』


 きよのちゃん、「うちまた貰ったんだぁ。マリア(あいちゃんのこと)に見せようと持って来たぁ」

 あいちゃん、「こいつ真面キモい。かなえちゃん見る?」

 どうもラブレターのようだ。それも鉛筆書きの。封筒の宛名には、『大切な人へ』と書いてあって、その下にアルファベットでKYN。

 きよのちゃんに、「それ手紙か?」

「うん。うちのストーカー」

 それ以上のことは聞かなかったし、手紙を見せてくれとも言わなかった。


 そのうち、きよのちゃんが、「猫じいパウンドケーキ食べたい」

「分かった」と三つ取り出して、まずかなえちゃんから渡す。

 思った通り、弄りが始まる、「かなえちゃんのうちが貰う」と取り上げようとするきよのちゃん。かなえちゃんは取られまいと防戦する。かなえちゃん、潰れたバウンドケーキを手に、「毛玉(きよのちゃんのこと)、潰れたからもう要らないでしよ」とばくっと口に。

 きよのちゃん、仕返しか、かなえちゃんのマスクを奪って逃げる。かなえちゃんが追い掛ける、「もう返して!」

 二人で住宅街を駆けっこ。二週目に入ったとき、あいちゃんが立ち上がってかなえちゃんの左手を掴む。構わす追い掛けようとするかなえちゃんに、「痛い!痛い!」

 怪我しているあいちゃんにこう言われたら追い掛けるのを諦めるしかない。

 あいちゃん、「もうかなえちゃんうちの怪我を酷くする気!」

「ごめんあいちゃん、そんなつもりないからね」

 一周してきたきよのちゃんに、かなえちゃん、「もううちのマスク返して」

 きよのちゃん、「途中で失くした」

 堪り兼ねた俺が、「もうお前ら止めれや。三人になると仲違いするなぁ」と、きよのちゃんが隠したマスクを簡単に探し出してかなえちゃんに渡す。

 かなえちゃん、「猫じいありがとう」

 対してきよのちゃん、「もうせっかく隠したのに何で見つけるの」とか言われても、「どこに隠したかくらい直ぐ分かるけんのぉ」と俺。


 きよのちゃん、上着を身体に掛けてコンクリート地面に仰向けで寝転がっている。まるで自宅のベットに寝ているように。ほんとかわいいんやから。

「きよのちゃん布団持って来てやろうか」とつい言ってしまう。

 四人で車座になる。かなえちゃんは相変わらず正座だ、「かなえちゃん、いつも思うんやけど正座してよく足が痛くならんよね。それもコンクリートの上に」

 かなえちゃんは毛足の長い淡いピンクの上着だ。正座でポケットに両手を突っ込んだ体勢に、あいちゃん、「かなえちゃんカイカイしてるの?」

「猫じい分かるやろ?」とか言われても俺には何のことだかさっぱり。

「かなえちゃんポケットに入れた手で掻いてたやろ?」としつこいあいちゃん。

「掻いてない!掻いてない!」とかなえちゃん。

 きよのちゃん、「うちも見てた。三人で歩くときかなえちゃんはいつもうちらの後ろ歩くんやけど、振り向いたらカイカイしてたよ。猫じい信じて。うちの目を見て」と見つめてくる。にらめっこか、俺もきよのちゃんの目を見詰める。マスクをしてて良かった。見詰め易い。でもきよのちゃんめっちゃかわいい。正真正銘の美少女だ。

『そうか、こいつらの言うカイカイとは女の子のデリケートゾーンのことか』


 きよのちゃん、「あいちゃんまだ帰らないで大丈夫?」

「今度はかなえちゃんがあいちゃんに肩貸してあげてね」ときよのちゃん。

 かなえちゃん、「うち背が低いけど大丈夫?」

「もうかなえちゃんのそんなところが嫌なの」とあいちゃん。

「あいちゃんごめん」としゅんとなるかなえちゃん。

 きよのちゃん、「じゃぁかなえちゃん自転車貸して。うちが運転してあいちゃんは後ろに乗ってね」

「かなえちゃんロック外して」

「ちゃんと自転車返してよ」と、初めは抵抗していたかなえちゃん、仕方なくキーでロックを外した。

「じゃぁ猫じいバイバイ!」

「ああまたなぁ」

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