目指すは大陸。向かう方向は濃霧。
呪いとはなんなのか。
正直なところそんなことは一切考えないままに弓削さんのところに向かった。
この時点で俺はオカルトに毒されすぎていたのだと、今になってみればわかる。
体の異常がなければ、じゃあそちら側の事情だと、そんなふうに安易に選択肢に入れてはいけないもののはずなのに。
だから弓削さんは俺にあえて皆まで言わなかった。俺に理解を促した。
誰でも簡単に使える魔法。
言葉一つで相手を縛れるお手軽な術。
しかしそれは人知を超えない。
つまり、心を縛る、人の業。
俺は浮かれていたのだ。
呪いの一つくらい、簡単に解けると侮っていた。
だから安易に思考を飛躍させることができた。
裏と表があると知って、俺は簡単に世界を反転させるような人間に成り下がったのだ。
だが弓削さんは言っていた。
『裏も表もないんだよ』
それが真理だ。
あるのは一つの「個」。
それはそれであってそれ以外にはなり得ない。
程度の知れた俺なんかに、浮かれて侮れる問題など一つとしてないのだ。
ぶつかって、もがいた結果得たものが、驕りと傲慢さなのだとしたら、俺は俺を殺したくなってしまう。
だから俺は今回、解決などという自惚は捨てたのだ。
できることを確実に。
それ以上を求めず、それ以下にならないよう最大限努力した。
そのつもりだった。
それがどうして……。
「私飛行機初めて」
「え、金持ちなのに?」
「旅行は国内だけだったし」
「もったいな〜 私だったらそこらじゅう行きまくるなぁ」
「あ、ほら、動くって。黙ってないと舌噛むよ」
「そんな下手なことしないッタァ!!!」
どうして俺は、三人でアメリカ行きの飛行機に乗ることになっているんだろう……。




