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王族の在り方

連れて来られたのは王城の謁見の間。魔王城みたいな雰囲気でもなければ、前の世界のような窓も無い閉鎖的な謁見の間ではなく見晴らしの良い最上階に設けられた天守閣のような場所だった。



「リーゼアリア…あれほど使うなと言っていた秘石を使ったというのかっ!?」



リーゼアリアが俺の事を勇者として国王陛下に話をした。ちなみに、国王陛下は名乗りすらしないわけだが覚えるつもりも無いので構いはしない。


さっきから呼んだ呼ぶなの親子喧嘩を横目で見つつも、書いてあった求人の内容を思い返していた。


事の始まりは魔物の異常増加だったらしい。その討伐中に将軍と騎士団長が殉職し、王国の防衛戦はガタガタ。更に追い討ちをかけるように宰相と王妃が謎の病では他界。そして、城下町の神殿が襲撃され神殿長が惨殺され聖女とされるリーゼアリアの親友が行方不明となった。


それを魔王の仕業と評したのが目の前の国王陛下だ。勿論、俺がその魔王ではないのでリーゼアリアも俺を魔王とは言わなかった。まあ、魔王扱いされたところで背中にある剣を預かりもしないまま俺を謁見の間に入れた連中を瞬殺する事は容易いのだが。



「此度の事は冒険者だけで充分だったのだ。それをわざわざせっかく見つけた秘石を用いなくとも…」



そう呟く国王に、「あれはただの黒光りする石だ」と告げたらどんな反応するだろう。この世界には7色の【勇者の秘石】と呼ばれるものがあるが、それは虹の色なわけだ。リーゼアリアが使ったのは単なる模造品であり、彼女の願いに応えて…いや、利用して俺はここに居るわけなのだからあんな価値もない石に執着する必要は無い。


もっとも、召喚されてしまったのだからそれに対する賠償やら生活補償なんてのも考えているのだと思う事にした。くれると言うなら貰うが期待はしていない。



「…まあ、してしまった事は仕方がない。それで勇者殿はどれほどのものなのだ?」


「どれほどと申しますと?」


「背中の大剣を見れば、それを使いこなす力はあるとお見受けする。具体的にレベルは幾つかと聞いておきたいのだ」



レベルという概念がある世界か。まあ冒険者ギルドは前の世界にあったし、ランクなんてのもあった。だが、レベルという数値は分からないわけだ。俺はそれを説明すると、国王の側仕えが何やら単眼鏡らしきものを持ってきた。



「それは?」


「400年前の勇者様一行のお一人である鑑定士様の力を参考にして作られた【ステータスモノクル】です」



トウマの問いにリーゼアリアが答えたが、彼はマズいと思った。そんな物で調べられたなら魔王という事がバレてしまう。まあ、その時は暴れるだけなのだが…


そんな茶番に付き合うつもりは無かった。いや、そもそもここに来た事が茶番なのだが…



「もういいか?」



トウマの問いかけにリーゼアリアは頷く。それが合図だった。


一閃…それが目の前の魔王・・を終わらせる煌めきだった。



「ヒィィ」



モノクルを渡そうとしていた側仕えは目の前で行われた殺人に腰を抜かし、兵たちはその速さに身動きすら出来なかった。


あるのは、真っ二つにされた国王陛下だったもの。



「これで良かったのか?」


「はい。魔王は死にました…伯父上と神殿長、そして母様を手にかけ親友を穢そうとした魔王は」



リーゼアリアの願いは魔王である国王陛下を、自らの父を殺す事だったのだ。


自らの母を手にかけてしまった経験から、彼女が自らの手で出来なかった事を責めるつもりはない。アレクの母は優しい魔族ヒトで、彼女の父は醜い人間バケモノだったのだから尚更だ。


バケモノが王の国というのはあまり感心しない。魔王としても、勇者としても。だからこそ…



「さあ、死にたい奴はかかってこい」



俺はそう威圧をかける。この後、国王殺しとして追われるのだとしても、追っ手は少ない方が良い。何なら、ここを新たな魔王城としても…



「駄目です、なりません。トウマ様は魔王を倒された勇者様なのです。全ての責はこの私、リーゼアリアにあります。ですから、親殺しの汚名も王女としての地位返上も甘んじて受けましょう。全ては私の罪なのです」



だが、それを止めようとしたのは俺に全ての罪をなすりつけるかもしれないと危惧していた少女だった。

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