表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
188/280

一人反省会。現実逃避ともいう。



 人を探す、というのは確か学校祭の1日目の夜にも体験した。

 そういえばその時も、同じ人物を探していた気がする。



 *:*:*



 そうだ、あのときも結局どうして里奈さんが誘拐めいたことをされたのかはわからずじまいだった。

 わからないことは他にもある。

 あの日のできごとはわからないことが多すぎる。

 里奈さんの誘拐もそうだし、由利亜先輩のお義母さんのこともそうだ。

 それに、婚約者決めのことも疑問が残っている。

 あの日にまるっと面倒ごとをおいてきてしまって、しかもそれがあとあとより面倒になって返ってくるなんてことにならないようにしなければいけない。そう思いながらも、俺には結局その場その場で横に置くよりはましくらいの対処しか出来ることがないのも事実だった。

 いや、これまでこんな風に考えた時点で残念な結果になることは目に見えている気がする。

 うん、考えるまでもない。

 考えたらおしまいだな。



 館内には里奈さんの姿はなかった。

 館外も、周囲にも影も形もない。

 はてさて。

 あまりにも軽いフットワークだな。まさかこんな風になんの脈絡もなく突然姿を消されるとは思ってもみなかった。

 だがいくらフットワークが軽かろうと、さすがにカバンを置いてどこかに行く人ではない。

 これは電話でなにか突発的なことが起きたと考えるのが妥当だろう。

 俺が携帯を持っていないことがここでも災いしたということなのかもしれない。

 現代の利器というのは持っていないとこうも不便なのかと痛感する。

 いや、いままでも不便さは感じていた。

 いろいろな面倒くささを理由につけて、用意しなかったわけだけれど。

 わけだけれどって……。

 うん……、まあこの状況も若干は俺の所為だな。

 俺の所為と割り切って、とりあえず行方だけでも捜すとしますか。

 人捜しの基本は情報収集からだ。

 図書館及びその周辺にはいなかった。

 出入り口付近の見える位置に腰掛けて、1時間ほどの時間を潰したが里奈さんは現れなかった。

 電話に出て、自分から外に出て行った人間が、姿をくらました場合には、約束をした人間はどう行動するべきなのだろう。帰ってしまって良いのだろうか?

 本当ならば良いのかもしれない。

 カバンを持ち帰って、家からスマホに連絡を入れれば丸く収まるのだろう。

 では今この状況でそれをするのが正解なのかと問われると、否と回答しなければいけない気がする。

 何しろ、勉強会を所望した人間が、何も言わずに行方をくらませたのだ。

 まあ、勉強が嫌で逃げ出したと考えることも出来るが、そんなことで逃げるような人でないことを俺は知っているし、なにより、少し戻って少し説明してカバンを持って行く、この5分にも満たない行動さえ起こさない人間というのが、いったいどれほどの事態に巻き込まれているのかという疑問にも思考が行き着いていたから。

 例えば、家族になにかがあったというのなら、それを一言添えてカバンを持って帰るという判断が出来ない人ではないだろうし、例えば、忘れていた用事に関しての電話だったとしても同様のことが言える。

 だから里奈さんがカバンを取りに戻らなかったのは、俺に対するなにかの意思表示なのではないか、そんな自意識過剰な妄想に思考を巡らせながら俺はふとさっき考えないようにしようと思ったことについてしこうが行き着く。

 それは確かに学校祭1日目の夜の出来事。

 俺と由利亜先輩と里奈さんは、御牧という白髪の男にレストランへと連れて行かれ、俺と由利亜先輩がいないすきに里奈さんを短時間とはいえ誘拐の様な状態においてしまった。

 俺は里奈さんが誘拐されたことに動揺し、姿を見つけたところで思考を停止して帰宅の途につくだけになってしまったけれど、よく考えるまでもなく、あの状況、里奈さんが誘拐された理由が全くわからないままなのだ。

 最初は由利亜先輩の婚約者決めが難航したからかとも考えていたけれど、今思い返してみれば、難航したところで里奈さんを連れて消えるメリットなどどこにもなかった。

 事実、あれから由利亜先輩の婚約者は決まっていない。

 どころか立ち消え状態となっている。

 それが由利亜先輩には良い状態なのは確かだろうけれど。

 ことがここに至って、俺はようやっと理解の種をまかれたのかもしれない。

 あの夜会での本当の目的、というものの種を。

 由利亜先輩の婚約者決め、あれは嘘ではなかったのだろう。

 しかし、その行事自体に意味はなかった。

 いや、あの行事をすることで婚約者候補側に決める意思を示すことが、あの夜会の一つの意味だったのかもしれないが、それは多分、鷲崎正造側の意味だ。

 そう、御牧があの場にいた意味と理由には何もかからないのだ。

 ではなぜあの場に御牧がいたのか。

 俺の予想が正しければ、それがあのとき、学校に現れた理由だったのだろう。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ