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やるべき事をやった後に



アリエルアを説得した際に壊した駄女神像…そこからあかりん菌が出て行ったのを見逃すほどバカではない。


つまり、各地の駄女神像を破壊し尽くす必要があったのでサクッとやったわけだ。アベルティアにホンゴウ、森林都市の各集落、トウシュー近隣の村々にシラヌイ…


で、あかりん菌を追って辿り着いたのが北限の山脈の中にあったラボ。元祖猫耳魔王キジトラの研究施設だ…



「貴様、何者だにゃん。ここが猫耳大魔王ブチ様の居城と知っての狼藉かにゃんっ!」



とほざく見張りの門番が居たわけだが、サクッと倒して中へ入った。ミケと同じマントを着ていたが、こんな雑魚が猫耳大魔王なわけがない。「吾輩が…大魔王の吾輩が負けるはずは…」とか後ろから聞こえた気もするが空耳だ。後、安心しろ峰打ちだ…全身骨折で済ましておいたし。


洞窟を利用した天然の要塞…なんてものではなく、単なるだだっ広い家を俺は目的地まで進む。


最奥の祭壇に1つの大きな塊があった。氷の塊…その中に少女が1本の剣を抱え安らかに眠っていた。



「起きろ、勇者ラピス…いや、マリン」








それは戯れだった。俺は燈真の記憶を持ってアレクへと生まれ変わった。なら、燈真は誰の生まれ変わりだったのかと些細な疑問を抱いた。そして、【時戻ときもどし】を使った。その結果、俺は前世を知った。



今から100年前のホンゴウに俺は生まれていた。王宮の騎士を目指し、日夜剣の稽古をしていた。そんな姿を見る近所の少女が居た。マリンという、俺を兄と慕う少女…いつしか、彼女に剣を教える事が日課に増えた。


そんなある日、突如飛来してきた魔物に襲われ彼女を庇い俺は死んだ…はずだった。


ここからは奏多から聞いた話だ。魔王を倒すのを対価に死を免れるため【水の聖剣】で氷漬けにした想い人。魔王が持つ秘薬を手に入れるため旅立った少女ラピス…いや、マリン・ラピスラズリ。彼女が魔王を倒し秘薬を手に持ち帰り、想い人を救う物語…


だが、事実は違う。俺は彼女からそれを聞いた。元祖猫耳魔王キジトラは単なる研究者だった。猫耳族は1つの大きな使命を持っていた…300年前に救う手立てが無く死なせてしまった恩人が居た。その死を繰り返さないための秘薬を作るという廃れかけた使命。マリンはその手伝いをして薬を分けてもらう契約を交わした。


マリンは各地で秘薬の材料集めのついでに人々を助けた。魔王の仕業とそれを救った勇者としての物語はそんなついでから生まれたものだった。そして、マリンは材料を集めキジトラの手によって秘薬は完成する…但し、1人分だけ。キジトラが考えていた分量より遥かに少なかったそれを更なる条件で譲り受けたマリンは、持ち帰ったそれを俺に使って蘇らせてくれた。


だが、それで物語はハッピーエンドにはならない。キジトラの条件は【水の聖剣】を猫耳族の元へ返して欲しいというものだった。王国…いや、世界で唯一の宝を王は手離すつもりは無かった。しかし、マリンが王に嫁ぐならと言い出した。それだけではなく、シラヌイとトウシューからも勇者となったマリンを迎え入れたいという申し出があった。だが、マリンはそれを拒んだ。そして、その日を迎える。


マリンが王宮の晩餐会に呼ばれていた月夜、俺は3人の刺客に襲われた。ホンゴウの騎士とトウシューの貴族、シラヌイの武将だった…連携する猛者の前では俺の剣など児戯でしかなかった。こうして、俺の前世の一生は終わった。



だが、悲劇は終わらない。俺の死はすぐにマリンの知るところとなった。俺の骸に突き刺さったままの3本の剣…それぞれの国の紋章が入ったものだった。マリンはそれを見て復讐を始めた。


ホンゴウの人間は根絶やしにされた。


シラヌイの男たちは惨殺された。


トウシューの貴族は全て切り捨てられた。


そして、【水の聖剣】と共に彼女は姿を消した。








マリンと呼んだ事に反応したのか、氷の塊にヒビが入っていく。それと同時にそのヒビへと次々あかりん菌が入っていき剣へと吸い込まれていく。となると、あれが【水の聖剣】か…


『灯里の魂はこの剣を通して見続けてる』という言葉をリーゼアリアとアリエルアの中の灯里は言った…ストーカー紛いの事をやる灯里なら造作も無い事だろう。


少しずつヒビが大きくなり、氷が砕け落ちだす。そして、彼女たちが現れる…



「さあ、マリン、灯里…帰ろう」



そう言って俺は手を伸ばす。


しかし、目を開いたマリンは俺に襲いかかってきた。

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