第136章:カードが現実を切り裂く日 - そしてメイが廊下に立っていた
序章 - 穏やかな午後の危うさ
平和な午後というものは。
長続きしない。
特に。
ドラゴンハート王国では。
穏やかな時間が続くと。
必ず何かが来る。
来るというより。
誰かが来る。
扉を開けて。
または開けずに。
ただそこに現れる。
今日もそうだった。
第一章:茶会の午後
宮殿の応接間 - 午後の陽だまりの中
お茶が美味かった。
アクアが淹れたお茶だった。
今日は少し甘さがあった。
輝夜の月の光が少し入っているのかもしれなかった。
リスカレスが向かいに座っていた。
いつも通りの無表情で。
しかし今日は珍しく。
何も言わずに。
お茶を飲んでいた。
「良い天気だな。」
私は言った。
「そうですね。」
リスカレスは言った。
それで終わった。
また沈黙が来た。
しかし不快ではなかった。
良い沈黙だった。
お茶の湯気が上がった。
午後の光が窓から入ってきた。
「こういう午後は珍しい。」
私は言った。
「珍しい。」
リスカレスは言った。
「何かが来る前の静けさかもしれません。」
「縁起でもないことを言うな。」
私は言った。
「事実です。」
リスカレスは言った。
お茶を一口飲んだ。
確かに美味かった。
「何も来なければいい。」
私は言った。
「来ます。」
リスカレスは言った。
「必ず。」
「根拠は。」
「この王国の歴史です。」
リスカレスは言った。
「平和な午後が続いたことがない。」
「...確かに。」
私は言った。
お茶の二杯目を注いだ。
扉が開いた。
第二章:突然の来訪者
扉が開いた。
ノックはなかった。
音もほとんどなかった。
ただ開いた。
私は顔を上げた。
誰かが立っていた。
金色の髪が。
肩より長く垂れていた。
青い目が。
こちらを見ていた。
青いドレスを着ていた。
メイドの衣装だった。
頭に白いリボンがついていた。
手にカードが一枚あった。
くるくると回していた。
「マスター。」
その者は言った。
私は少し止まった。
(誰だ。)
私は内心で思った。
(マスターと呼んでいる。)
(つまり私の王国の者だ。)
(しかし。)
(この者は誰だ。)
「マスター。」
また呼んだ。
(マスターと呼ぶ者は多い。)
(しかしあのカードは。)
(あのカードを使う者は。)
記憶を探った。
一秒。
二秒。
(ああ。)
思い出した。
(暗黒大陸だ。)
(あそこで出会った。)
(カードを使う精霊だ。)
(人間の形を与えた。)
(ドラゴンハートに連れてきた。)
(そうか。)
(この者だったか。)
(すっかり忘れていた。)
「ユイ。」
私は言った。
ユイの顔が輝いた。
「はい!」
ユイは言った。
「覚えていてくださいましたか!」
(少しだけ。)
私は内心で思った。
(本当に少しだけだが。)
(覚えていた。)
「何の用だ。」
私は言った。
「マスターと一緒に来てください。」
ユイは言った。
「見せたいものがあります。」
「見せたいもの。」
「私のカードです。」
ユイは言った。
「マスターに見ていただきたい。」
私はリスカレスを見た。
リスカレスはお茶を一口飲んだ。
「言ったでしょう。」
リスカレスは言った。
「来ると。」
「...来た。」
私は言った。
お茶を置いた。
立ち上がった。
「行こう。」
私は言った。
「リスカレスも来い。」
「必要ですか。」
リスカレスは言った。
「来い。」
「...わかりました。」
リスカレスはお茶を最後の一口飲んだ。
立ち上がった。
ユイは嬉しそうだった。
カードを二枚に増やして。
くるくると回していた。
第三章:闘技場へ
宮殿の廊下 - 歩きながら
三人で歩いた。
私が前に。
リスカレスが横に。
ユイが少し後ろを歩いていた。
「ユイ。」
私は歩きながら言った。
「はい!」
「カードで何ができる。」
「何でも切れます。」
ユイは言った。
「何でも?」
「空間も。」
ユイは言った。
「時間も。」
「次元も。」
「概念も。」
「現実も。」
「概念を切るとはどういうことだ。」
私は聞いた。
「例えば。」
ユイは考えた。
「無敵という概念を切れば。」
「無敵でなくなります。」
リスカレスが少し動いた。
気配が変わった。
「面白いな。」
リスカレスは言った。
「実際に試したことはあるか。」
「暗黒大陸で。」
ユイは言った。
「試しました。」
「何を切った。」
ユイはカードを一枚取り出した。
見せた。
カードに何かが封じられていた。
光のようなものが。
内側で揺れていた。
「何が入っている。」
「切った時間の欠片です。」
ユイは言った。
リスカレスが止まった。
「切った時間。」
リスカレスは繰り返した。
「はい。」
ユイは言った。
「ある瞬間を切り取って保存しています。」
「それをどうする。」
「どうしようか考えています。」
ユイは言った。
首を傾けながら。
私とリスカレスは顔を見合わせた。
「...大変な精霊だ。」
リスカレスは言った。
静かに。
感情なく。
しかし確かに。
第四章:闘技場での実演
闘技場 - 午後
闘技場は広かった。
誰もいなかった。
今日は訓練がない時間だった。
三人が入った。
「ここで見せてくれ。」
私は言った。
「はい!」
ユイは言った。
目が輝いた。
闘技場の中央に立った。
カードを取り出した。
一枚。
二枚。
三枚。
増えていった。
「では。」
ユイは言った。
カードが動いた。
ユイの周りを。
くるくると回り始めた。
最初はゆっくりと。
次第に速く。
「これが基本です。」
ユイは言った。
「カードマニフェスト。」
「精霊エネルギーからカードを作り出します。」
カードが増えた。
十枚。
百枚。
見えなくなった。
速すぎて。
「次。」
ユイは言った。
一枚のカードが。
前方に飛んだ。
速かった。
目で追えなかった。
闘技場の壁に。
細い線が入った。
「...壁が切れた。」
私は言った。
「カードスラッシュです。」
ユイは言った。
「考えで動かします。」
「目で見る必要がない。」
「思えば切れます。」
「では。」
リスカレスが言った。
「闘技場全体を切れるか。」
ユイはリスカレスを見た。
少し驚いた顔をした。
リスカレスが提案したことに。
「切っても大丈夫ですか。」
ユイは私に向かって聞いた。
「何でも直せる者がいる。」
私は言った。
「問題ない。」
「では。」
ユイは言った。
カードが全部止まった。
一瞬だけ。
次の瞬間。
全部動いた。
全方向に。
音が来た。
何百何千もの切る音が。
一瞬で。
闘技場が切れた。
床が。
壁が。
天井が。
全部。
細かく。
しかし崩れなかった。
カットされた線が。
無数に入っていた。
「...。」
私は言葉がなかった。
「アリーナスラッシュです。」
ユイは言った。
「闘技場全体を。」
「一瞬で切りました。」
「空間は切ったか。」
リスカレスが聞いた。
「はい。」
ユイは言った。
「試しに少しだけ。」
「切りすぎると外に繋がるので。」
「加減しました。」
「加減してこれか。」
リスカレスは言った。
「フル出力では。」
「やったことがないのでわかりません。」
ユイは言った。
「怖いので。」
私は闘技場を見た。
無数の線が走っていた。
幾何学的に。
美しいほど精確に。
「怖いので。」
私は繰り返した。
「はい。」
ユイは言った。
「なんとなく。」
「やりすぎてしまいそうで。」
「それは賢い判断だ。」
私は言った。
ユイが笑った。
満足した笑いだった。
「マスターに見ていただけて良かったです。」
ユイは言った。
「見事だった。」
私は言った。
ユイの顔が輝いた。
カードが全部消えた。
喜んでいた。
リスカレスが切れた壁を見ていた。
「...。」
リスカレスは何も言わなかった。
しかし。
冷たい笑みが一瞬浮かんだ。
それがリスカレスの評価だった。
最高の評価だった。
第五章:マスターの言葉
「本当に良かったです。」
ユイはまた言った。
「マスターに見ていただけて。」
「良かった。」
私は言った。
「ただ一つだけ言う。」
「はい!」
「怖いので加減したのは正しい。」
私は言った。
「しかし。」
「しかし?」
「加減してこれだと。」
私は言った。
「修繕が大変だ。」
ユイは闘技場を見た。
無数の切れ目を見た。
「...すみません。」
ユイは言った。
「謝らなくていい。」
私は言った。
「見事だったのは確かだ。」
「ただ次からは。」
「屋外でやってくれ。」
「わかりました!」
ユイは言った。
元気よく。
「それと。」
私は言った。
「次から入る時はノックをしろ。」
ユイはまた止まった。
「...マスターの部屋にノックをするのですか。」
「どの部屋でも。」
私は言った。
「ノックをしてから入れ。」
「わかりました。」
ユイは言った。
「次から必ずノックします。」
「良い。」
リスカレスが言った。
「なんですか。」
「マスターへの教育が早い。」
リスカレスは言った。
「教育ではない。」
私は言った。
「礼儀だ。」
「同じことです。」
リスカレスは言った。
「帰るぞ。」
私は言った。
「お茶が冷めた。」
「また淹れましょうか。」
ユイは言った。
「頼む。」
私は言った。
「はい!」
ユイは嬉しそうだった。
またカードが一枚出てきた。
くるくると回り始めた。
「なぜカードを回している。」
私は聞いた。
「癖です。」
ユイは言った。
「...そうか。」
私は言った。
第六章:帰り道 - 廊下の事件
闘技場から宮殿への廊下 - 少し後
三人で戻った。
ユイがカードを回しながら歩いていた。
私が前を歩いていた。
リスカレスが横にいた。
「マスター。」
ユイは言った。
「今日は見てもらえて嬉しかったです。」
「ああ。」
「また見てもらえますか。」
「来い。」
私は言った。
「本当ですか!」
「来い。」
私はまた言った。
「はい!」
廊下の角を曲がった。
誰かがいた。
黒い長い髪が。
床まで流れていた。
黒いメイド服を着ていた。
青い目が。
こちらを見ていた。
「...。」
その者は何も言わなかった。
ただ立っていた。
廊下の真ん中に。
私は止まった。
(また誰だ。)
私は内心で思った。
(黒いメイド服だ。)
(長い黒髪だ。)
(青い目だ。)
(誰だ。)
また記憶を探った。
一秒。
二秒。
三秒。
(暗黒大陸。)
(精霊。)
(連れてきた。)
(どの精霊だ。)
「...メイ。」
私は言った。
メイの顔が少し変わった。
驚きから。
嬉しさに。
「覚えていてくださったのですか。」
メイは言った。
小さな声で。
(名前だけは合っていたはずだ。)
私は内心で思った。
「ここで何をしている。」
私は言った。
「待っていました。」
メイは言った。
「何を待っていた。」
「マスターを。」
メイは言った。
「どのくらい待っていた。」
「朝から。」
メイは言った。
私は止まった。
「朝から。」
「はい。」
メイは言った。
当然のように。
「今は午後だが。」
私は言った。
「はい。」
「...何時間待っていた。」
「六時間ほどです。」
メイは言った。
「六時間。」
私は繰り返した。
「はい。」
メイは言った。
まだ当然のように。
リスカレスが言った。
「...。」
何も言わなかった。
しかし。
表情に何かが浮かんだ。
珍しかった。
困惑だった。
ユイが言った。
「廊下で六時間立っていたのですか。」
「はい。」
メイは言った。
「疲れませんでしたか。」
「少し。」
メイは言った。
「しかしマスターを待っていると思えば。」
「疲れません。」
「...そうか。」
私は言った。
「何か用があったのか。」
私は聞いた。
メイは少し間を置いた。
「特にありません。」
メイは言った。
「用がないのに六時間待っていたのか。」
「はい。」
「なぜ。」
「会いたかったから。」
メイは言った。
シンプルに。
当然のように。
また沈黙が来た。
ユイが小さな声で言った。
「すごいな。」
リスカレスも小さな声で言った。
「強い。」
「強いとはどういう意味だ。」
私は言った。
「精神力が。」
リスカレスは言った。
「...そうか。」
私は言った。
「メイ。」
私は言った。
「はい。」
「次からは。」
私は言った。
「廊下で待たなくていい。」
「え?」
「書斎に来い。」
私は言った。
「会いたければ。」
メイは止まった。
長い間。
「書斎に。」
メイは言った。
「そうだ。」
「行っていいのですか。」
「だから行けと言った。」
メイの顔が変わった。
驚きから。
嬉しさに。
そして。
照れに。
「...はい。」
メイは言った。
小さく。
しかし確かに。
「では今から行っていいですか。」
メイは言った。
「今から?」
「はい。」
「私もまだ書斎に戻っていないが。」
私は言った。
「では一緒に行きます。」
メイは言った。
「...そうか。」
私は言った。
四人で歩き始めた。
ユイが小さな声でリスカレスに言った。
「さっきまで三人でしたよね。」
「そうだ。」
リスカレスは言った。
「いつの間に四人になりましたか。」
「廊下で。」
リスカレスは言った。
「廊下でいつの間に。」
「六時間待っていたらしい。」
リスカレスは言った。
「六時間...。」
ユイは言った。
少し引いた顔で。
「すごいな。」
ユイはまた言った。
「そうだな。」
リスカレスは言った。
前を歩く私と。
私の横をぴったりと歩くメイを。
二人は見た。
「メイという方は。」
ユイは言った。
「どんな力を持っているのですか。」
「聞くな。」
リスカレスは言った。
「なぜですか。」
「今日の驚きはこれくらいにしておけ。」
リスカレスは言った。
「...それほど強いのですか。」
「強い。」
リスカレスは言った。
「しかし本人は力を使いたがらない。」
「なぜですか。」
「マスターの側にいることで満足しているからだ。」
リスカレスは言った。
ユイは前を見た。
メイを見た。
私の横を。
ぴったり歩いているメイを。
「...。」
ユイは何か言いたそうだった。
しかし言わなかった。
「どうした。」
リスカレスは言った。
「私も頑張らなければと思いました。」
ユイは言った。
「何を頑張る。」
「マスターの側にいることを。」
ユイは言った。
「...それが目標か。」
リスカレスは言った。
「はい!」
ユイは言った。
リスカレスは少し間を置いた。
「ユイの場合は。」
リスカレスは言った。
「ノックをしてから来い。」
「マスターにも言われました!」
ユイは言った。
「わかっているなら実行しろ。」
「はい!」
四人が廊下を歩いた。
書斎へ向かって。
書斎に着いた。
扉の前に来た。
私が扉を開けようとした時。
ノック音が来た。
後ろから。
全員が振り返った。
ユイが。
扉をノックしていた。
閉まった扉を。
私が開けようとしていた扉を。
後ろからノックしていた。
「ユイ。」
私は言った。
「はい!」
「私が今まさに開けようとしていた扉を。」
私は言った。
「後ろからノックした。」
「ノックすると言ったので!」
ユイは言った。
「タイミングが違う。」
私は言った。
「はい?」
「入る前にノックするのだ。」
私は言った。
「私が扉を開けてからノックをしても。」
「意味がない。」
「...。」
ユイは考えた。
「難しいですね。」
ユイは言った。
「難しくない。」
私は言った。
メイが少し笑った。
音はなかった。
しかし口元が動いた。
リスカレスは天井を見た。
「...マスター。」
リスカレスは言った。
「何だ。」
「お茶が飲みたいです。」
リスカレスは言った。
「私もだ。」
私は言った。
「ユイ。」
「はい!」
「お茶を頼む。」
「はい!」
ユイは言った。
カードが一枚出てきた。
くるくると回った。
「カードでお茶は淹れられるか?」
私は聞いた。
「...淹れたことがありません。」
ユイは言った。
「では厨房に行ってアクアに頼め。」
「わかりました!」
ユイは走った。
廊下の角を曲がった。
「ノックをして入れよ!」
私は後ろから言った。
「はい!」
遠くから声が来た。
三人になった。
「マスター。」
メイは言った。
「何だ。」
「一つだけ聞いていいですか。」
「どうぞ。」
「私は書斎にいていいのですか。」
「ああ。」
私は言った。
「ただ。」
私は言った。
「ただ?」
「仕事はしろ。」
私は言った。
メイは少し止まった。
「仕事。」
「メイドなのだから。」
私は言った。
「何かしてくれ。」
「何でも良いですか。」
「何でも良い。」
メイは少し考えた。
「では。」
メイは言った。
「マスターの横に立ちます。」
「それが仕事か。」
「はい。」
メイは言った。
真面目に。
リスカレスが言った。
「...。」
また何も言わなかった。
しかし今度は。
溜息に近いものが来た。
「マスター。」
リスカレスは言った。
「何だ。」
「今日の王国の人口が。」
リスカレスは言った。
「また増えた気がします。」
「増えていない。」
私は言った。
「元々いた者たちが。」
「今日初めて顔を出しただけだ。」
「そうですか。」
リスカレスは言った。
「書斎に入ろう。」
私は言った。
扉を開けた。
三人が入った。
少し後に。
ユイが戻ってきた。
扉の前で。
ノックをした。
三回。
「今度はできた。」
私は言った。
「はい!」
ユイは言った。
お盆を持って入ってきた。
お茶が四杯あった。
「四杯か。」
私は言った。
「メイ様の分も入れました!」
ユイは言った。
「良く気が付いた。」
私は言った。
「えへ。」
ユイは言った。
メイは。
ユイを見た。
「ありがとうございます。」
メイは言った。
静かに。
「どういたしまして!」
ユイは言った。
四人で書斎に落ち着いた。
お茶が美味かった。
アクアが淹れたお茶が。
「良い午後だ。」
私は思った。
午前中より。
人数が増えていたが。
良い午後だった。
エピローグ - 夜の書斎
書斎 - 夜
夜になった。
全員が去った。
ユイが最後に言った。
「マスター。おやすみなさいませ。」
「ああ。」
「明日また来ていいですか。」
「来い。ノックをしてから。」
「はい!」
メイが言った。
「マスター。おやすみなさい。」
「ああ。」
「明日も書斎に来ていいですか。」
「来い。」
「...はい。」
メイは言った。
少し照れながら。
リスカレスが最後に出ていった。
「マスター。」
「何だ。」
「今日の平和な午後は短かった。」
「そうだな。」
「しかし。」
リスカレスは言った。
「しかし?」
「悪くなかったです。」
リスカレスは言った。
「珍しいことを言う。」
私は言った。
「今日だけです。」
リスカレスは言った。
影に溶けた。
書斎に一人になった。
「平和な午後が短かった。」
私は思った。
「しかし。」
「良い一日だった。」
「ユイのカードが現実を切った。」
「闘技場が修繕待ちになった。」
「メイが六時間廊下に立っていた。」
「ユイが扉を後ろからノックした。」
「全部覚えておこう。」
私は思った。
書類を開いた。
仕事を続けた。
廊下で。
足音がした。
二つの足音が。
同時に。
ユイとメイが。
扉の前で。
鉢合わせていた。
扉の向こうから聞こえた。
「あ。」
「あ。」
二人同時に言った。
「もう夜ですよ。」
ユイが言った。
「もう夜ですね。」
メイが言った。
「どこへ行きますか。」
「マスターのところです。」
「私もです。」
長い沈黙が来た。
ノック音が来た。
二つ同時に。
「どうぞ。」
私は言った。
扉が開いた。
「おやすみなさいませ。」
二人が同時に言った。
「...さっきも言ったな。」
私は言った。
「言いましたが。」
ユイは言った。
「また言いたくなりました。」
「私も。」
メイは言った。
「そうか。」
私は言った。
「おやすみ。」
「おやすみなさいませ!」
ユイは言った。
「おやすみなさい。」
メイは言った。
扉が閉まった。
また足音が来た。
「今のは二人で言いすぎでは。」
ユイの声が聞こえた。
「そうかもしれません。」
メイの声が聞こえた。
足音が遠くなった。
書斎が静かになった。
私は書類を見た。
仕事が残っていた。
「良い王国だ。」
私は思った。
少しうるさいが。
良い王国だった。
【キャラクター設定公開】二つの道が分かれた日——サチコとナビ
皆さん、こんにちは!
「ダークコンチネント:生きる大陸と至高の支配者」の作者です。
今回公開するのは——
サチコが、まだ
海賊にすらなる前の物語。
彼女には——
一人の親友がいました。
その名は——
ナビ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 母なる港の島で
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
二人は、同じ島で育った。
18歳になれば——
島を出る自由が
与えられる。
サチコと、ナビ。
夢を追う日が、
ついにやってくる。
だが——
二人の夢は、
同じではなかった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 二人の対話
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ナビ、私たちもうすぐ18歳ね。
島を出たら——
一緒に冒険を始めない?」
「私も島を出たい。
でも——
戦いたいわけじゃない。
ただ、世界を旅して、
新しい島を見つけて、
海の自由を
楽しみたいだけなの。」
「そう。
なら、私の夢は違う。
私は"海賊女王"になる。
そのためには——
避けられない戦いがある。」
「なら、私たちの夢は
違う道を行くのね。
私は、あなたのクルーには
入れない。」
「構わない。
あなたは私より
二ヶ月早く生まれた。
だから——
先に島を出るのは、
あなたの方ね。」
「そうね。
征服することじゃなく、
探検することを
夢見る人たちと
一緒に旅をするわ。」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 二人の約束
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「なら、約束をしましょう。
次に会う時は——
お互い、
自分のクルーの船長に
なっていること。」
「約束するわ。
世界最強のクルーを集めて、
あらゆる伝説の島を征服して、
いつか——
私は、海賊女王になる。」
「その日まで——
サチコ、
どうか無事で。
海が、あなたを
海賊女王への道へと
導きますように。」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 二つの未来、一つの海
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
サチコの未来——
世界最強のクルーを集め、
マリンフォースに挑み、
ウィズダム・アイランドを、
カースド・アイランドを、
そして深淵の海すらも越える。
いつか、すべての海が
"海賊女王"の名の下に
頭を垂れる。
ナビの未来——
地平線の彼方へ帆を広げ、
誰も見たことのない土地を巡り、
新しい出会いを重ね、
誰も書いたことのない旅行記を
綴っていく。
彼女の旅は——
戦いではなく、
驚きに満ちている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「海は、すべての約束を
覚えている。」
「いつか——
私たちは、また会う。」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
毎日19:00更新中。
「サチコとナビ、また会える日が来ると思いますか?」
コメントで聞かせてください。
お楽しみに!
#世界設定 #サチコ #ナビ #ライトノベル #ダークコンチネント #二つの道




