2022年2月23日
天皇誕生日で学校は休みだから、早くやって来るだろうとは思っていたが、あいちゃんときよのちゃん、14時前にはやって来た。
きよのちゃん、「今日はだんごが居な〜い」
「午前中は俺の車の周りうろうろしよったんやがな」
「茶々(あいちゃんときよのちゃんが付けた名前は茶々丸。だんごと同じ茶トラ猫で、いつも俺の家の右斜め前の婆さんの家の庭に居る)やったらここに居ったが」と空き家の庇の下を見たら、もう姿を消していた。
「あっちゃ〜、茶々の野郎、きよのちゃんに嫌われとん分かっとんのやな。きよのちゃんの気配察しただけで逃げてまうわ」
「もううち、一度茶々蹴ってやる」と鼻息も荒いきよのちゃん。
嫁がトライアルでちゃんとパウンドケーキ買って来てくれていた。あいちゃんの側にいたステファニー、ハスラーの下に潜り込んだみたいだ。俺は、二人に一個づつパウンドケーキを渡して車内に戻った。ミラーを見るとステファニーがあいちゃんの膝の上に乗ってパウンドケーキを欲している。
あいちゃんに、「ステ、パウンドケーキに釣られて出てきたん?」
「そう。これ見せたらステいちころよぉ」と答えるあいちゃん、アイパットミニを見ながらステファニーの相手をしている。
その内、「寒い猫じい」と車内に入って来て、きよのちゃんと二人、後部座席のいつもの位置(あいちゃんは助手席側、きよのちゃんは運転席側)に落ち着く。俺はエンジンを掛けて暖房を効かせてやる。
「あっだんご!」ときよのちゃん。
俺は、「ありゃぁ茶々やで」
きよのちゃんが婆さん宅の庭に寄って行ったら即行で逃げた。
「逃げ足速いなぁ」と俺。
猫缶は1缶残っていて、あいちゃん、二人で分ける。きよのちゃんはポリバケツの中に、あいちゃんはポリバケツの上に置いたまま車に乗り込んで来た。
「ねぇ猫じい見てぇ」とあいちゃん。
「かなえちゃんの動画。マリアの家で撮ったぁ」と、見てみるとコタツに入ったかなえちゃんのマスクを外しての変顔だ。
あいちゃんの感心するところ、アイパットミニを完全に使いこなして編集などお手のものだ。かなえちゃんの動画を編集してBGMに「うっせぇわ」を被せている。
「その曲知っとるわ。確か天才小学生とかがバンド組んでテレビで演奏しよったよね」と投げ掛けた俺に、きよのちゃん、「あれプロが聞いて大したことないって言いよったよ」
「ほんとか?俺は上手いって思うたが」
あいちゃん、編集しながら車が揺れるほどどたばたと笑い捲る。
「出来たら猫じいに判定して貰うぅ」
あいちゃん編集が上手い。これだったら誰でも腹を抱えて笑うに違いない。
「猫じい10点満点中何点?」とあいちゃん。
「おう、この出来やったら8点やるわぁ」と俺。
「猫じいやったぁ〜」とあいちゃん。
「かなえちゃんこれ見る機会あったらどんな反応するかいな」と俺。
きよのちゃん、「もう止めて止めてって暴れ捲るよ」
「でお前ら、昨日のかなえちゃん問題どうするん?」
あいちゃん、「成り行きに任せるよ」
きよのちゃん、「うちが入って来るまでは二人めっちゃ仲が良かったよね」
「うん。うちかなえちゃんのこと、『かなちゃん』とか呼んでたしぃ。でも今は『ぶすえもん』だからぁ」とあいちゃん。
あいちゃん、車に乗り込んできたとき、サンリブ(小倉に本社があるスーパー)に連れてってぇとか言っていたが、もう暫くはアイパットミニできよのちゃんと遊ぶようだ。
サイドミラーを見ていたら茶々丸がやって来た。俺の、「茶々が来たぞ」に直ぐ反応したきよのちゃん、勢い良く運転席後ろドアを開けて、出せる限りの大声で、「あ〜!!」
びっくりした茶々丸は、瞬間、逃げ出したが、再び来襲。ポリバケツの上に乗って何か食べているが…。
「おう茶々懲りずにまた来たぞ」と俺。
「マリア(きよのちゃんのこと)代わって。今度はうちが茶々を脅かす。動画も撮っとくわ」とあいちゃん。
間合いを見計らって飛び出すと、あらん限りの大声で、「あ〜!!」
茶々丸、紙皿を蹴飛ばして逃げ出した。
あいちゃん、「ねぇ猫じい来てぇ」
「何か」と出て行った俺に、「うちが置いとった猫缶の餌、茶々に全部食べられたぁ。マリアは?」
「うちはポリバケツの中に入れとったけん食べられんかった。でもカリカリ(固形の猫の餌)下に落ちてしまったよぉ」
「ねぇねぇ見て」と、アイパットミニで茶々を撮った動画を再生するあいちゃん。
「茶々の慌て方最高!」
もしこの記事に読者が居たとしたら勘違いはしないで欲しい。今の俺は二人に合わせているだけで、茶々丸に対する悪意はない。この二人も別に茶々を苛めている訳ではない。俺は二匹を差別せず、午前中、餌を貰いに来た茶々丸に、食べたいだけカリカリ餌を与えたから。
あいちゃん、ハスラーのベンチシートの運転席と助手席の背凭れの間にアイパットミニを固定する。何度か落ちたので、俺が、助手席シートアンダーボックスから厚さのあるCDケースとナビの取説を取り出して、挟んで固定してやった。
「じゃぁ猫じいサンリブまで連れてってぇ」とあいちゃん。
きよのちゃん、「サンリブなら歩いでも行けるじゃん」
「じゃぁマリア、トライアルにも歩いて行けるけど猫じいに送って貰ったじゃん」と言い返すあいちゃん。
俺は、「分かった。でお前らサンリブで何するんじゃ?」
「マリア(きよのちゃんのこと)とプリクラ撮るのぉ」とあいちゃん。
俺の家からサンリブに行くなら、住宅街路地のT字路を左折せずに右折して、日豊線の高架橋を渡って隣の町内に出、田園地帯を突っ切るが、二人はその道を知らない。
高架橋の上からきよのちゃん、「猫じいの家がよく見えるぅ」と言ったあと、「猫じい、この先はお墓だよ(寺があるからだろう)」
俺はふざけて、「あっちゃ〜、バレたか!お前ら墓地に置き去りにするつもりやったんに」
きよのちゃん、「もう猫じい酷い〜!」
俺は言い直して、「こっちからの方が渋滞せんで行き易いんじゃ」と田園地帯を眼前にする。
きよのちゃん、「両親この辺りに家を買うつもりやったんやけど学校が遠くなるけん止めたん」
「それは良い判断やったな。この辺柄が悪いけんな」
サンリブに着いて、目一杯ドアを開けても隣の車に当たらないように気を付けて止める。あいちゃん、「猫じいそんなに時間掛からんからね」
「おう。気にせんで適当にええぞ。俺は車の中でスマホ打ちよくけんな」
二人とも助手席後ろのドアから出た。あいちゃんの後からきよのちゃんが降りる。そのきよのちゃん、「あいちゃん当てそうで怖いよね」って、『ちゃんと俺の気持ち察してくれとったんやな』
程なく戻って来た二人に、「えらい早かったな」
きよのちゃん、「猫じい、ドラモリ(ドラッグストアモリ)まで連れてってぇ」
「おうええでぇ。で何買うん?」
きよのちゃん、「マシュマロ?」
ドラモリから戻ってきた二人、「マシュマロ無かったぁ。でも違うもの買ってきたぁ。猫じいには秘密」
ドラモリから右折、スーパー・ゆめマートの敷地を突っ切ってホームセンター・ナフコの前の道に出る。俺の車の前を自転車に乗ったよぼよぼのジジイ(俺もジジイだが)。
「あんなジジイには十分距離取って気ぃ付けとかないかん。車の直ぐ前で転ばれたら俺のせいになるけんな」
田園田園地帯を走り抜けるとき、あいちゃん、「猫ってきっと互いに伝え合ってるよ」
「どうして?」ときよのちゃん。
あいちゃん、「うちがアンバー(あいちゃんのアパートにやって来るハチワレ野良猫)怒ったらあげた餌食べずに逃げたの。そしたらすぐシルバー(あいちゃんのアパートにやって来るハチワレの野良猫)が来て餌食べた。後でアンバーとシルバーが仲良くしてるのを見たよ。きっとアンバーがシルバーに、『俺食べずに来たから今なら餌あるぞ』って伝えたんだよ」
「時間経ったけんステまた腹空かしとるかとしれんぞ」と俺。
きよのちゃん、「うち猫じいのことマミー(きよのちゃんのママ)に話したよ。そしたら誘拐されんの?って」
俺は参ったという顔で、「ほらやっぱり親にはそう思われとるやん。やけん最初はお前ら車に乗せるん渋ったんよ」
「でも猫じい安心して。だんごのかわいさ説明したら今度会いに行こうかなって」
俺の、「それ俺じゃねぇしだんごやし」に、二人プッと吹き出す。
俺の家に着いて後ろを振り返ったら、二人、アイスクリームを食べている、「この寒いのにようアイス食えるな」
特にあいちゃんが食べていたロッテの爽の濃厚完熟バナナ、空き箱を家に放っていたら、嫁が、「このアイス美味しそう。こんなんあるって知らんかった。女の子ちゃんたち(嫁、この頃、三人のことをこう呼んでいた)美味しいもの何でも知ってるよねぇ。ファミマにあったら買いたい」と言っていたが、無かった。
「やっぱりドラモリしか無いみたい。明日連れてって」ときた。
一度、三人とも車から降りて、寄ってきたステファニーとだんごを愛でる。あいちゃんは変わらずロッテ爽の濃厚完熟ばななを食べている。きよのちゃん、スマホでだんごとステファニーを撮り捲る、「マミーに写メ送ってやんの」
ちょうどだんごがきよのちゃんにすり寄ってきた。今ならかわいいショットが撮れると思ったきよのちゃん、「あいちゃん、うちとだんごのラブラブ撮ってぇ」
あいちゃんがきよのちゃんのバックからスマホを取り出す間にだんごが離れてしまった。
俺はあいちゃんが食べ終わった爽の空き箱を家に置き、寒さに車に戻る。
車に乗って来たあいちゃん、「猫じいおねが〜い」
「今度は何か?」
「うちアンバーの餌買わんとならんの」
「あれっ?あいちゃんアンバーと喧嘩したんやないん」
「もう仲直りしたぁ。朝のアンバー、めっちゃかわいいもん」
アンバーはあいちゃんのアパートの周りに住むハチワレの野良猫だ。あいちゃん、動画にも撮って俺に見せてくれた。これだけかわいがっているのにまだ触られてくれないとのこと。でも、そんなこと猫が大好きなあいちゃんにはノープロブレム。
きよのちゃんは外で茶々丸を追い掛けている。
あいちゃん、急にしんみりした声で、「ねぇ猫じい、うちらと遊んで楽しい?」
あいちゃんなりに俺の気持ちを忖度してくれている。ほんと優しくてかわいい女の子だ。
ほんとはこう答えたい、「あいちゃんときよのちゃんのごたるかわいい女の子に毎日遊びに来て貰ってよぉ、しょうもないジジイの毎日が激変して楽しゅうて堪らんぜ。中学生になっても来て欲しいわ」と。
でも実際はこう答えた、「俺は毎日車の中に居るけど過ごす時間は確実に変わったぞぉ」
あいちゃん言葉の意味が分かったかどうか、「だったら嬉しいよ」
「でもお前ら中学になったら環境激変するなぁ。小学校のときのようにはいかんよな(俺の家にはそう初中来れんよな)。部活もあるし」
「うんそうだね」とあいちゃん。
「あいちゃんの兄ちゃん、俺の家の横通って通学しよるけどあいちゃんは無理なん?」
「遠回りになるもん。毛玉たちと帰りたいし」
「そうか残念やな。で毛玉はトライアル行くんか?」という俺の問に、あいちゃん、車を降りて聞きに行っていたが、「毛玉はだんごと遊んどくって。でも早く帰って来てって」
「分かった」と車を出した俺、「きよのちゃん、国語が得意って言いよったぞ。90点以下は取ったことないげなな」
「猫じい、記憶力凄いよね」
「俺書きよるけんな。記憶力がようないと書けんけんな。あいちゃんの得意科目は?」
「うちにはない」
「大学行くつもりなら作らないかんな」
「あっ、強いて言えば社会かな」
「歴史か?」
「世界の方」
「おう、地理やな」
「ねぇ猫じい、美女って好き?」と唐突に訊いてきたあいちゃんに、どういう意図か分からないが、「俺が言わせて貰うなら美女より良い女やな」
「身長はどれくらいあった方がいい?」
「そやな、俺は低い方が好きかな」
あいちゃん、「なら猫じいはかねえちゃん好きなんや?」
『あっちゃ〜、そうきたか』
「かなえちゃんの身長どれくらいやったかいの?」
「135、いや140?」
「かなえちゃんもう大して身長伸びそうにないな。あいちゃんも160はいくかな?男と女の身長差は30センチくらいがちょうどええっちゃ。男の理想の身長は180やろ」
あいちゃん考えて、「パパの身長が180やからママは…」
「おっと間違った。20センチや。俺が173で嫁が149で20センチ違いや」
今日は筆が乗らない。まさかこの21世紀に核保有国で常任理事国のロシアが侵略戦争するとは。何の罪もないウクライナ市民をプーチンは理由もなく殺戮するのか。もし世界がこの独裁者の暴挙を後悔させることが出来なかったら、中国は平然と台湾に侵攻して、無垢の市民を殺し捲ることだろう。世界はロシアを完全に孤立させて、経済を崩壊させて、プーチンを平和に対する罪で裁くことだ。じゃないと、この世界、独裁国家の中露に支配されてしまうぞ。
トライヤルの駐車場に入る、「猫じいに、めっちゃかわいいっていうか、橋本環奈が言い寄ってきたらどうする?」
「俺には分不相応やな。調子に乗ると思いがけないしっぺ返しがくるものや」で俺はこの話題を締めた。
俺の家に着いた。後ろを振り返るとまたメロンのアイス食べている、「あいちゃんアイス好きやなぁ」
「猫じいにはあげないよ」
きよのちゃんも後部座席に乗って来て、再びアイパットミニでゲームに興じだしたが、ぷつっと切れた、「バッテリーが切れたみたい」とあいちゃん。
「ねぇ猫じい、尻取りしよう」とあいちゃん。
「分かった。なら食べ物に制限した尻取りや」と俺。
結構続いたあとに、「や…か。や…やな」
「屋台ラーメ…、あっちゃ~、しまったぁ」
「はい猫じいの負け!罰金100え~ん」とあいちゃん。
「分かった。お前らの小遣いは両親が管理しとうやろうけん、他人の俺がお前らに不用意に金渡すとまずいやろうが、でもこいは俺がゲームで負けたことで発生した金やけん許されるやろ」と二人に念を押したつもりで、自分も納得させる。
ちょうど門限だ。
「じゃぁね猫じい。百円忘れんでよ」
「おう。明日楽しみにしとけや」




