010 冒険者ギルド アゲイン
2人は冒険者ギルドについた。
夕方に近いので、冒険者ギルドはクエスト清算の冒険者で賑わっていた。
5人の受付嬢も忙しそうである。
午前中にきた時は気付かなかったが、冒険者ギルドの受付の右手奥に、コの字になったカウンターバーか見える。
人がいなかったから、そこがバーになっているのに気付かなかったようだ。
バーには既に酔っ払った冒険者が数名と、カウンター以外のテーブルになったところにパーティーメンバーとおぼしき人々が数組、本日の成果に対しての祝杯を上げているのか、楽しそうに話しているのが見えた。
受付の反対側に目をやると、クエストボードと呼ばれる壁一面に張り紙がところ狭しと貼られていた。
「ジロー、クエストをまず、見てみようか?受けれそうなら、番号を控えよう」
クエストボードは常設クエストボード、ランク別クエストボード、指定クエストボードと別れているようだ。また、それ以外に情報交換用の書き込みができるボード、情報に対する対価を求めるノートなどがあった。
情報交換用の書き込みは主に宿屋や食堂と言った当たり障りのない情報。
中には色街の情報などもあった。
ノートの方は結構シビアで、ボスモンスターの攻略情報求む、金貨2枚、何日何時といった報酬と連絡方法、が書き込まれていた。
また、更に奥にはパーティー募集の待機場所と掲示板があった。
そして、そのパーティー募集の待機場所と情報ノートの合間に、
『低ギルドランク 情報紙』コーナー
(持ち出し禁止)
と言った場所があった。
「リュージさん、とりあえずあそこ行って見ますか?」
「だな。まずは情報だしな。」
『わざわざ、低ギルドランク用に設置してあるコーナーなんだから、何かしら有益な情報があるに違いない』
と思ったからだ。
まぁ、それは実際には間違いではなかったのだが、誤算もあった。
リュージとジローは低ランクギルドコーナーで、情報収集をしていると、そばにあったパーティー募集の待機場所に、こちらをニヤニヤ見ているパーティーがいた。
明らかに、低ランク、格下と思って笑っている。
リュージは
『おぉ、テンプレきた。わーぃ。やっべぇ、めちゃクチャ興奮する。まずは、メンチ切っとくか。』
リュージは見ているパーティーに対して、メンチきる。
ギロッと…。
リュージは忘れていた。
リュージは背格好は190センチ、細マッチョ、おまけにイケメン。
まるで、大型の黒豹。
イケメンがニヤっと笑いながら、見る。
そして、威圧。
しかも、周りではなく、そのパーティーに向けて。
パーティーメンバーは5人。
その5人は一瞬で硬直、膝ガク、悶絶、気絶、泡吹き、になってしまった。
リュージは見ただけである。
しかも、今から始まるところだったのに、5人が5人とも、僅か3秒もたたず、無力化。
リュージはジローを見る。
ジローは目を合わせない。
「俺たち新人だよな、なっ!ジローぉ。おい、ジロー、返事しやがれ!!!」
「ひぃぃぃ、リュージさん、勘弁して下さいよ。リュージさん、異世界きて、更に威圧感 ハンパないっすよ。あんなの向けられたら、普通の人は生きてられないですよ。マジ勘弁して下さい。」
「黙れ!!、俺たちはこれから異世界で生きていかなければならない。 ジロー、オメーは俺に何があってもついてくるんだろ。威圧ぐらい耐えろ。それに俺が向けたのはあいつらだけだ。ジローに向けてねーぞ。」
「すみません、リュージさん、俺間違ってました。リュージさんについていきます。」
リュージはジローを軽く威圧する。
「キャンキャンキューっ」
とジローは軽くブラックアウトする。
「リュージさん、ひどい…」
「うむ、普段慣れているジローが、こんなだと、心配になるな。やはり、この異世界にきて、何かしら、変化したのかもしれないな。」
「人で実験しないで下さいよ。」
ジローはそう言いつつ、まだ、クラクラする頭を傾げながら、真面目に資料を読み始めた。
エロイムは辺境にあり、ワッサム帝国の領土に属するらしい。
ワッサム帝国には12個の領土があり、それぞれに領主がいて、おさめているらしい。
ワッサム帝国の首都は独自の鉱山と穀倉地帯があり、豊かだ。
そのため、地方からの国税も少なく徴収している。
地方は自治が認められ、それぞれに独自の納税政策をとっているらしい。
ここ、エロイムは辺境ということもあり、ダンジョンも多くあり、そこからの収益もあり、辺境という割には安定している。
リュージはダンジョン情報を読んでいた。
エロイムには
3つの初級ダンジョンと9個の中級ダンジョン、2個の上級ダンジョンがあるらしい。
初級ダンジョンには制限がないらしいが、中級ダンジョンからはギルドランクD以上の制限があるらしい。
初級ダンジョンの各階層のモンスターデータは公開されていた。
「ジロー、初級ダンジョンのモンスターデータ、やっぱり、オメーが言うように、あったぞ。各階層のデータもある。冒険者ギルドに来て正解だな。」
「リュージさん、こっちもエロイムの情報ありました。詳しくは宿でお話ししますね。観光案内ガイドのような情報紙ですので、実際は多少脚色があるかも知れませんが、この国、ワッサムの情報もバッチリです。」
「こっちのダンジョンデータは、イラスト入りだぞ。ただし、マップは略式だ。 詳しいやつはギルドで、有料販売しているらしい。とりあえず、モンスターデータを記憶しとく。サイムの初級ダンジョンは動物系がたくさん出てくるようだ。」
「リュージさんがいれば、動物なんて楽に倒せそうです。ボスモンスターとかでも、秒殺できそうっすねー。」
「バカ言うなよ。俺は人間はよく相手したが、動物はないぞ。普通にやったら、日本じゃ動物虐待で捕まるわ。まぁ、この世界ではスキルとして、魔法が使えるようだし、様子を見ながら、やってみよう。」
「自分も頑張ります。」
「リュージさん、さっきのギルドのクエストボードを見てきていいですか?クエスト受けてみたいです。」
「まぁ待て。もうすぐ、全部記憶できそうだから一緒に行こう。」
リュージはマッピング能力に長けているため、記憶力もいい。
1度でも通った道は必ず覚えている。
写真で見た風景や説明も、だいたい思い出せる。
普通の人でも思い出せるとは思うが、リュージ程、詳細まではなかなか思い出せない。
また、こと風景に関しては実際との齟齬があるため、マッチングは普通の人はなかなかできない。
略地図を見て、実際の風景と当てはめて、きちんと目的地へたどり着くことができる能力と言ったらわかりやすいだろう。
今でこそ、GPSを利用したスマホのアプリで簡単に目的地にたどり着くことができるが、スマホの画面だけを見て、目的地にたどり着くことができない人は多くいる。
リュージは初めての街でも、街にある地図や道路、街並み、匂い、人の動き、などから一瞬にして自分の頭の中にマップを構成することができる。
それが人並み外れて早いのと正確なのである。
「だいたい、いけた。ジロー、行くぞ。」
リュージは冒険者ギルドのクエストボードを、見ていた。
Gランクだと、野草採取系や街中の雑用ばかりだな。
あと、目立つのは農作業手伝いや配達か。
「ふむ、どーするか?」
リュージは先程、クエストボールの横にエロイムの街の地図と周辺地図かあったので、それを記憶した。
一般的な冒険者でも、クエストの場所が分からなければ困るだろう。
ギルドではその冒険者が地図を見て、クエストが受けやすいようにしているようだ。
「よし、決めた。067と114と701と403を受けよう。うまくいけば明日1日で終わるだろう。」
「えー、リュージさん、受けすぎじゃないっすか?失敗すると確かペナルティありましたよね。大丈夫すか?」
「多分、楽勝だ。期日も数日ある。依頼の場所も近い。配達は実際の場所が見れるし、農作業は収穫の手伝いだ。 わかるな?ドロップ品を拾うのと同じだ。 野草は後で資料を確認する必要があるが、期日も長いし、常設にもあるから、常に必要とされているんだろう。これは採取してから受けてもいい。最後のは俺たちの目的地でもある初級ダンジョンの中のモンスター討伐だ。5〜8階層のコボルトの毛皮だそうだ。5体分で、ギルドポイント5貰えるから、お得と書いてあるぞ。それがどれくらいお得けわからんが、10体狩ってきたら10ポイントと言う計算なら、たくさん狩ってきたら、ポイントもたくさん貯まるだろう。」
「すごいっす。リュージさんにかかれば、段取りバッチシですね。土木事務所のプランナー係に見せたいです。段取り悪すぎて、工期を何度遅らせたか…。」
「おいおい、ジロー、勘違いすんなよ。今回はクエストの段取りだ。その事務所のプランナー?とはまた畑が違うぞ。」
「いいんです。リュージさんはこんなたくさんのクエストの中から、ほぼ一瞬で、最適解を見つけたんすから、スゲーのは変わりないんすから。」
「そ、そうか? まぁ、急ごう。 待っている列が、だいぶ空いてきた。受付がいつ終わるかわからないし、明日になったらまた、混み合う可能性もある。受けれるタイミングで、受けよう。」
「ヘイ、了解しました。」
そう言って2人は比較的短い列に並ぶ。
やがてリュージとジローの順番になる。
「あら、お2人は今朝も来ていましたね。登録したばかりの方ですね。背が高くて、体も筋肉が美しいですね。独身です。」
最後の言葉はリュージに聞こえるか聞こえないか、ギリギリの声だったが、かわいい系の美人さんが対応してくれた。
「067と114と701と403のクエストを受けたい。手続きして貰えるか?」
「少々、お待ち下さいませ。」
程なく、奥から関係書類を持ってきた。
「順番に説明させて頂きます。まず、野草採取に関しては、067は急ぎのため、期日がありますが、多く採取して余れば常設クエストのものに充当させて頂きますので、ご安心下さい。期日内に規定数はお納めください。」
「114に関しては、配達です。3箇所への小麦、芋袋、雑穀等の配達です。多くなりますので、荷車やできればマジックバックをご用意下さい。 」
「701は野菜の収穫の手伝いです。収穫最繁忙期なので、明日の早朝からお願いします。最優先です。 」
「最後の403はコボルトの毛皮採取です。 今回は最低5の依頼ですが、お気をつけ下さい。コボルト5匹を狩るではなく、毛皮です。ドロップ率は低いです。必ず毛皮がドロップすると言う訳ではありません。魔石ドロップが通常ドロップです。ただし、今回はクエスト説明にもあった通り、ギルドポイントが5ポイントつき、10匹狩ったら10ポイントです。無理しない程度に頑張ってくださいね。」
かわいい掲示板の受付嬢は最後は可愛く、ニッコリと微笑んでくれた。
「説明は以上です。こちらが依頼確認書です。完了したら依頼者からサインと評価番号を書いてもらって下さい。コボルト討伐と野草採取は納品先ぐ冒険者ギルドとなっていますので、こちらに持ってきて下さい。」
「ありがとう。無理しない程度に頑張ってくるわ。」
リュージたちは、農作業の収穫手伝いが早朝と言うことを理解し、早めに寝ることを考え、冒険者ギルドも早めに出てきた。
「リュージさん、明日は早いので、風呂に入って早めに寝ましょう。」
「そーだな 。お風呂セットは又にして、宿屋に戻って早めに寝よう。」
そう言ってリュージたちは足早に宿へと戻っていった。




