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乗り越えていけるもの



ファルがミケの所為で前世に前々世を思い出し、俺たちに話してくれた。


ディナはあの時、操られていたのではないかなどと考えもしなかった。だが、今ははっきり分かる…【七大罪処刑そのちから】が手元にあるから。


ファルは前世は前世とミケと同じように割り切った。でなも、それと同時に【弓使い】のスキルを喪失したとイリーナが影響の有無を鑑定したところ判明した。


【森の守り人】という案内に必要なスキルを持っているから案内はすると言ってくれたが記憶を思い出した影響を考えて明日の出発として休む事にしたのだ。


その夜、小屋を抜け出し、冷えた空気を目一杯吸う。


あの時、正直言って俺も感情に流され過ぎていたのは否定しない。だからといって【聖竜波動】を持っていた俺にどの程度効果があったのか疑わしいし、そんな空論を逃げにはしたくなかった。結果が全てなのだ…俺は裏切られたし殺されたし殺した。そう割り切るのが一番だと思う…むしろ、恨みとか憎しみとか今 では持ち合わせていないんだと改めて感じた。やっぱり頭の何処かでずっと考えていたんだろう…俺は転生しても藤島燈真なんだと。


もし、ディナの好意を知っていれば、ユーカの気持ちを聞いていれば違った未来があったのかもしれない。残念妹リーゼアリアが言っているのはある意味俺の本質なのかもしれない。仲良しこよしでずっと変わらない関係を燈真としての俺は期待し続けていた。そして、それを押し付けて勝手に死んだ。俺は繰り返してしまうのが怖いだけなのかもしれない。



「あまり遠くまで出歩くと転移陣に引っかかりますよ?」



後を追ってきたのだろうか、ファルが後ろから声をかけて近付いてきた。



「ああ…そうだな」



この大森林には幾つかの転移陣が設置されていた。俺たちはそれを乗り継いで移動していたが、ミケがそれを間違えたから現在地は長耳族の集落からだいぶ離れて魔科学都市周辺の人里に一番近い地点に居たりするわけだ。


まあ、大森林は灯里たちが召喚された祭壇もあるが墓は無いから歩き回る事もせず明日はそこへ向かう予定なわけだが…



「…トウマさん、あまり悩まないでください。少なくともウチがディナや沙耶として生きていた頃はそんな顔してなかったはずです」


「そうは言っても割り切れないものもあるさ…むしろ、全てを思い出してスキルを忘れてしまった事で恨まれても仕方ないし」



長耳族の集落へファルは帰れない。パシリが逃げ出すような形で居なくなった上に戻ったとしても良い待遇は望めないだろう。聞けばファルには親兄弟も居ないというので俺たちに同行してもらう事にしたのだ。誘拐ではない。



「スキルは構いません…どうせ必要ないものでしたし。それに感謝してるんですよ、これでも。前世を思い出して、居場所があったんだって…トウマさんたちの傍に居たいって思えるし」


「それは姐御としてか?」



リーゼアリアとアリエルア、ミケの3人はファルが前世を思い出したと知って姐御と呼び始めた…そういえば現世の年齢聞いてないからそう呼んで良いのか判断に困るが、俺より年上って事はないと思う。たぶん…



「姐御はちょっと…仲間とか友達とかで。役に立ちませんから」


「役に立つとか、そんな事は考えなくていい」



俺はファルの頭をくしゃくしゃと撫でる。俺は知っていたのだ。なのに2度も追い詰めてしまった。ディナの弱さも姉小路さんの脆さも…今度こそ間違ってはいけない。逃げてはいけない。



「頑張らなくて良い。強がらなくても気負わなくても…あいつらだって姉として頼りにしてるわけじゃない。ただ好きだからそう呼んで近付きたいだけだ。変に気にするな、嫌なら俺が止めさせる」



リーゼアリアたちだって理解している。宇津木さんをいいんちょと、姉小路さんを姐御と呼んでいたのはもっと仲良くなりたかったからだ。宇津木さんは真面目そうで近寄り難かったし、姉小路さんは見た目や家柄で近寄り難かった…だからこそ、灯里たちはそう呼んで皆に2人の良さを周りに伝えたかっただけなんだ。まあ、姉小路さんはスタイル良くて嫉妬されていたみたいだし…


などと考えているとファルを変な目で見てしまいそうなので視線を逸らす。すると、3人と1匹がこちらを隠れて見ていた。



「さっさと出てこないと焼くぞ、こら」







わたしはすぐに解放されたけど、3人は日頃の行いが悪いから説教追加された。年下を姐御なんて呼ぶからだ。



「あの…イリーナさん」



ファルさんが声をかけてくれた。改めて見ると姉小路さんの面影が何処と無くあると思う。背とか胸とか顔以外も。



「はい。どうしましたか?」


「あ、えっと…気にしないでくださいね。沙耶はいいんちょを恨んだりしてません。満ちゃんって呼べなかった事を後悔して死んでいきました。皆に燈真さんが好きだったと言えなかった事を悔やんで死んでいきました。ずっと仲良しでいたかったのに隠したままで…」



先程、前世の事はきちんと謝った。その時は曖昧な返事しかもらえなかったけど、許されたと思うと同時に、同じだったんだなって思う。勿論、わたしたちは互いに誰が好きかなんて…口にしていたのは藤島さんだけだったか。でも、藤島先輩が好きなのなんて見れば分かる。わたしだって後悔してる。



「姉小路…沙耶さんの気持ちは分かります。でも、わたしたちはわたしたちです。今を生きてるんだから、目の前をきちんと見ないと。わたしたちは生まれ変わった。また友達から始められる。それに、この世界は一夫多妻も出来るし…生まれ変わても藤島先輩が、兄様が良い男だって分かってるんですよね。ファルとしても他の2人としても」


「…うん。頭を撫でてもらえて、やっぱりこの人が好きなんだってウチも思えたし。頑張ったなってずっと言って欲しかったんだなって…」



兄様は本当に罪作りな男の人だと思う。積み重ねたものが今世にも影響するわけだし…わたしだって、その1人なわけだけど。


これで残りは御字さんだけ。でも、彼女だけはわたしたちとは違う。アレクとユーカとしての面識はあっても藤島燈真としての兄様は彼女を知らない。それがちょっと怖い…それに今世の彼女は魔族・・だ。兄様と居た世界以上に厄介なこの世界で人間や亜人でない種族の問題もある。わたしには知らない事がまだある。それを知る人にも合う必要があるかな…

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