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400年という時間



お兄様とミケちゃんだけが牢屋に連れて行かれた。僕たちにはお兄様がくれたアクセサリーがあるから何があっても安心だけど、2人が暴れたらちょっと危ない気もする。


とりあえず、イリーナさんが「今から会う人に頼めば大丈夫だから」と言ってくれたので信じる事にした。


それにしても…



「魔科学都市って言うだけあって、凄いね」



中に入って驚いた。ファンタジー的な世界から一変して近代的な建物が多い。さすがに高層ビルなんてものは無いけど、自動ドアならぬ【魔動ドア】や自動車ならぬ【魔動車】なんてものがあって、ここだけを見れば灯里として生活していた街とあまり変わらないなんて思ってしまう。



「前世の記憶が無かったら、パニック起こしてたと思います、ウチ…」


「僕もだよ…」



ファルさんは大森林から出た事無いから【魔空船】だけでもなんだろうけど、僕たちだって国から出た事無いし大して変わらない。


カルチャーショックというのか何というのか…でも、400年前に生き残った皆の頑張りなんだよねと思う。僕たちはこんな世界で生きていたって思いをずっと持ち続けて子どもたちに見せたかったんじゃないかなって。








【魔動車】に乗せられてやってきたのは都市で一番高く大きな建築物…どう見てもお城だ。以前は本当に王様が住んでいたけれど、100年前にあの出来事があってからは領主の館として使われているのだから本当にお城なわけたけれど今ではそれは外観だけと今の領主が話していたのを覚えている。との面会をわたしが兄様に求めたのは理由がある。


御字さんの転生したのは魔族なのだ。400年前のあの時から迫害され100年前の出来事でほぼ人間との交流を断つまでになった。都市間の相互交流という名目で視察をするまでには沢山の苦労があったのは記憶に新しい。


兄様が来たと言っても容易に門を開いてくれるわけもないし、それ相応のコネが必要なのだ。彼だけがそれに相応しいコネを世界で唯一持っていると言える。


わたしたちは部屋に案内され彼が来るのを待つ。「ホンゴウのイリーナではなく、宇津木満が会いに来た」と伝えて欲しいって使用人に言ったので彼はすぐに来るだろう。



「いいんちょさん、やっと来たんだね。あの人がっ!?」



不意に扉が開き、開けた人物が部屋に飛び込んで来る。



「ええ。兄様…いえ、燈真先輩がやっと来てくれました。北里くん」



わたしはその少女・・に向かって告げた。








400年と少し前、俺は大切な人に出会った。



「そういう奴らは金しか見てないんだぞ。絶対にお前を見てくれる事は無いし、金がもっとある奴の方へ行く…そんなの虚しいだけだろ?」



俺は最低だった。金をばら撒いて友達を買っていた。金があれは、何でも叶うと思っていた。だから、美少女と評判の女の子たちに告白した。だけど彼女たちには好きな人が居ると拒まれた。そいつさえ金でどうにかすれば女の子たちに認めてもらえる。そして付き合えればもっと認めてもらえる…だから、そいつを、藤島燈真という先輩を金で従えようと思った。そして、そんな言葉をかけられた。


その数日後、あまりにも金遣いが荒いと親にカードを停止された。友達だと思った人は離れていった。俺の隣には誰も居なくなった。


商店街を寂しく帰っていた。目の前に燈真先輩たちが楽しそうに歩いていた。羨ましいと思い、目で追っていた。5人でコロッケを買い食いして…気付けば、先輩が目の前に居た。「お前も食うか?」と言ってコロッケを差し出してくれた。そんなもの食べれないと突っぱねる事は…出来なかった。そのコロッケはどんなものより美味しかった。


それから、先輩と竜介と3人で遊ぶ事が増えた。金をばら撒いていた時とは全然違う楽しい日々だった。


そんな日がずっと続くと思っていた。でも、先輩が死んだ。高校に進学して、俺にもそれなりに先輩や竜介以外の友達が出来て、それでも先輩は特別で…人として俺は好きだった。大好きだった。


先輩を知っているからこそ竜介は前向きに生きようと、俺は先輩のお陰で出来た友達に励まされ前向きに生きようとした。先輩が好きな子たちを陰から支えようと決めた。


その矢先の召喚だ。風の勇者として天使族の支援を受けて舞い上がっている間に先輩を思う山根さんたちを守れなかった。天使族の裏切りを気付けず、阻止出来ずに灯里さんを殺されてしまった。最後の戦いで仲間を脱出させるために本郷さんを見捨ててしまった。


先輩がいつかこの世界に来た時に待っている人間は俺だけになってしまった。支えてくれる人は多く居た。生き残った勇者だと褒め称えてくれる人は沢山居た…そんなの欲しくなかった。金と同じじゃないか…


そんなのより返してくれと…あの時を返してくれと俺は叫び続けた。


そして、思い至った。先輩を待とうと…それが何十、何百年になろうとも。友達と色んな研究をした。豊かな暮らしとその先を目指し、いつかあの時へ帰るために。でも、全員がそうではなかった。この世界に生きる事を決めた仲間も居た。彼らを止めはしなかった。灯里さんが残したこの世界に唯一残った聖剣の力を借りてコールドスリープの装置を作った。


その中で生きる事と死ぬ事を選び、帰る事を皆諦めていった。でも、俺だけは先輩を待ち続けた。だけど、事件が起こる…100年前に俺は俺の体を失った。だが、その直前に全ての記憶を魔科学の究極の結晶と結実させていた。それを繰り返す事3度目で俺はいいんちょさんの記憶をもつ彼女と再会した。そして…








「改めまして、シュウ・キタザトです。アベルティアの王女殿下と聖女様の御前で失礼しました」



【ホムンクルス】って説明がイリーナさんと北里くんの記憶を持つっていう女の子から説明された。これ噂のTSか…どうかはともかく、北里くんもやっぱりお兄ちゃん好きだったんだね。性転換までしてハーレム入りたかったんだね。



「…リーゼアリア姉様、挨拶挨拶」


「はっ…いやいや、挨拶よりお兄ちゃんだよ。早く助けてあげないと」



話を聞き入ってる場合じゃなかった。囚われのお兄ちゃんを助け出してあげないといけない。

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