第28章:陰謀の雲 - 大同盟の計画
秘密会議 - 四王国同盟
聖都サンクタムの――
深い地下室。
ここには、スパイも到達できない。
魔法の結界が、幾重にも張られている。
防音。
透視防止。
完全なる秘密の場所。
そこに――
四王国の最も強力な者たちが、集結していた。
出席者:
武田皇帝(サンライズ帝国) + 5名のトップ将軍
フロスト王(フロスト王国) + 3名の戦略家
イグニス女王(フレイム大陸) + 4名の軍司令官
高位司祭エリオール(聖教国) + 枢機卿マーカスと10名の上級聖職者
会議室には、強力な魔法障壁が施されていた。
外からは――
聞くことも、見ることもできない。
苛立ちと恐怖
武田皇帝が、会議を開始した。
その声には――
苛立ちが滲んでいた。
「諸君」
「我々がここにいる理由は――」
「全員が知っている」
「ドラゴンハート王国...」
「彼らは、もはや単なる軍事的脅威ではない」
「我々の経済的生存に対する――」
「脅威となった」
フロスト王が、テーブルに拳を叩きつけた。
「まず、彼らは我々の武器、ポーション、ホテル市場を奪った」
「そして今――農業!?」
「彼らの農産物は、あまりに優れていて――」
「我が国の農民たちが、破産しつつある!」
イグニス女王が言った。
「我が国の商人たちは、泣いている」
「『誰も我々の商品を買わない』」
「『ドラゴンハート産があまりに良いので、皆それを求める』と」
高位司祭エリオールが、厳しい声で言った。
「そして、最悪なのは――」
「彼らは、毎月収穫している」
「魔法で」
「つまり...」
「彼らの供給は、無限だ」
経済的災害
上級大臣――高橋卿(サンライズ帝国)――が、報告を提示した。
「皆様」
「数字をご覧ください」
過去3ヶ月の我々の合計損失:
武器販売:-80%
治癒ポーション:-90%
ホテル・観光:-60%
農業(新):-70%
総経済損失:
わずか3ヶ月で、5億ゴールド
「もしこれが続けば――」
「2年以内に...」
「我々全員が、破産します」
沈黙。
重く、息苦しい沈黙。
絶望的な解決策
枢機卿マーカスが言った。
「では、我々は何をすべきか?」
「彼らと戦争?」
「セラフィナの報告を覚えているか?」
「我々は、1%の勝率で敗北する」
「経済制裁は?」
一人の将軍が提案した。
「不可能だ」
フロスト王が答えた。
「彼らは、我々を必要としていない」
「彼らは、自給自足だ」
「むしろ――我々が彼らを必要としている」
「暗殺は?」
黒い服を着た人物が囁いた。
「自殺行為だ」
エリオールが断言した。
「彼らには、影の主クロガネがいる」
「我々の暗殺者全員が、検出される」
禁断の選択肢
その時――
イグニス女王が、静かに言った。
「一つ...選択肢がある」
「だが、絶望的だ」
全員が、彼女を見た。
「100年前」
女王が続けた。
「我々は、異世界から勇者を召喚した」
「強力な人間たちを」
「彼らは、その時の脅威に対処した」
武田皇帝の目が、輝いた。
「つまり...再び召喚すると?」
「そうだ」
女王が言った。
「だが、今回は――もっと多く」
「1000人の勇者」
「プラス、我々全ての聖騎士」
「プラス、我々の半神たち」
現実確認
その時――
年老いた大臣――大賢者アルドリック――が立ち上がった。
彼の声は震えていたが――
断固としていた。
「閣下方」
「敬意を持って申し上げます」
「この計画は――自殺行為です」
「なぜだ?」
フロスト王が、攻撃的に尋ねた。
アルドリックが、深く息を吸った。
「なぜなら――」
「あなた方は、至高竜ラーヴァンを忘れているからです」
彼が、古い書物を開いた。
『大戦争の古代史』
「2000年前」
アルドリックが読み上げた。
「至高竜ラーヴァンは、単独で:」
「37柱の真なる神々と戦い」
「6頭の伝説級竜を倒し」
「9体の原初悪魔に対峙し」
「300名の半神を打ち負かした」
「そして――彼は敗北しなかった」
「彼は、封印されただけだ」
「それも、辛うじて」
竜の問題
「そして今」
アルドリックが続けた。
「ドラゴンハート王国には:」
至高竜ラーヴァン - 世界最強の存在
ヴィカース - ラーヴァンの息子、未知の力
イグニソール - マグマ竜、ラーヴァンの友
イグニア - マグマ竜の娘
ブレイズ - マグマ竜の息子
セレスティア - 白竜、姉
ルナ - 白竜、妹
「7頭の竜」
「全員、古代級以上」
フロスト王が、頑固に言った。
「ならば、我々も竜を雇おう!」
妄想竜の問題
エリオールが、真剣に言った。
「そうだ」
「妄想竜(Delusion Dragon)」
「彼は、利用可能だ」
「完璧だ!」
一人の将軍が叫んだ。
だが――
アルドリックが、首を横に振った。
「閣下」
「妄想竜を雇うことは...」
「容易ではありません」
「なぜだ?」
「なぜなら」
アルドリックが説明した。
「妄想竜――ミラージュは――」
「暗黒深淵(Dark Abyss)に住んでいます」
「そして、そこには...」
「9体の原初悪魔もいます」
【世界の声】:『情報:妄想竜 - ミラージュ。所在地:暗黒深淵(禁断区域)。仲間:9体の原初悪魔。合計戦力レベル:破滅的。警告:接近 = 99%死亡確率。』
恐るべき現実
若い大臣――先ほどまで自信満々だった者――が、緊張して尋ねた。
「では...どうやって妄想竜を雇うのですか?」
アルドリックが答えた。
「誰かが、暗黒深淵に行かねばなりません」
「9体の原初悪魔と交渉しなければなりません」
「そして、妄想竜を説得して――」
「我々の側に加わってもらわねばなりません」
「9体の原初悪魔...」
女王が囁いた。
「2000年前、ラーヴァンと戦った者たち」
「敗れた者たち」
「その通り」
アルドリックが言った。
「では、問いたい――」
「妄想竜は、ラーヴァンに対して戦うことに同意するか?」
「かつて彼を倒したラーヴァンに対して?」
沈黙。
再び。
重く、圧迫的な沈黙。
別の大臣の反対
その時――
別の大臣――海東大臣――が立ち上がった。
「閣下方」
「仮に妄想竜を雇えたとしても...」
「それでは不十分です」
「説明せよ」
皇帝が命じた。
「ドラゴンハート王国には、竜だけではありません」
海東が言った。
「そこには:」
12名のダンジョンガーディアン - 全員SSランク
影の主クロガネ - 伝説の暗殺者
50,000名以上の古代級戦士
無限の武器 - ヴィカース卿の永遠世界から
「一頭の妄想竜では...」
「バランスは取れません」
厳粛な結論
武田皇帝が――
顔を両手で覆った。
「つまり、お前は言っている...」
「我々は、無力だと?」
エリオールが、ゆっくりと言った。
「いいえ」
「我々は、無力ではありません」
「ですが...」
「現実的であるべきです」
「意味は?」
「意味は」
エリオールが言った。
「戦争は、選択肢ではない」
「もし我々が、ドラゴンハート王国を攻撃すれば――」
「我々は、全滅します」
「妄想竜がいても」
フロスト王が、必死に叫んだ。
「では、我々は何をすべきなのだ!?」
「ただ座って、彼らに我々の経済を破壊させるのか!?」
異なるアプローチ
アルドリックが、静かに言った。
「閣下方...」
「おそらく、我々は間違った質問をしているのです」
「どういう意味だ?」
「問うべきは――」
アルドリックが言った。
「『ドラゴンハート王国をどう破壊するか』ではなく」
「『彼らとどう共存するか』です」
「共存!?」
フロスト王が叫んだ。
「彼らは我々を破壊している!」
「経済的には、そうです」
アルドリックが言った。
「ですが...」
「ヴィカース卿は、我々を攻撃したことがありますか?」
「侵略的な拡大をしたことがありますか?」
「いいえ」
「彼は、ただ...より良い製品を提供しているだけです」
不都合な真実
イグニス女王が、ゆっくりと言った。
「アルドリックは、正しい」
「問題は、ヴィカース卿が邪悪だということではない」
「問題は...」
「彼が、あまりに優れているということだ」
「彼の王国が、あまりに効率的だということだ」
「我々は...」
「競争できない」
エリオールが付け加えた。
「そして、もし我々が力で何かをしようとすれば...」
「我々全員が、死ぬ」
長い沈黙。
それから、武田皇帝が言った。
「では、我々の選択肢は何だ?」
アルドリックが提案した。
選択肢:
外交的アプローチ - より良い条件を交渉
特化 - ドラゴンハートがやっていないものを生産
同盟 - 彼らとの貿易協定、対立ではなく
革新 - 自国経済を変革
秘密計画は続く
だが――
会議が正式に終了した後――
一部の者たちが、残った。
武田皇帝、フロスト王、イグニス女王、エリオール。
彼ら四人だけ。
「アルドリックが去った後」
武田が囁いた。
「本当の計画を話し合おう」
「妄想竜?」
フロストが尋ねた。
「そうだ」
エリオールが言った。
「だが、秘密裏に」
「公には、外交的アプローチを取る」
「私的には...準備する」
「これは、危険だ」
女王が言った。
「だが、選択肢がない」
エリオールが言った。
「もし我々が何もしなければ――」
「5年以内に、ドラゴンハート王国は――」
「全世界を支配する」
全員が、同意した。
秘密裏に。
必死に。
一方、ドラゴンハート王国では
同じ時刻。
私は、平和に農地を歩いていた。
新しい作物が、既に育っている。
クロガネが、影から出現した。
「ヴィカース様」
「スパイから、報告がありました」
「何だ?」
「四王国の支配者たちが、秘密会議を開きました」
「長い議論」
「ですが...詳細は得られませんでした」
「地下室、強力な魔法障壁」
私は、眉を上げた。
「興味深い」
「彼らは、計画している」
「懸念されますか?」
クロガネが尋ねた。
私は、微笑んだ。
「いいや」
「計画させておけ」
「我々には、50,000名の戦士がいる」
「7頭の竜がいる」
「12名のガーディアンがいる」
「そして、最も重要なのは...」
私は、手を上げた。
瞬時に、100本の剣が空に物質化した。
「我々には、無限の資源がある」
「誰が来ようと...」
「我々は、準備ができている」
だが――
私は知らなかった。
妄想竜という名が――
間もなく私の前に現れることを。
そして、それが...
物事を複雑にすることを。




