名前付けると色々奪われたりする件
シュウゾウに聞いたら「ご自由にして構いません。入り用なら館を差し上げましょう」とまで言われたが、それは断った。アレクの世界の大陸の方なら落ち着いた生活出来るだろうし、そっちで検討しよう。魔王城なら勝手も分かるし…まあ、見に行かねばならないが。
とりあえず、戸籍とかはかなりいい加減だし大森林では管理してない集落もあるからどうにかなるようだ…というわけで、引き取った7人の亜人と隠しキャラの戸籍とかも作っておかないといけない。灯里たちは扱いに困るから保留だ…いや、一番困るのはマリンなんだがな。
◇
宝石から名前…と言われて思い至ったのは【勇者の秘石】だった。ただ、地球のとはサイズが違ったっけ。それに、石言葉も考えてみれば美徳に対応してる気がする。
赤のルビーが勇気、橙のシトリンが友情、黄色のトパーズが希望、緑のエメラルドが誠実、青のトルマリンが愛、藍色のサファイアが慈愛、紫のクンツァイトが寛容…ついでに兄様を呼び寄せた黒いフローライトが美徳。
意外と、異世界召喚に必要なものだったのかしら?
まあ、それはいいわ。アクアさんが調べてくれるのに期待しましょ…というわけで。
「ラミアがルビィ、ドワーフがトリン、ハーピーがオウギ、アルラウネがエメラ、マーメイドがルマリ、スキュラがサファ、アラクネがツァイ、竜人がフローラにしました」
「あー…うん。トパーズから黄玉でオウギな。それ以外は安置にしたわけだ…納得してるなら良いんだけども」
兄様に報告すると微妙な顔していた…「色か、色で決めたのか」と呟かれたけど、その通りだから仕方ない。一応、本人に確認したし美徳に対応しているし…
それより深刻な事が…
「…あー…まあ、そういう事もあるんだろうな。よく知らないけど」
「どうでもよさそうですね、兄様」
まあ、どうにもならない事ではあるけれど。前例はあるし大丈夫なはず。
「それで増えなきゃもう良いし」
「確かにそうですね」
◇
とりあえず、イリーナに亜人たちの戸籍の手続きをお願いした。費用は要らないし、税金とかも神の仲間で踏み倒せる。名付けの魔力とかも要らないし…まあ、スキル付与して強化してたら同じか。だが、眷属とかにはなってない…事もないんだろうな。最近俺のステータス見てないから怖い。
それは後で見るとしてミケの方だが姿が見えないので魔物だけ召喚してみた。一応、俺はミケのご主人様扱いされてるから呼び出せるみたいだ。その気になれば創造神というパシリも呼び寄せる事も可能らしい。
ヘビにカブトムシにブタにキツネと信楽焼…こいつらは神らしい。まあ、奏多も知っているから放置しているんだろう。でなければ消すか何かしている。とりあえず、言葉は通じないが敵意が無いので忠告して送り還した。
アクアが神の共食いしてパワーアップ出来るかもという可能性を言ったからだ。まあ、あいつらにも加護は与えているから大丈夫だと思うが…擬人化してこないだけマシか。ルビィと白ヘビでめでたいとか要らんからな。
まあ、引っ越しするなら場合によってはあいつらの寝る場所とかも必要かもな。学校の事もあるから転移陣とか作らないといけないし、他にも用意しないといけない。どうせ暇だし大森林の転移陣を調べてより良い転移陣作れるよう研究してこようか…ついでに稼いでこよう。これから金かかるんだし。
◇
「…珍しいな。反対するかと思ったが」
お兄ちゃんが居ない方が好都合だ…とは言わない。でも、そんなに次々増やす事はそんなに無いはず。それに、お兄ちゃんも男の子なんだから甲斐性見せたいというのを邪魔しちゃいけない。夫は外で働き妻は家で支えるなんて古臭い事は言わないけど、リーゼアリアちゃんの退職金ばかり当てにしてるわけにはいかない。たとえ、それが国家予算数年分あるとしてもだ。ヒモなお兄ちゃんはなんか嫌だ。
「反対はしないけど、変な事しちゃダメだよ。大森林を焼け野原にしたり、変なの拾ってきたり、現地妻は3人までだからね」
「おやつは300円までみたいに言うな」
現地妻はおやつみたいなものだよ、お兄ちゃん。まあ、おやつよりメインディシュを食べて欲しいわけですが…
「お兄、分かってると思うけど…神とか王とかには易々と立ち向かわない事」
「はいはい…というか、探してるのか?」
かなちゃんはサボってますよ。お兄ちゃんのために女の子はやる事が多いのです…やり過ぎた子も居るけど。
かなちゃんは苦笑いで回避しちゃったよ。お兄ちゃんは騙された振りしてる。まあ、世界が広がった方が管理しやすいとか考えてる腹黒さんだからなぁ…私たちの知ってる純粋なかなちゃんはもう居ないんだよ、お兄ちゃん。
まあ、そんな歪ませ方をさせたのは私たちなんだけどね。でも、変わらないのがかなちゃんクオリティー…
◇
ご主人様のお見送りが出来なかったにゃん。鬼畜女神あかりんに何故か縛られたにゃん。
「さあ、ミケちゃん。皆に何を吹き込んだか聞かせてもらおうかな?」
部屋に戻ってきたあかりんに怖い顔でそう言われたけど動じないにゃん。
「妾で満足させてはダメにゃん。我輩たちはきちんと前世があるからフェアにゃん。だから、あいつらにも【時戻】使って、妾で妥協しそうな奴には説得しただけにゃん」
「その結果、7人の魔族と7人の亜人の魂が変調をきたして混ざっちゃったんだけど…」
かなたんまでやってきてそう言うけど、それはあいつらが悪いにゃん。ご主人様の素晴らしさ以外のものを思い出して自壊しかけたから猫耳超魔神として魂の再構築した時に混ざったにゃん。それで記憶は元に戻したから根本は変わらんにゃん。ただ、魔族たちは魔王クラス、亜人たちは聖王クラスになっただけにゃん。むしろ感謝してたにゃん。
「ミケちゃん…完全に余計な事したよね。猫耳超魔神はともかく、お兄の加護から抜けて新しい宗派でも作る気?」
「そんなのせんにゃん。あかりんがご主人様を思うように、かなたんがご主人様の事を考えるように、我輩はご主人様を好きな連中の事を考えて行動してるだけにゃん」
我輩は知ってるにゃん。ご主人様の事を本当に好きな連中は沢山居たにゃん…だから、優しくされるほど苦しくなるにゃん。大切なんて言葉で片付けられるほど乙女心は簡単じゃないにゃん。前の世界ではハーレムとか考えられなかったにゃん。きっとかなたんを選ぶって誰もが思ってたにゃん…それは目の前のあかりんも同じはずにゃん。
「我輩は、全員が嫁になるのを所望するにゃん。その中に1人くらい実の妹が混じっていても構わないと思うにゃん」
だから、妾で満足させてはダメにゃん。送り主の名前が無いラブレターがあったにゃん…誰よりも好きな気持ちで溢れたラブレターだったにゃん。わざわざ封筒まで変えて出してたけど筆跡は同じだったにゃん。だから、嫁になるべきにゃん。周りを嫁にすれば妾の道を歩む気は失せるはずにゃん。
「…ミケちゃん。お兄は転生してるし灯里ちゃんも肉体変わってるから実の妹とか関係無いよ?」
「…にゃ?」
「ミケちゃん…別に私は全員がお嫁さんでも構わないと思ってるよ。ただ、将来好きな人が出来た時の可能性を考えるとお妾さんの選択肢もあるよって事だったわけだし。ほら、魔族の子たちなんかはサレナちゃんがされるの見たいだけって感じだったでしょ…最初は。今はミケちゃんが余計な事をしたから自分がされたいと思ってるわけだし」
「にゃんですと…」
「亜人の子たちも影響出ちゃったよね…名字はアレクトラになるから考えなくていいって拒否したらしいし」
「……万事解決にゃん?」
「良くないよっ…1番妻になればお兄ちゃんの貞操奪えるのにチャンス狭まったんだよ。妹枠だけでも私とかなちゃん以外にイリーナちゃんにリーシャちゃんにマリンちゃんが居て、更には偽妹にロリ枠だってあるんだよっ!?」
あかりんが錯乱し出したにゃん…こいつダメにゃん。心配しなくてもあかりんを超える考えは誰も持ってないにゃん。
「お兄ちゃんとの幸せな家族計画が壊れちゃうかもしれないんだよ。子どもの数は見直すけど」
「…剣に子どもが産めるにゃん?」
「さあ?」
かなたんも首を傾げてるにゃん。マナの女神にも分からない不明確な計画って事にゃんね…あかりんのためにも指摘はしてやらんにゃん。