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召喚魔王の再英雄譚  作者: 紅満月
間章 400年間の物語
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4つの聖剣と勇者の物語4



藤島さんの葬儀は盛大に行われた。彼女の人徳は先輩に匹敵するものだった。先輩を失い、友達を失いながら傷つき苦しみ続け、それでも優しい人だった。その事は俺もよく知っている…だからこそ、何をやっていたのだと俺は自分を恥じた。守ると先輩に誓ったのに…彼女は友達を守って死んだ。


亜人にとって彼女は女神だったと葬儀に来た亜人たちは口々に言っていた。いや、亜人だけじゃなく争いを捨てやってきた魔族も多かった。俺が知らないところで彼女は心を砕いていた。沖田たちの死の責任を彼女は魔族の所為ではないと人を通じて諭していた。彼女はそういう人だった…先輩の時もそうだったのだから。


藤島さんの死によって、結果的に魔族は再び亜人たちと合流した。それは魔物だけではなく天使たちまでとも戦わなければならない茨の道だった。完全に引き篭もった精霊の助けも無い中、タマとリエルが先頭に立ち纏めていった。現地人である上に藤島さんから水の聖剣を預かり2代目を名乗り遺志を受け継いだタマと、藤島さんたちを殺した天使という種族が憎いと皆にも前で天使の象徴たる自身の翼を自ら切り捨て、ただの人間として種族を超え皆を守ると雷の勇者を名乗り女神に翼を捧げたリエル。そんな2人と本郷さんと俺が皆を引っ張っていく事になった。


そんな中、突然に魔物の主を名乗る邪神の声が世界に響いた。そして、神を名乗る聞き覚えのある声に呼応するかのように天使はその軍門に下った。







完全に天使たちと魔物、精霊を除いたあたしたちの全面戦争になった。あたしと北里くん、リエルくんを含めた少数精鋭はタマちゃんが陽動をしてくれている隙を狙って邪神を倒すために敵の本陣へと乗り込んだ。後年、アベルティアという小国が作られるその場所に彼は居た。いや、正確にはその場所にあった亀裂の中、神の世界にだ。



「この世界は醜い。だから、俺は今壊すと決めた。マナの女神が絶望したこの世界を」



彼は言った。今から100年先の未来で最初に生まれた彼は大切な人を魔物を殺されたのだと。加護してくれる精霊王が間に合わず力の持たない彼の目の前で死んでしまったのだと。彼は間に合わなかった精霊王を始めとした精霊を憎み、精霊という存在をこの世から消し去り生涯を終えた。そして、転生を果たした。


彼は転生した世界で普通に暮らしていた。前世の事を思い出す事なく多少女の子にモテるくらいの人生、でも好きな人が居て叶わない恋をする普通の高校生。尊敬する先輩が居て、彼みたいになりたいと考える普通の男の子。でも、尊敬する先輩の死が彼を狂わせ始めた。


先輩の死は、マナの女神によって引き起こされたものだった。世界に空気穴とも呼べる穴を開けた結果、ドラゴンが入ってきた。全ては彼が、精霊王とマナの女神が愛した彼を本当の世界へと送り返すための下準備だった。



「ほら、醤油差しってあるだろ。それと同じ原理だ。穴が2つあれば出やすくなる…そんな理由で藤島先輩は殺された。皆だって巻き込まれて…」



彼は思い出してしまった。だから、マナの女神の体を乗っ取り、この世界を壊す事を加速させた。100年先の未来で自分が生まれないように。未来を変えるために。でも、それは…



「そんな事、灯里ちゃんは望んでないよ。先輩だって皆だって。確かにこの世界が憎い…全てが本当ならマナの女神ってのも憎い。でもね、この世界に生きる人を殺させるわけにはいかない。その結果、未来が変わらないとしても皆が幸せになれないとしても…この世界には皆が眠ってる。皆が守った人が生きている。だから、あたしは君を討つよ。君がどれだけ悲しいからとしても、それは間違ってる。君が憧れていた人はそんな事しないよ、沖田・・くん」







沖田彰司おきたしょうじは俺と竜介にとっては高校で出来た友人だった。沖田は中学時代の先輩をよく知っていた。サッカー部の優秀な選手として。でも、先輩は高校では帰宅部だった…その事で1度失望したそうだが、先輩の人間性を知り更に尊敬するに至った。まあ、帰宅部になった理由が藤島さんたちや俺たちに勉強を教えるためだったのだからそうなって当然だ。


だからというわけではないが、沖田の気持ちもよく理解出来た。自分の所為で先輩が死んだんだと思っても仕方がない。だけど、それでは世界を滅ぼす理由にはならない。誰かのためですらないし、それで先輩が生き返るわけじゃない。俺じゃない俺たちの未来が変わるだけなんだと…俺たちは先輩が、皆が居なくなっても生きていかなきゃいけない。



「俺たちが生きた事を、藤島さんたちが死んだ事を全部無駄にしてこの世界を破壊しても変わらない。未来を変える方法ならいくらでもあるだろ?」


「藤島さんが…死んだ?」



その言葉がきっかけだった。藤島さんの死を知った沖田が苦しみだした。沖田は知らなかった。【炎の聖剣】を手にし、火山の噴火に巻き込まれ彼だけがマナの女神に助け出され生き残り、全てを思い出しマナの女神を殺し力を奪っていた間の事を。


沖田は藤島さんが好きだった。それだけではなく火山へ同行してくれた子も大切に思っていた…そんな人たちが死んだ。沖田の苦しみは分かる。だから、もう終わらせてやらなければならない。


沖田の姿は人ではなくなった。まさに魔物の姿だった。スライムのようにゲル状の体に沖田の顔が張り付いていた。理性もなく、ただ殺戮を行うバケモノになってしまった。

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