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俺様王子は保育園で働きたい〜5歳児に本気で嫉妬する氷の王子から、激重に溺愛されています〜  作者: おおたまらん


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第22話:まずは俺の『良いお嫁さん』になってもらうがな

アトリエでの甘いひとときの後。

 手を引かれ、私はアレクシス様の私室へと案内された。


ここに来るのは、二度目だ。

 第七王子のプライベートな空間は、洗練されたアンティーク家具が並び、王宮らしい豪華さがありながらも、彼らしい落ち着いた色合いでまとめられていた。


前回来た時のことを思い出すと、恥ずかしくてまた逃げ出したくなるので、私は考えないようにした。


「座れ。紅茶を淹れさせる」

「あ、ありがとうございます……」


ふかふかのソファに腰を下ろすと、少しして淹れたての紅茶が運ばれてきた。

 邪なことを考えてしまっている私とは対照的に、私のすぐ隣に腰を下ろしたアレクシス様は、ティーカップには口をつけず、真剣表情で私を真っ直ぐに見つめた。


「……リリアーナ。お前に、報告しておきたいことがある」

「報告、ですか?」


至近距離から伝わる彼の改まった態度に、私も自然と背筋が伸びる。


「先日、宰相閣下をはじめとした国の重鎮たちと交渉をしてきた。……俺たちが結婚して、お前が『王族』の身分になった後も、今まで通り保育士の仕事を続けられるように、だ」


「えっ……!?」


私は驚いて目を見開いた。

 王族に嫁ぐということは、公務や社交に専念するのが当たり前で、外で働くこと――しかも泥だらけになる保育士の仕事など、絶対に許されないだろうと覚悟していたのだ。


「貴族院からは反発もあったが、最終的にはねじ伏せた。お前が保育園でどれだけ子どもたちに慕われ、素晴らしい仕事をしているか、俺が一番よく知っているからな。……お前の大好きな場所を、俺の都合で奪いたくなかった」


そこで彼はふっと息を吐き、少しだけ申し訳なさそうに眉を下げた。


「……王族の嫁になれば、お前には間違いなく苦労をかける。窮屈な公務や、嫉妬と建前が渦巻く面倒な社交界……お前には想像もつかないような重圧があるはずだ」


「そんなの、全然平気です! アレクシス様が私の夢を守ってくれたんですから、社交界でもなんでも、どんとこいです!」


興奮のあまり、私がバンッと両手を握りしめて身を乗り出すと、彼は一瞬目を丸くし……それから、たまらなく愛おしそうに目を細めた。


「……ああ、頼もしいな。だが、お前一人には背負わせない。俺が絶対に支える。矢面に立つのは俺だ。お前がどんな理不尽に晒されても、何があっても必ず俺が守り抜く。だから……どうか、俺の隣にいてくれないか」


胸の奥が、ぎゅっと熱くなった。

 そういえば、あの日――応接室で彼が自分の正体を明かし、私に告白してくれた時。

 私が「お嫁さんになっても保育士は辞めません!」と宣言すると、彼は大笑いして『俺も第七王子として、お前の保育園を全力で支援してやる』と言ってくれたのだ。


彼はあの時の約束を、王子としての権力と努力を使って、本当に守り抜いてくれたのだ。

 それに、私に苦労をかけると分かった上で、それでも一緒にいたいと真っ直ぐに伝えてくれている。


「あの、私……!」


嬉しさと、愛おしさと、彼への感謝が胸いっぱいに溢れ出して、止まらなくなる。

 私はたまらず、隣に座る彼の首にギュッと腕を回して抱きついた。


「わっ!? お、おい、リリアーナ……っ」


突然のことに驚いて固まる彼の胸に顔を埋めながら、私は見上げてとびきりの笑顔を向けた。


「ありがとうございます! 私、アレクシス様となら、いつ結婚しても良いです!!」


純粋な喜びのままに口から飛び出した、ド直球なプロポーズの返事。

 ――しかし。


「なッッ!!」


言葉の直後、抱きつかれたアレクシス様の動きがピタリと止まった。

 バッと顔を背けた彼の耳の裏から首筋にかけてが、一瞬にして真っ赤に染まっていくのが見える。


「あ、アレクシス様?」

「……お前、人の気も知らないで!!」


彼は大きな片手で顔の半分を覆いながら、プルプルと震えている。


「こないだ……は、お前に無理させてしまったから、今日は紳士的に行こうと思ったのに、今すぐ押し倒したくなるだろうがっ!!」


「お、押しっ……!?」


今度は私の顔から火が噴き出す番だった。

 顔を覆っていた手をどけたアレクシス様は、真っ赤な顔のまま、少しだけ拗ねたように私の腰を引き寄せて、一呼吸した。


「はぁ……だが、王族の正式な結婚となると、他国への招待や式典の準備で、どうしても式を挙げるまでに一年はかかる」


「一年……。そうですよね、王子様ですもんね」


「ああ。だが、俺はもう一年も待てる気がしない。……今すぐ、お前をこの部屋に閉じ込めてしまいたい気分だ」


「ええっ!? い、いやですよ!心臓が持ちません!」


私が慌てて首を振ると、アレクシス様は「分かっている」と苦笑して私を抱きしめ直した。


腰に回された彼の腕の熱を感じながら、ふと、未来の光景が頭に浮かんだ。

 元々子どもが好きで保育士になった私だ。大好きな彼との賑やかな生活を想像すると、自然と顔がほころび、全くの無自覚でこんな本音がこぼれ落ちていた。


「それにしても、結婚か〜。……子どもは、三人は欲しいな。私、昔からの夢だったの」


「…………え?」


「あ、でもアレクシス様はお仕事も忙しいし、少し気が早かったですかね?」


「お、お前……っ、それ、俺に言う意味わかってんのか!?」


汗ばんで動揺する彼に、私はコロンと首を傾げた。


「うん」


(だって保育士としての経験上、きょうだいが三人いれば子ども同士で社会性も育ちやすいし、毎日絶対に賑やかで楽しいもの!)


純粋な「理想の子育てビジョン」で頭がいっぱいになっている私に対し、アレクシス様はついに両手で顔を覆って天を仰いだ。


「う、うんって、……それは、俺も頑張らないとな……よし三人、最低でも三人だな!!」

「えっ? ア、アレクシス様?」


深くため息を吐き出した彼は、やがて顔を上げると、熱を帯びた意地悪な瞳で私を真っ直ぐに捉えた。


「……お前は兄上に『良いお父さん』になりそうなんて言っていたが。お前の方がよっぽど、愛情深くて『良いお母さん』になりそうだよな」


「えっ……ふふ、保育士ですからね。最高のママになる自信、ありますよ!」


私がえっへんと胸を張って答えると、彼は私の腰をグッと引き寄せ、耳元で低く甘く囁いた。


「ああ。……だがその前に、まずは俺の『良いお嫁さん』になってもらうがな」

「わっ!」


アレクシス様はたまらないというように私を強く腕の中に閉じ込めた。

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