039 ギルド嬢の憂鬱3 *番外編 ディアナ編
ディアナは冒険者ギルドの受付嬢だ。
冒険者からは癒し系受付嬢として知られている。
彼女には最近、気になる男性ができた。
約1週間前に突然、冒険者ギルドにやってきて、雷に打たれたような衝撃を受け、更には膝が震え、寒気までしたほどだ。
「運命の人来た?」
そんな想像をしてしまったほど、リュージを見て、衝撃を受けた。
「見たこともない服。異国の貴族様かしら。
一緒に異国に来てほしいと言われたら、どうしたらいいの? 私には彼もいるのに。いけないわ。でも本当に言われたら、ついて行く?」
そんな風に思ってしまった自分が恥ずかしい。
今、付き合っている彼は冒険者ギルドの解体受付で働いている。
一応、モンスターの解体をして、一人前に働いている。
稼ぎとしては普通だろう。
普通過ぎて、ドキドキと言ったトキメキは一切ない。
好きだと言われて付き合っているが、自分が彼のことを好きなのかどうか、全くわからない。
見た目も、至って普通過ぎて、街で普通に会っても、きっと気付かない。
でも、リュージ様を見た瞬間は全く違った。
運命的な出会いと感じた。
一瞬にして、恋に落ちた。
彼を見ているとドキドキが止まらない。
彼の一挙手一投足が気になって仕方ない。
付き合っていた彼とは、結局上手くいかず、別れることになった。
そのせいで、解体受付が少し荒れたらしい。
私がリュージ様を少なからず思っていると言うことが、別れた原因になったと思われたらしい。
それはほぼ当たっているが、それを肯定することはできない。
リュージ様にご迷惑をかけることになってしまうからだ。
良からぬ噂にならなければいいのだが…。
リュージ様が冒険者ギルドに現れてから、1週間が過ぎただろうか?
冒険者ギルドの仕事を終えて、帰路につく途中、リュージ様の常宿、トワイライトに寄っていく。
勿論、泊まるわけではない、リュージ様が泊まっている宿と言うだけで、何故か気持ちが騒めく。
ほぼ毎日の様にそれが習慣になっていた。
朝も通勤途中に同じルートを辿る。
リュージ様と会えたことはない。
会えたとしても、何かできるわけでもない。
しかし、少なくとも今は付き合いのある彼氏持ちではない。
一頻り、気持ちが落ち着くと、いつも家に帰っていった。
しかし、何故か今日は気持ちが落ち着かない。
胸が熱くなります。
気持ちが収まりません。
気持ちが高まり過ぎて、私は思わずトワイライトに飛び込んでいました。
トワイライトは宿泊宿としては綺麗でサービスもいい。
そして料金もリーズナブルだ。
しかし、あくまでも短期間に限ってだ。
常宿とする場合、積み重なるとそこそこの値段にはなる。
しかし、私がたかが一泊する程度は知れている。
私はトワイライトに飛び込むと、今晩1泊泊まることを申し出た。
本当は、リュージ様の隣部屋が良かったが、流石にそれを言うことはできなかった。
トワイライトに宿泊を申し込むと、指定された部屋に入ってしばらく休憩したら、宿の散策に出かける。
リュージ様のお部屋はどこだろう?
ウロウロしていたら、何故か私と同じような年齢の女性が数名、私と同じ様にウロウロとしている。
彼女たちはどうしたんだろう?
自分の部屋がわからなくなったのかしら?
女性2人組が話していたので、聞き耳を立てて聞いてみる。
「彼の部屋、わかった?」
「いいえ、まだわからないわ。」
「今日は仕事に行っていないのは確かよ。見た人がいるもの。」
「どこかに出かけて、買い物でもしているのかしら?」
「あの細身の超イケメン、絶対どこかの貴族様の子弟か、異国の王子様のお忍びよ。」
「あぁ、彼と同じ空気が吸いたい、同じ空間にいたいわぁ。」
驚きである。
彼とは間違いなくリュージ様のことだ。
彼は宿でも有名人のようだ。
リュージ様はジローと言う使用人と一緒に宿泊しているから、2人部屋に泊まっているに違いない。
検討違いを探しているね。
実際には、リュージとジローは宿屋の女主人の配慮で、別棟の3人部屋に泊まっていた。
リュージを見た宿泊客がウロウロしたり、リュージの部屋の前で待機したりということが頻発していたからだ。
ディアナも全く勘違いでもあったわけだ。
リュージ様、見当たらない。
どうしよう。
しまった。
そういえば、着替えや洗面関係の道具を持ってきていない。
明日、冒険者ギルドに同じ服で行くのはマズイ。
一旦、外に出て、買い物をしてこよう。
ディアナは宿屋の外に出ると、足早に道具屋に立ち寄る。
道具屋の中に入ると、リュージ様が道具屋の主人とお茶を飲んでいた。
ディアナはビックリしたが、この強運を活かさねばと思った。
ここで、声がかけれなければ、一生無理だ。
勇気を振り絞りリュージに声を掛ける。
「あら、リュージ様じゃないですか。道具屋でお茶なんて、どうしたんですか?」
「君は冒険者ギルドの受付嬢のディアナさん? お茶は道具屋のご主人と商談をしていてて、出して貰ったんだ。冒険者ギルドの受付嬢の人が道具屋てことは、何かチェックしているの?」
「あぁ、そのことなんですが、リュージ様、少し話せますか? できれば2人きりで。」
「うーん、実はここのご主人と交渉をしている最中で、もう少しで終わるから、少し待っててもらえないか?」
「交渉は何ですか?」
「このクロスチェンジャーを少し貸してもらえないか?って言っていたんだ。買うほどは欲しく無いんだけど、使って見たいと言うのが本音。」
「何ですか?そのクロスチェンジャーって?」
「うん、なんでも空間魔法を応用した衣服を一瞬で着替えることができる魔道具らしいのよ。」
「私が買います。その魔道具、私買います。私、それ、絶対欲しいです。お幾らですか?」
「あぁ、リュージ様、私買いますから、買った後に、リュージ様はお試し下さい。」
「毎度ありー!!お買い上げありがとうございます。」
私は道具屋に料金を払うと、リュージ様と一緒にトワイライトへと向かった。
途中、服屋で服を買った。
リュージ様に似合いそうなシャツとズボンがあったので、勝手に買ってしまった。
トワイライトへとついた私とリュージ様は、宿の私の部屋へ入った。
リュージ様はトワイライトに私が宿をとっていたことに驚いていたが、大きなお風呂に入りたい時は、ここに来るんですと言ったら納得していた。
クロスチェンジャーは予め、マジック収納に入れておいた衣服を今ある服とチェンジしてくれるという、不思議魔道具だ。
服屋で買ったリュージ様用のシャツとズボンをセットして、クロスチェンジャーに魔力をリュージ様に注いでもらう。
するとリュージ様が着ていた服がチェンジする。
上半身裸のリュージ様が登場した。
見とれてしまった。
正に神のような肉体。
あの筋肉に埋もれて見たい。
そんな風に思ってしまうほど見事だった。
「リュージ様、どうやらマジック収納の中の服の順番が違っていたようですね。これで正しいはずです。もう一度、お願いします。」
リュージが魔力をもう一度注ぐと、元の服に戻った。
位置を変えてもう一度、やると、新しい服になった。
「ほぉ、なかなかだな。しかし、持ち歩くには少し大きめだな。セットが1セットというのも、不満だ。」
「リュージ様は男性ですから、そうなんでしょうね。女性の場合、いろいろありますので、一瞬で着替えることができるのは、ありがたいです。」
「今度は私がやって見ますね。」
「エィー!」
魔力を注ぐと、一瞬で服が入れ替わり、私は下着姿になった。
「ひゃぁーぁーぁーーわっわっわっ。」
慌ててもう一度、魔力を注ぐ。
「失礼しました。ブラのことを忘れていました。順番が違っていたようです。」
リュージ様に下着姿を見られたのは非常に恥ずかしかった。
上はブラだったが、下はスカートだったので、ブラ姿だけ見せてしまったかたちだ。
スカートで見えなかったと思うが、もう一つ足りなかつたのは内緒だ。
その後、ギルドの話と称して、解体受付の話とギルドポイントの話をした。
リュージ様にクロスチェンジャーで使用したシャツとズボンをプレゼントした。
リュージ様は非常に喜んで下さり、お礼と言って、非常に澄んだ色をした光に照らされると輝く宝玉を私にくれた。
どう考えても、過分に頂いていると思うが、いいらしい。
こんな高価な宝玉を頂けるなんて、涙が出るくらい嬉しい。
ここは私の部屋なので、是非、リュージ様には休んで行って欲しいと思ったが、リュージ様は同室のジロー様が心配しているからということで、去って行かれた。
優しい方だ。
しかもジェントルマンだ。
リュージ様はやはり、素晴らしい。
リュージ様は素敵だ。
邪魔者がいなければ、今すぐにでもリュージ様の部屋に行って、一緒に過ごしたい。
その夜、ディアナは一晩中、リュージ様から頂いた宝玉を眺めて過ごした。
この日の約1週間後、リュージとジローが初級ダンジョンであるサイムダンジョン踏破を目指して旅立つ早朝、この3人のギルド嬢は、リュージに会うためにトワイライトで鉢合わせすることになる。
番外編で伏線を少し回収できました。
次話から本編再開です。




