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最強VS最狂

斬りつけようとしてきた刃を剣で受け止める。が、すぐさまマリンは連撃で斬りつけてくる。


前世の俺はマリンの指導をすぐに諦めた。マリンは剣の天才だった。俺の教えなんかすぐに吸収して…だから、魔王を討伐出来ると見込まれ利用された。


もし、俺に守るべきものがなかったなら、帰る場所がなかったなら俺は彼女に殺される事を望んでいただろう。リーシャの時と同じように。


ならば、どうするか…奏多の言う通りウィンディアとなった竜介を連れてくるべきだったか。そんな少女を連れてきて「助けようとしたお兄ちゃんだよ」なんて言われて納得するバカが何処の世界に居るかと。


勿論、倒すなんてのは論外だ。防戦一方だが、俺の勝利条件は3人で無事に帰る事でしかない。いや、それはあくまで最高のという前提だ。



「…腕1本で気が済むか。それとも足か…好きなだけ斬り刻んで満足しろ」



俺は剣を放り投げる。俺が血を流せば昔を思い出すだろう。こんな事をもうする必要は無いだろう…



「満足…したいから、こうするの」



だが、マリンは放り投げた剣の方へ向かい…【水の聖剣】を【混沌カオス】へと突き立てた。



『よぉし、神剣【混沌カオス】への侵食率100%オーバー。【水の聖剣】アクア・フリーズからの魂転移確認。これより私、藤島灯里は前神の力を全て使用し、神剣【混沌カオス】を媒体に神王真剣【秩序コスモス】アカリ・フジシマとして覚醒しちゃいますっ!』



という残念妹の本当の声が聞こえてきた。どういう事やねん…









進化中、しばらくお待ちくださいと言わんばかりに時間経過して早1時間ちょっと。



「トウマお兄さん…本当にごめんなさいでした」



マリンは全てを話してくれた。混沌妹の魂を【水の聖剣】から俺の剣へと移すために斬りかかったのだと。そして、松木琉璃としての記憶も俺が想い人の生まれ変わりである事も何となく分かっていた事も。更に北里を殺して全てを悟った事も…


俺の…いや、誰もが知らない真実があった。


マリンは俺の遺体をキジトラに渡して復活出来るよう【水の聖剣】で傷を癒し氷漬けにしていた。そして、いつの日か復活の秘薬か魔法が出来るまでマリンも氷漬けで眠りについた。それは北里の姿を見たからで、本当なら北里は殺すつもりではなかったが、抵抗され設備の魔法が破壊された結果なのだという事らしい。


まあ、その事を俺がとやかく言う立場には無いし、この世界の人たちもマリンには同情的だ。勇者の大切な人を殺した方が悪いという意見が多い。


まあ、100年前の終わった事を責める奴は居ないだろう。琉璃としての謝罪も俺には必要無い。目の前で殺されかかっているのを見たくなかっただけだ。助けようなんて思ってやったものではなく結果的にそうなっただけだ。



「いや、ここでこう打てばお兄ちゃんの勝ちだよ?」


「灯里、こういう時は年下に花持たせてやれよ…」



待ち時間の間にマリンと2人で将棋してた。勿論、俺が飛車角落ちで…更に手加減して投了しようとしたら、駄女神が口挟んできやがった。



「うぅ…トウマお兄さん、手抜きは酷いです」


「そうだよ、お兄ちゃん。前世でも自信持たせようって手抜きで剣の相手したでしょ」


「前世まで今と一緒にするな」



とりあえず、真剣・駄女神が残念な武器以下の存在になったのを落ち込むべきか、俺の知る灯里そのものの姿が復活したのを喜ぶべきか…悩ましいところだ。



「さて、お兄ちゃん。話を聞いたとは思うけど、ここからキジトラ…ラトちゃん救出作戦兼ラスボス退治をしたいと思います」


「はいはい」



今回、猫耳大魔王に力を貸していたのは元祖猫耳魔王キジトラ…通称ラトちゃんではなく、前世の俺の遺体に宿った魔王を自称する思念体らしい。なんか、とっても心当たりがある。それはさておき、元祖猫耳魔王はミケ以上のお人好しの研究者にしてマリンの親友ともいえる存在だとか…後、アクア時代の灯里の友人らしいし彼女が望むなら空いた【水の聖剣】に魂を移そうという事らしい。


そのためには、遺体を封印している擬似聖剣【氷の聖剣】をさっきのあかりん引っ越しセンターの儀式みたく壊す必要があるとか。まあ、聖剣は壊れなかったが擬似だから確実に壊れるらしい。


だが、それをやると確実に封印も解けてめんどくさいラスボス戦に入るわけだ。まあ、中身がどうであれ普通の、しかも100年前に死んだ村人A程度の体の魔王なんて敵でもないし、マリンも魂も顔も今と変わらないから死んだ方は処分して良いという無邪気な答えをくれたわけだ。どうして俺が妹と思う女の子たちは残念なのが多いんだろう…


まあ、さっさとやってさっさと帰らないと奏多あたりが面白味よりスピードを選んだ俺の行動に気付きそうだし急ぐか。

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