彼女には優しいニート
初見の人のための人物紹介
アパレル 本名は西谷マキ。以前はアパレルショップで勤務していたのでアパレルと呼ばれることになった。かつてニートと共に無人島で暮らしたデスゲ仲間。以前、莫大な借金を抱えていたせいか、節約癖が治らない。
その他の凪沙のクラスメート一覧
モブ崎 R18足長おじさん
モブ原 春夏秋冬に恋する乙女
モブ山 ダイレクトマーケティングのモブ山。以前、モブ島と共にMr.XのBLエロ同人の餌食になった経験がある。
モブ島 良い人止まりのモブ島。モブ山と共にBLエロ同人の餌になった経験があり、トラウマとなっている。
モブ谷 裁縫女子
ボブ沢 陰湿なイジメが趣味
モブ川 純然たるロリコン
モブ部 趣味はリストカット系女子
モブ木 特技は藁人形作り
モブ藤 盗撮を生業にしている
モブ橋 グルメというよりは悪食
モブ田 お金大好き
*クラスメートのモブ共は覚えなくていいです。
Mr.X「ふっふっふ、テレビの前の腐敗した諸君、BOYS LOVE AND PEACE」
奇妙な仮面をつけ、黒いマントに身を包んだ正体不明の人物がテレビに映り込んだ。Mr.Xの放送が始まることを嗅ぎつけた腐敗物どもが街頭に設置された巨大な液晶テレビの前に何人も群がり、Mr.Xを崇め始めた。
Mr.X「この私が兎歩町を封鎖してから早数ヶ月、今日も私にたてつく愚かな反逆者どもをネタにBLエロ同人を描き上げてやったぞ。しかも、全80ページにも及ぶ超大作の全編フルカラーだ!!」
Mr.Xの新作BLエロ同人の発表に、テレビの前に群がっていた腐敗物どもが歓喜の声を上げた。
腐敗物「新作じゃ!新作じゃ!Mr.X様の新作じゃ!!」
腐敗物2「これでまたさらなる高みへと腐れます」
腐敗物3「しかも今回は80ページにも及ぶ超大作…」
腐敗物4「ああ!Mr.X様万歳!お慕い申しております!」
どうやらこの連中はMr.Xの新作を待ち焦がれていたMr.Xの信者である不審者ならぬ腐信者のようだ。
腐信者「今回も妊娠してしまいそうですなぁ」
腐信者2「出産が捗りますね」
表向きにはこの町を封鎖させている張本人と言い張っているMr.Xには敵が多い。
その敵の牙を抜くために、Mr.Xは反逆者をBLエロ同人のネタにして、戦意を削いでいるのだ。
反逆者には罰を、信者には飴を、その二つをBLエロ同人で同時にこなす恐怖の統治制度、その名も恐腐統治。
Mr.X「ふっふっふ、今度はどの反逆者をかけあわせてやろうか…楽しみにしているがいい」
これが私、塩入凪沙のもう一つの顔のMr.Xである。
こうなってしまった経緯もこれまた複雑なので、ここでは省略する。とりあえず、初見の人は私が町中のテレビの電波をジャックして、Mr.XとしてBLエロ同人を執筆し、町の平和を維持しているとだけ理解してもらいたい。…うん、ほんとに何言ってるか分からないよね。
だが、BLエロ同人は世界を平和にするということはすでに証明済みなので、理解は難しくないはずだ。それに、これはこの話には大して重要ではない話だ。
そういうわけで、カリスマBLエロ同人作家のMr.Xの作品は多くの女性に愛されており、その新作が発表された今日、私が通う高校ではその話で盛り上がっていた。
カグヤ「先生、どうかこっそり新作を譲ってください。家宝にするので」
腐信者であるカグヤが私に直接交渉を仕掛けてきた。
凪沙「悪いけど、自力で手に入れてくれ。身内に配れるほど部数に余裕が無いのだ」
カグヤ「そんな…殺生な…。もう二人の子を孕む準備は出来てるのに…」
凪沙「お前の子宮忙しいな」
カグヤ「せめて配られる日と場所だけでも教えてください」
私がMr.Xであることがバレないようにするため、BLエロ同人を配る際にはそこからMr.Xの正体がバレないように誰にも見られることなく配られる必要がある。
そのため、Mr.Xの正体を知っている何人かの人の手を借りて、人のいない早朝、トラックで新作のBLエロ同人を至る所に不法投棄する方法を取っている。
BLエロ同人を欲しがる腐信者達はその腐法投棄されたBLエロ同人を探して入手するのである。
めんどくさい方法だが、こうでもしないと元を辿られてMr.Xの正体に行き着く者が出てくるかもしれないからだ。
モブ原「楽しみだね、Mr.X様の新作」
モブ谷「あぁ、待ちきれないんじゃぁ」
モブ部「これでまた妊腐が増えるね」
クラスの女子がMr.Xの新作を待ち焦がれる中、クラスの男性陣は怪訝な顔をしていた。
モブ木「…けっ、なにがMr.Xだ」
モブ藤「やめとけ、モブ木。Mr.Xへの反逆的な発言は密告されるぞ」
モブ田「反逆がバレたら最後…俺たちは腐女子の餌になるんだ…」
モブ崎「かつてMr.XによってBLエロ同人のネタにされたモブ山とモブ島を見ろ」
モブ山「うぅ…私…汚されちゃった…」
モブ島「もうお嫁にいけない…」
モブ川「くそっ、よくもモブ山とモブ島を…許せねえぜ、Mr.Xめ」
ボブ沢「BLエロ同人に対する恐怖で人を支配するなんて…なんて卑劣なやつなんだ…」
モブ藤「その辺でやめとけ。いつボーイズラブされるか分かんねえぞ」
モブ山「いや、もうラブられたくない…」
モブ島「もう童貞のままでもいいから汚されたくない」
モブ藤「大丈夫だ、俺がついてるから安心しろ、二人とも」
モブ山 モブ島「モブ藤…」
BLに怯えるモブ山とモブ島を優しく諭すモブ藤。…ちなみに、こいつらはただのモブなので覚えなくていいです。
モブ山「ありがとう、モブ藤…」
モブ島「お前のおかげで立ち上がれる気がするよ、モブ藤…」
そんなモブ野郎どもの微笑ましい光景を女子達が腐った視線で見守る中、モブ藤の懐から一冊の本が滑り落ちた。
モブ山「モブ藤、なんか落ち…た…ぞ…」
モブ島とモブ山がモブ藤から落ちたものを確認すると、そこには自分達によく似た半裸の男がネットリと絡み合っている表紙と『モブ島×モブ山〜もう誰にもお前をモブとは呼ばせない』というタイトルが描かれていたBLエロ同人だった。
かつて自分達を恐怖のどん底に落とし入れた元凶を再びその目に認識してしまったモブ島とモブ山は恐怖でガタガタ震え始めた。
モブ木「…モブ藤…なんでお前が…それを?」
凍りつく空気の中、モブ木はモブ藤を問いただした。
信じられないものを見てしまったというモブ達の視線を感じ取ったモブ藤は観念したのか、衝撃の事実を告白した。
モブ藤「俺…好きなんだよ、このBLエロ同人が…」
モブ一同「なっ、なんだと…」
モブ藤の告白に、モブどもは戦慄を覚えた。
Mr.Xに対抗する同士だと思っていた仲間に裏切られたのだ。自分達の中にまさかユダが混じっているとは思いもしなかったモブどもは驚きのあまり、膝から崩れ落ちる者もいた。
モブ田「お前…男が好きだったのか?」
モブ藤「違う!俺が好きなのは、あくまでBLエロ同人だ!!」
モブ川「なんでだ…なんでだよ!?モブ藤!!。俺たちを騙していたのか!?」
モブ藤「そうじゃない!!。…俺だって…悪いと思ってたさ…でも、好きなんだ、このBLエロ同人が…どうしても嫌いになれなかったんだ…」
モブ藤は両手拳を握りしめ、涙ながらに語り始めた。
モブ藤「始めは…ただの好奇心だったんだ。Mr.Xに反逆したら、一体どんな罰が待っているのかをちょっと見るだけのつもりだったんだ…。そしたら…繊細な感情表現でデリケートな二人の距離が徐々に縮まっていくその様子から目が離せなかったんだ。他のジャンルには無い背徳感と、作品に対する作者の愛情に魅了されて、読むのが止まらなくなって…そして最後にモブ山とモブ島が様々な壁を二人で乗り越えて結ばれた時…俺、思わず感動しちゃったんだ。…その時から、俺はMr.X様に忠誠を誓ったのさ」
モブ崎「ふざけるな!!なんで…なんでよりにもよってBLエロ同人なんだよ!?普通のエロ同人でも良かっただろ!?百合エロ同人でもよかっただろ!?なんでBLエロ同人なんだよ!?」
モブ藤「普通のエロ同人も…百合エロ同人も…どちらも結ばれる過程よりも、結ばれた後の行為に主眼を置いているんだ。だから、言ってしまえばその二つはどちらもただのエロ漫画でしかないんだ。でも、結ばれる過程に主眼を置いているBLエロ同人は違う。あくまでエロはその二人の愛を表現するための手段でしかないんだ。…だから、BLエロ同人はその二つとはまるで性質は違う作品。…間違っても一緒になんてしないでくれ…」
静かに、それでいて力強く語るモブ藤の言葉には、BLへの愛が溢れていた。
現実を知らされたモブ達はもはやなにも話さなかった。
腐の魔の手に落ちたかつての仲間の喪失をただただ受け入れるしかなかった。
モブ藤「俺のことは嫌ってくれても構わない。…それ以上に、俺はBLエロ同人が好きなだけなんだ…」
もう仲間の元にはいられないことを悟ったモブ藤が一人で教室を後にしようとしたその時、今まで一言も話すことなく、黙り続けていたモブ橋が立ち上がった。
モブ橋「待てよ、モブ藤」
そして、自分のカバンをガサゴソとあさり、一冊の薄い本を取り出し、モブ藤に見せつけた。
モブ橋「お前は一人なんかじゃないぜ、モブ藤」
そう言ってモブ橋が見せたのは、先ほどモブ藤が落とした物と同じく、モブ島とモブ山がネットリと絡み合う誰得な内容が詰まったBLエロ同人だった。
モブ藤「お前…それは…」
モブ橋「俺も、お前の仲間さ」
モブ橋は少し照れ臭そうに、そう言って笑って見せた。
お互いに同士であることを確認したモブ藤とモブ橋はガッチリと肩を組みあった。
こうして、腐男子達の友情の花が咲いたのであった。…もちろん、腐女子達はその様子をマジマジと見つめながら、その友情の花の蜜を啜っていたとさ。
その日の放課後、私がカグヤと共に校門へと歩いていたとき、校門で誰かが待っているのを見かけた。
カグヤ「…あ、迎えに来てくれたんだ、レンジ」
ニート「…暇だったから」
彼氏のお迎えについつい笑みがこぼれるカグヤ。…なんとうらめし…じゃなかった、羨ましいことか…。
カグヤ「でも、嬉しいよ。ありがと」
ニート「…別に」
そんな彼女の笑顔についつい照れてしまうニート。…っていうか、お前、私の時と比べて態度変わりすぎだろ、ああ?。
凪沙「優しい彼氏様だこと…その調子でもう少し私にも優しくしてくれんかね?」
ニート「そういう気持ちが1ミリも湧いてこない」
凪沙「気持ちなんていらないの…ただ、もう少し優しくされたいだけなの…」
少々棒読みながらもしおらしくそんなことを言ってみる私。
ニート「…わかったよ」
そんな私の色香が通じたのか、申し訳なそうにニートはそう言った。
ニート「いままで酷く当たって悪かった。…俺からの優しさの証としてこいつを受け取ってくれ」
そして、ニートは私にも一枚のメモ用紙を握らせた。
凪沙「…これはなに?」
ニート「晩御飯の買い物のメモ。…後は頼んだ」
凪沙「…ちょっとお前、体育館裏に来いよ。優しさってやつをお前の体に教えてやるからよ」
カグヤ「まぁまぁ、その辺にしよう、二人とも。だったら私も含めて3人で買い物に行けばいいだけだよ」
凪沙「なるほどなるほど、確かに3人で買い物に行けばお前らはデート出来るし、私は空気になれるし、万事解決だな。…ってんなわけあるか!?リア充に挟まれながら買い物とか嫌に決まってんだろ!!」
ニート「そうだよ、カグヤ。こいつは一人で買い物に行きたがってんだ、邪魔しないのが優しさだろ」
凪沙「うわぁ、ニートってば優しいなぁ(棒)」
ニート「だろ?」
優しさのお返しに、ニートの晩御飯はお母さんに頼んで変な物混ぜてやりたい。
カグヤ「それじゃあ、私とレンジで買い物するよ。凪沙は先に帰ってていいよ」
カグヤがそう言って、私の手から買い物のメモを受け取ろうとしたが、私はメモ用紙を持った手をサッと手元に引いて、カグヤの手を払った。
凪沙「いいよいいよ。カップルの手を煩わせるわけには行かないし、私に任せて二人は楽しんで来な」
カグヤ「いいの?」
凪沙「いいよ、行ってきな」
ニート「よし、ここは素直にお言葉に甘えるべきだ」
凪沙「お前は甘え過ぎだ」
こうして、結局買い物を引き受け、私は二人を見送る羽目になった。
そもそもあの二人をくっつけたのは私だ。私にはあの二人の行く末を見守る義務がある。買い物の一つや二つくらい、引き受けてやるのが当然だ。
…でも、そうは言っても、あの二人はもともと幼馴染でフラグもめちゃくちゃに乱立してたから、私がいなくてもくっつくのは時間の問題であったが…。
どちらにせよ、可愛いカグヤの恋愛は応援してやりたいからいいんだ。…え?ニート?不幸になればいいと思うよ、マジで。
そんな娘を見守る親のような心境で私はカグヤを見送った。
ただ…二人で寄り添って歩いて、心なしか嬉しそうに頬を緩ませるその姿を私は純粋に羨ましいと思った。
買い物のためにスーパーにやって来た私の目にとある一人の女性の姿が映った。
凪沙「あ、アパレルじゃん」
アパレル「あら?こんにちは、凪沙」
彼女の名前は西谷マキ、通称アパレル。私より少し年上のお姉さんで、かつてニートと共に無人島でデスゲームをしていた仲間だ。
…初見の人はなに言ってるかわからないと思うが、とりあえずニート経由の友達とだけ理解しておいてもらいたい。
アパレル「久しぶりね、元気にしてた?」
凪沙「うん、まあね」
そんな他愛のない世間話をしていた私は、ふとアパレルの買い物カゴに敷き詰められていた大量のモヤシに目がいった。
凪沙「…モヤシ、多くない?」
アパレル「好きなのよ、モヤシ。昔からモヤシばっかり食べててね…安いし、シャキャキしてるし、安いし、料理しやすいし、安いし、経済的だし、安いし、量も多いし、安いし…飢えを凌ぐには適している」
凪沙「お、おう、そうだな」
やけに安いという単語が耳に触った気がした。
詳しくは私も知らないが、なんでも昔は両親が残した借金で貧乏生活を強いられていたとか…これもきっとその名残なのだろう…。
アパレル「凪沙は晩御飯の買い物に来たの?」
凪沙「うん、ニートに押し付けられてさぁ…」
アパレル「さすがニート、仕事をしないことに関しては一流ね」
凪沙「全くだ」
アパレル「それで、そのニートは今どうしてるの?」
凪沙「今は…多分、カグヤとデートしてると思うよ」
アパレル「そっかぁ…ニートがデートかぁ…なにか考え深いものがあるわねぇ…」
どこか遠い日を見るようにしみじみとアパレルはそう語った。
アパレル「女性に踏まれて『ありがとうございます』ってニートが言ってた日が遠く感じるわ」
凪沙「あいつ、そんな趣味があったんだ」
よし、今度踏んでやろう。
アパレル「って言っても、島で出会ったばかりの頃の話だけどね」
凪沙「でもまだそれから半年も経ったないでしょ?」
アパレル「そうね。色々あったから…随分遠く感じるわ。…具体的には前作と前前作を合わせて100話くらいあったからねぇ…」
凪沙「うわぁ、それは具体的だねぇ(棒)」
まだ読んでない人は読もう!(ステマ)
アパレル「あっ!いけない!そろそろモヤシのタイムセールの時間だわ!!。行かなきゃ!」
凪沙「…え?まだモヤシ買うの?」
アパレル「このモヤシは食用よ。これにあと保存用と布教用のモヤシを買わないといけないの!」
凪沙「いや、アイドルのCDじゃないんだからそれは…」
アパレル「じゃあね、二人のことよろしくね」
そういって、アパレルは足早に去っていってしまった。
凪沙「ただいま」
ニート「おかえり」
私が部屋に帰ると、そこにはすでにニートがいて、ベッドで寝そべっていた。
凪沙「もう帰ってたんだ、早いね」
ニート「カグヤを家まで送っただけだしね」
凪沙「ふーん…」
なるほどな、カグヤにはわざわざ家まで送ってやるためだけに校門で待ってやるほど優しいんだな。
…私とのこの差はなんだ?。…なんかイラッ☆っと来たぞ?。
いくらカグヤは彼女だから優しく接するとはいえ、私にももう少し感謝の気持ちを持ってくれてもいいんじゃないか?。
そして、それ以上はなにも言うことなく、私は黙ってベッドで寝そべるニートを踏みつけた。
ニート「…なにこれ?重いんだけど?」
凪沙「いや、アパレルから『ニートは女の子に踏まれると喜ぶ』って聞いたからさ、踏んであげてるの。…あと間違っても女の子に重いとか言うんじゃねえよ」
ニート「いや、あれはただのその場のノリで…お前に踏まれてもそれはただの拷問な訳で…」
凪沙「いいから、『ありがとうございます』って言えよ」
ニート「嫌だよ…あと重い」
凪沙「いいから『ありがとうございます』って言えよ!?代わりに買い物に行ってくれて『ありがとうございます』って言えよ!?カグヤとの仲を取り持ってくれて『ありがとうございます』って言えよ!?いつも養ってくれて『ありがとうございます』って言えよ!?あと重いとか絶対に言うんじゃねえ!!!!」
ニート「…いや、それは、その…」
凪沙「そもそもお前、私に一度でいいから『ありがとう』って言ったことあるか!?私達、50話くらい一緒に暮らしてるけど、一度たりともお前に『ありがとう』って言われた記憶がねえぞ!?一体どうなってんだよ!?」
ニート「そりゃあ俺が『ありがとう』なんてそう簡単に言うわけないだろ!?。『これくらいやって当たり前、養って当たり前』って相手に思わせてこそ真のニートだぞ!?それをわざわざ無下にするような真似が出来るか!!そして重い!!!!!」
凪沙「重いって言うなあああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
その後、意地でもニートを踏み続ける凪沙と、それをなんとか逃れようとした二人の激闘がしばらく続きたのち…。
凪沙「はぁはぁ…っていうか、あんた露骨過ぎるんだよ。カグヤと私のこの扱いの差はなんだ!?もっと家主を敬えよ!?」
ニート「はぁはぁ…全人類に優しくするなんて出来るわけがないんだよ。誰かに親切にすることは、誰にとっても親切になるとは限らない。親切と不親切はいつだって表裏一体の存在。だから俺はせめて大切な人に優しくするのさ。どれだけ遠くに手を差し伸ばしても、俺の手は地球の裏側までは届かないのだから…」
凪沙「地球の裏側には届かなくても、同じ部屋に住んでるやつくらいには届くだろ!?なに自分の怠慢を良い感じのことを言って紛らわそうとしてんだよ!?」
お互い、息を切らして睨み合いながら口論していた。
まだ数ヶ月とはいえ、それなりに長く一緒に暮らしているので、こういう口論も珍しくない。
しかし、いつまでたっても口論は平行線をたどり、結局は私がいつも折れている。
ニートになに言っても無駄なことは分かってる。
こいつは世界で一番頑固でわがままなやつだ。近くで見て来たからよく分かる。
私がいくら叫ぼうが、喚こうが、結局こいつは動かせない。
だから、私に住み着くこのニートは厄介だ。
ほんとにほんとに…痛いほど厄介だ。
…それでも私は戦うことを諦めない。
おまけ
本編中、凪沙がニートは一度も感謝の言葉を述べたことがないと言っていたが、作者が軽く前作を読み直してみると、少なくとも一度は『ありがと』と凪沙に言っていたことが判明した。
よかったな、凪沙。