表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
180/280

学校とかホント……。


 現在、十月の半ばである。

 正確には十月十八日の金曜日。

 来週に控えたテストを前に、我が校ではテスト対策講座が開催されていた。

 通常のテスト期間であれば、一週間前だろうと普通に授業があるのだが、今回は修学旅行や文化祭が重なった。生徒側への配慮として、学校側がとった応急処置がこの対策講座と言うことだ。

 1限からフルでテスト範囲を網羅する為の授業が行われ、テストに必要な情報を教師陣が喋り続ける。

 普段の授業よりも中学の授業に近い授業内容に、俺はあくびを噛みしめていた。

 すこし目を動かせば、三好さんは必至にノートをとっていて、隣では弓削さんがノートの端に教師のコメントを書き留めていた。

 そういえば、弓削さんの成績がどれほどなのか俺は知らない。

 まあ、三好さんより悪いと言うことはないと思うし、このクラスにいるのだからそれなりの点数を取っているのだろうけれど。

「ん?」

 俺が見ていることに気付いて弓削さんが首を傾げる。

 首を振ってなんでもないと伝えると、お互いに顔を前に向けた。

 考え事をしながら見過ぎていたらしい。

 それにしても、と教科書を持ち上げる。

 教師がぴくりとこちらに視線を向けた。

 かなり久しぶりに授業に参加したからか、内容がさっぱりだ。

 首をひねる。

 文字を追ってもよく分からない。

 んー……。

 さて、どうしたもんか。

「じゃあ、今日はここまでだ。結構時間あまってるから、好きに勉強してくれ。分からないところあったら聞いてくれ」

 丸いすに座ると息を吐く教師に生徒がわらわらと群がっていく。

 さすが特進クラスと言った所だろうか。

 教科書に目を戻すと、俺は再び首を傾げた。

 書いてある内容が分からないとか、問題が解けなくて悩んでいるわけではない。

 ただ、この文章が教科書で教えるようなことなのかが分からなかった。常識レベルじゃないのか、これ……。

 歴史科目においてのあるあるだと思うが、人によって知識がばらけるのだ。

 明らかに義務教育レベルのことを本当にしらない人間もいれば、しってても得にならないようなことまで知っている奴もいる。

 教科書に載っていることは、国単位で不平等を生まないための知識だと、わかってはいるのだが、どうも疑問だ。

「どうだ、山野。ずいぶん休んでたから、分からないんじゃないか?」

 後ろの方にある俺の席に届くほどの声で、教師が生徒のガヤを飛び越えてそう聞いてきた。

 心配する声ではない。

「別に休みたくて休んでたわけではないですけどね。一身上の都合で休んでただけで」

 独り言のようにぼそりと呟く俺に、教師は得意げな顔でにたりと笑って俺の方を見るのをやめた。

 隣の弓削さんが不安そうに俺を見ている事に気付いて、

「大丈夫。歴史は得意だから」

 親指を立てて笑っておいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ