021 初級ダンジョン攻略 1
リュージたちは、朝からダンジョンに出かけて行った。
リュージたちが出かける前に一悶着あったが、それはまた、別の機会にいたしましょう。
1階層から9階層までは順調に進んだ。
ほぼ毎日のルーティンでもあったので、楽勝だった。
10階層はボス部屋だ。
サイムの初級ダンジョンの場合は固定らしく、毎回コボルト数匹とコボルトリーダーだ。
ただ、レベルは多少変わるらしく、非常に強い場合もあった。
リュージ達は卒なくコボルトとコボルトリーダーを倒す。
南の森のモンスター数と比べると、少ないし、ボス部屋はボスとその取り巻きを倒すとそれ以上敵は湧かない。
少なくともそこに人がいる限りは。
ドロップはコボルトリーダーの毛皮と魔石だった。
魔石も随分溜まった。
リュージはなぜか、魔石は売らずにイベントリに入れていた。
魔石を使って何か魔道具でも考えて作ってみようかな?と言ったぼんやりとした考えからだ。
深い意味はない。
11階層はジャッカルやウルフ系の魔物だった。ここから15階層のワーウルフまでは続く。
ウルフ系はなかなかドロップがいい。
毛皮が出れば売れるし、ウルフ肉もなかなか美味しいので、捌きやすい。
ウルフ、ジャッカル系は毛皮、肉、魔石のドロップだ。
ついついいつもの調子で、狩りまくってしまう。
「ジロー、ほどほどにしようぜ。先は長い。次階層に続く通り道にいなければ、無理して狩る必要はない。」
「わかりやした。しかし、周回していた頃の調子でついつい。」
「周回していた頃、って数日前じゃんか。大昔みたいなこと言うなよ。」
11階層から15階層までは荒野が広がっている。
いかにもジャッカル、ウルフ系が好きそうな地形である。
不思議なのが、モンスターの餌である。
ダンジョン研究者によると、ダンジョンのモンスターは主に魔素を餌にして生きているらしい。
そのため、死ぬと魔素になり、ダンジョンに吸収されるらしい。
死んだ直後はモンスターの特徴の元となったゆかりの品がドロップされ床に落ちる。
そしてしばらく放置しておくと、そのドロップ品さえもダンジョンに吸収されるらしい。
「この荒野の先は何があるのでしょうかね?」
ジローはまだ見ぬ16階層を思い描く。
「あー、ジロー、16階層は湿地だ。20階層までは続くぞ。」
「リュージさん、言わないで下さいよー!!せっかくたのしみにしていたのに…。」
「そうか? 16階層はジローの好きなポイズントードかいるぞ。毒毒モンスターだ。好きだろ、ジロー、毒毒モンスター。」
「勘弁してくださいよー、リュージさん、自分が毒食らった時のこと覚えているでしょう? あの時、マジで死ぬかと思いましたっす。毒なのにめっちゃ混乱してました。」
「まぁそうだろうな。毒状態のやつにションベンかけてくれと言われ、俺は締めたろかと思ったぞ。」
「すみません。リュージさん。 自分はリュージさんにションベンかけられても大丈夫です。本当に大丈夫です。今度なった時は遠慮なくお願いします!!」
「ジロー、それは絶対にない。それにションベンかけて何とかなるのは、ハチぐらいのもんだ。」
実際のところ、ハチに刺された場合は、その毒バチの種類にあった適切な血清を打つのが正しい対処方法だ。
おしっこをかけるというのは、おしっこに含まれるアンモニアが痛みを和らげてくれるというものであるが、効果はほどんど期待出来ない。
寧ろ、雑菌が患部から侵入してしまう可能性も高く、おススメ出来ない。
生温い温水の方が消毒もでき、患部を清潔にしてくれる。
ましてや、ジローの場合は毒なので、問題外だ。
「ジロー、さっさと行くぞ。」
「ヘイ。リュージさん。」
2人は16階層へのスロープを降りていく。
16階層はリュージが言っていた通り、湿地帯であった。
広い。
広大だ。
そして湿度が高い。
先程まではカラッとした荒野だったのに、うって変わって湿地。
荒野は明るかったが、湿地は暗くてジメジメしている。
ここでもダンジョンの不思議が存在している。
ダンジョンには太陽のようなものが存在する。
そこでは地上のように空気もあれば水も存在する。
当然ながら、空気の対流があれば、雲や霧も存在する。
植物や虫、朝と晩も存在する。
驚いたことにそれは地上の朝晩に連動しているようだ。
まるで階層ひとつ一つが別の世界のようである。
「リュージさん、どっちに行けばいいスカ?」
「冒険者ギルドの情報によると、降りた場所から北北西辺りに、次の17階層の入り口があるらしい。」
「おそらく、こっちだ。」
リュージは相変わらず、迷わず17階層の入り口のある方向を指し示す。
「行きやしょう。」
ジローはまっすぐリュージが指し示した方向に向かって、器用にストーンウォールを細長く作り、その上を歩いていく。
湿地帯なので、本来は歩けない方向なのだが、ストーンウォールのおかげで、泥濘にハマらずに進んでいける。
「ジロー、ナイスだな。これ、ジローがいなかったら、だいぶ迂回しなくてはいけない筈だ。普通のパーティーなら一旦、東に向かってから西に進路を取らないといけない。」
「任せて下さい。さっき、湿地と聞いた時からこの方法を考えていました。最短距離で、リュージさんを17階層に導きます。」
「おぉ、ジローが凄く頼りに思えてきた。ヤバイぞ。何かフラグが立ってそうだぞ。大丈夫かなぁ………。」
「あぅ、リュージさん、何かいます。デカイです。」
ジローは素早く戦いのための足場を確保するためにストーンウォールを広げる。
湿地の中から、泥がものすごい勢いでリュージたちの方に向かってきた。
リュージは避けた。
ジローは避け損ねた。
ジローは泥だらけになりながら、呻いた。
「リュージさん、ヤバイっす。目が見えません。しかも、毒液浴びました。ステータスバッドです。」
「プチウォーター!」
リュージはジローに向かってプチウォーターを唱え、洗浄する。
ジローは泥だらけだったが、リュージのプチウォーターのおかげで、綺麗になった。
プチウォーターといえど、リュージの場合はジローの体すっぽり覆えるほどの大きさだった。
一応、コントロールしているので、柔らかい硬さでジローに当たっても、すぐに飛散する程度だ。
「ありがとうございます、、リュージさん。」
「ほら、解毒ポーションだ。飲めるか?」
「あっ、はい、飲めます。でも、あの泥はポイズントードでしょうか? なら、倒してからの方が良いのでは?」
「うむ。じゃ、ジロー、あの辺りをストーンウォールで持ち上げてくれるか?」
リュージは15メートル先の窪みのある湿地の地点を指している。
「わかりやした。ストーンウォール!」
ジローが持ち上げた途端、また、すごい勢いで泥が飛んできたが、途中で左右に真っ二つになってストーンウォールの上に落ちた。
鑑定
ビッグポイズントード
ビッグポイズントードは泥だらけだった。
気持ちの問題だが、リュージはプチウォーターをビッグポイズントードにかけた。
しばらくすると、ビッグポイズントードは魔石と毒液瓶に変わった。
リュージは湿地にドロップが落ちるのを嫌って、プロテクションでビッグポイズントードを覆っていたため、そのままアイテムボックスに収納した。
「毒液瓶とかどーすんだろな。暗殺か?」
「リュージさん、お願いしますから、変なこと考えないでくださいね。」
「なんだよ、変なことって。 あぁ、さてはジロー、毒液浴びたいとかか? そーいや、もう毒状態から回復しているよーじゃねーか。そーいう振りだったのか。ほら、毒液瓶だ。好きにしな。」
リュージは毒液瓶をアイテムボックスから出して、ジローに放り投げる。
「なわけないです。誰も好き好んで毒液とか浴びたりしませんよ。そんな趣味は持ってません!!」
ジローはそう言いながら、リュージから放り投げられた毒液瓶をキャッチした。
キャッチした途端、毒液瓶の蓋が勢い余って飛んでしまった。
ジローは慌てた。
慌て過ぎて、毒液をたっぷり手足に浴びてしまった。
「やっぱり、ジロー、オメーは…。」
「いや、リュージさん!今のは完全に不可抗力です。ワザとではないです。ないですからねー。」
ジローは慌て過ぎて、更に混乱している。
ジローが浴びた毒液瓶に入っていた毒液はジローには効いていない。
アイテムボックス鑑定
対象
ジロー
毒耐性LV5 [UP]New!
「毒耐性がLV4からLV5に上がっているじゃねーか。ジロー、良かったな。もはやビッグポイズントードごときじゃ、オメーを毒にはできないようだぞ。」
「さっきの毒液浴びたせいですね。毒にならないのなら、まぁ、有難いです。」
ジローは再び、ストーンウォールで道を作っていく。
ビッグポイズントードはあれきり出てこないが、ポイズントードがひっきりなしに飛んでくる。
リュージは後ろからプロテクションで包みながら、アイテムボックス刀で倒していく。
いつもはジローがストーンウォール等で止めて、リュージが斬るといった戦法だったが、ジローがストーンウォールで忙しい為、全てのモンスターはリュージが倒していく。
やがて、17階層の入り口のある歩ける場所まできた。
「やれやれ、よーやくついたな。まぁ、なんやかや言って早かったか。」
「リュージさん、17〜20階層まで、この調査なら同じ手法で行けそうですね。」
「17階層はポイズンサラマンダーが出てくる。大型の山椒魚みたいなものらしい。ポイズントードよりでかいらしいから、気を引き締めて行け。」
「へイ! サンショウウオ、食べれたらいいですねー。」
「泥の中にいてて、毒持ちだぞ。食べたいという発想はジローぐらいのもんじゃね?」
「わかりませんが、元の世界だと、ぜってー食べられそうじゃないものって食べてみたいじゃないですか。」
「そうか?俺達ゃ、一応、おばちゃんの食堂弁当があるから、しばらくは食には困らないぞ。美味いし。」
「リュージさん、そんな話をしていたら、腹減ってきました。飯にしませんか?」
「そーだな。階層的にも半分来たし、キリもいいから食べるか。ジロー頼む。」
「ヘイ、ストーンクリエイト!」
ジローがそういうと、食事用のテーブルと椅子が2つ地面から盛り上がり、出来た。
リュージはテーブルに食堂弁当と屋台で買った串焼きをコッヘルセットに入れて出した。
美味い!!
2人はダンジョンの中で美味しい食事を楽しんだ。




