4つの聖剣と勇者の物語3
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あまりにも多過ぎた犠牲と天使と魔族の仲違いは魔物退治を遅らせるものでしかなかった。更にこの事態を受け止めきれなかった精霊たちは種族の同盟を破棄し地下迷宮へ避難し扉は閉ざされた。
あたしたちはタマちゃんたち亜人の人たちとほんの僅かながら種族の決定に逆らい手助けをしてくれるリエルくんたち天使や魔族、精霊の力を借りて魔物退治を続けた。
それと同時に聖剣と同じくらい強い武器を作る事になった。スライムの誘惑に耐えながら戦えない皆が手助けしてくれた。そして、【雷の聖剣】という人工聖剣を始めとした様々な武器を作り出す事が出来た。【雷の聖剣】をリエルくんに託し、あたしたちは戦った。灯里ちゃんもがむしゃらに戦った…幻想だからきっと皆を生き返させられる薬はあるんだと、願いを聞いてくれる神様は居るんだと。そうお互いに納得させられる理由を作って…
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強い武器は人を誘惑する。そんな事を思ってもいなかった。人工聖剣は誰にでも使えるものだった。【鍛冶師】のスキルで強く作られ、【付与師】のスキルで属性が与えられたあまりにも当時のこの世界の文化を超えた兵器は魅力的なものでしかなかった。
魔族と天使の戦い…力で勝る魔族に対抗しようとそれらを狙う天使の襲撃。いくつもの集落が襲われ、沢山の人が犠牲になってその武器は奪われた。
そして、天使は武器ではなくそれらを作る私たちの同級生を狙った。襲撃された猫耳族の集落…戦えない人を守るために私たちは敵を斬った。その事に戸惑いは無かった。むしろ、魔物を倒すより気持ちが軽かった。
そんな事を考えていたからだろうか、守るべき戦えない人を守る事を忘れかけた隙を狙われた。狙われたのは魔族の女の子…その子を庇い矢に貫かれるのを覚悟していた私たちの親友だった。
もう失いたくなんてなかった。だから、こうするしかなかった…
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それは一瞬の出来事だった。青白い閃光と一緒に天使だけが凍りつき砕け散っていった。灯里ちゃんがやったのだとすぐに分かった。だけど、その灯里ちゃんは…
「どうして…どうして私たちなんか守ったにゃん…」
「お兄ちゃんの…妹だからかな…」
何本の矢が体を貫いていた。タマちゃんに膝枕してもらう形で灯里ちゃんは寝かされていた。
「灯里ちゃん、今回復をっ…」
「かなちゃん…もう手遅れだよ。私、もう水の力出せないや。それに、まだ戻ってないでしょう…」
沖田くんと一緒に行った【回復術士】のスキルを持つ子は見つかっていない。あたしの【土魔法】の回復術程度じゃこの傷は癒せない。そして、あたし以上の回復術が唯一使えるのは…
「だからって、諦めたくないっ…タマちゃん、何か方法があるよね。助かるよねっ!?」
「…あるならしてるにゃん…死ななきゃいけなかったのは私だった…どうして庇ったにゃん…」
タマちゃんは涙を流しながら何度も首を振る…あたしはまだ諦めたくなかった。ありったけの力で回復術を使う。
「かなちゃん…無駄遣いしちゃダメだよ。私を貫いた矢の威力は私が一番よく知ってる…これでも弓道部なんだから…」
「そんな事っ…」
「私ね、今幸せなんだよ…大好きなタマちゃんを守れて…こんな気持ちだったのかな。ネコちゃんも…いいんちょも…姐御も…しのぶちゃんも…こんな気持ちでいてくれたのかな…お兄ちゃんだってこんな気持ちで…」
「っ…ダメだよっ…お兄ともう一回会うんだって、願いを叶えてもらうんだって…」
あたしは泣いてた。タマちゃんも泣いてた。そして、灯里ちゃんも…分かってる。だから、分かりたくない…
「うん。会えるんだよ…きっとお兄ちゃんに会える。皆にも会える…でも、かなちゃんは自殺なんてしちゃダメだよ。そんな事したらお兄ちゃんに会わせてあげないんだから…」
灯里ちゃんはズルい…どうしてそんな事を言うの。あたしを置いていくくせに…
「タマちゃん…お願いがあるんだ。かなちゃんを支えてあげて。出来るならこの剣で守ってあげて…かなちゃんが泣き言言ったら、『灯里の魂はこの剣を通して見続けてる』って叱ってあげて…本当なら、もっと可愛いものが良いんだけどこれしか今は持ってないから…」
「そんな事言わにゃいで…生きて。灯里様…」
「生きるよ…生き続けるよ。私の気持ちと皆の想いは2人が生きてくれる限り…ずっと…だから、泣かないで。笑顔でさよならしよう?」
灯里ちゃんは無理だと言った。4人みたいに笑って死ねないって言っていた…なのに、あたしの親友は最期のその時までずっと笑顔だった。
いつも笑ってた。お兄の隣で笑ってた…だから、会えたんだと思おう。あたしは、あたしたちは灯里ちゃんの望み通りに笑顔でお別れ出来ただろうか。きっと出来てない…
でも、灯里ちゃんは死なない。あたしたちが死ぬその瞬間まで…そう思わなきゃやれなかった。
この後、タマちゃんは水の聖剣を手に戦い2代目水の勇者を名乗る事になる。水の苦手な猫耳族の力も何も無いお姫様をそうさせたのはあたしの所為で灯里ちゃんのため。そして、いつまでも泣き続けないためだった。




