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亡国・フジシマ

翌日、俺たちは再び旅に戻る。前日の夜に気持ち悪い笑顔を止める条件に添い寝という枕代わりにされたが変な事はさせなかった。させたら過去の事も忘れるとか言ってきたが、それには屈しなかった。


洞窟だった場所から赤キツネで走る事半日、途中で川を渡り平原を越えたその先にあった。



「ここがフジシマだった場所にゃん」



かつて、猫耳族が統治し水の聖剣を管理していた王国・フジシマ…勝手に人の家の名前使うなと。そう問い詰めたいが、廃墟となって久しいこの場所には誰も居なかった。



「猫耳族は不遇だにゃん…亜人の中から2代目とはいえ勇者様が出たのに猫耳至上主義な女神あかりん教の所為でモフるためだけに沢山奴隷にされたにゃん。あかりんがタマ王女をモフモフしてた所為にゃん」


「「うっ…」」



あかりんズは思うところがあるみたいだが、あかりん教が歪んでるのが一番悪いだろ。気持ちは分からないでもないが。



「確かに猫耳は良いものでしたけど、全ては業なんです。猫耳をモフ…触って楽しむ習慣はわたしたち異世界人にしかなかった。わたしたちさえ召喚しなければ、せめてきちんと送り還す方法を確立していれば200年の間に人口爆発によって人間という種族が増える事も無かったわけですし」


「ある種の意趣返しなんだよね。そういう意味じゃ…普通に生まれてたらこんな世界じゃなくてもっと良い世界に生まれてたって意識が王国貴族の一部にも未だ根強くあるし」


「女神教はアベルティア発祥だし今は廃れかけてるもんね…お兄様も見たでしょ。勇者様を祀る神殿の方が立派だったの」



聞けば、あかりん教はあくまでもアベルティアの祖であるタマを救った灯里の功績と変わらぬ友情を伝えるものだったらしいが、あくまでマイナーな宗教だ。だからこそ総本山を離れれば解釈も歪むわけだ。更に利用されれば尚更。亜人や更に地位の低い魔族を私利私欲のために奴隷とするには使い勝手の良すぎる大義名分なわけだ。


まあ、灯里なんていう残念娘を女神と信仰する時点で根本的に終わってるんだが。とはいえ、考えると亜人たちにしてみればある意味灯里は恨み辛みの対象なのではなかろうかとも思えてくる。小夏の記憶を持つミケだけが特別で…ちょっと聞いてみるか。



「バカにしないで欲しいにゃん。あかりんには猫耳族だけじゃなくて亜人全てが恩義を感じてるにゃん。むしろ、2代目に水の聖剣を託してくれたからこそ亜人の今があるにゃん。だから、我輩は小夏として生きた事も誇りに思ってるにゃん。ここの根暗3人より遥かに過去を受け入れてるし魔王として義は通すにゃん」


「「「根暗…」」」



ミケは思った以上にたくましかった。まあ、負い目感じてなんてのは小夏らしくもなかっただろうし人間である3人以上に知る事もあるんだろう。


というより猫耳魔王ってどれだけの地位なんだろうなと今更ながら思うわけだ。



「やっとご主人様が我輩に興味を持ってくれたにゃん。だから教えてやるにゃん。東に暴れるヘビ居れば結んで配下に仕立て上げ、西に眩しいムシ居れば夜に光るなと蹴り倒し、南に火を吐くブタ居れば跳ね返して丸焼けにし、北に赤毛のキツネと緑の置物タヌキ居ればうどんとソバで懐柔する。そんな我輩猫耳魔王っ!」


「最後のが明らかにおかしい」


「お兄ちゃん、猫耳族はちょっと残念だから…」


「だから、その血を受け継ぐあかりんズも残念度が加速してるんだな、理解した」


「「酷い…」」



とはいえ、ミケがやったのは戦力増強するために色々な事をやってたわけだ。ある意味、人助けを含めて。



「兄様、納得しているところ悪いのですが猫耳魔王がしていたのは聖獣とまで言われた大人しい巨大魔物を虐めて従わしただけです。更にヘビの抜け殻を商人ギルドを通さず売りつけたり、夜中に街中を飛ばして安眠妨害するカブトムシ、度重なる山や森林でのボヤ騒ぎ、更にはうどんとソバの無銭飲食なんてのもあります」



訂正、小悪党な魔王だったわ。まあ、それは構わない。変に大事やらかして世界共通の敵とか認識されるほどではないだろうし…それに奏多が言っていた事も気にはなっていた。万が一、ミケと敵対なんて事になったら嫌だし。いや、なりかねない未来はすぐ近くまで来ているが…



「…そう考えると、凄いメンバーだよね僕たち。元王女に聖女に猫耳魔王に領主代行。それに加えて魔王とスライム殺しで誘拐犯の上に史跡ぶち壊しの魔王のお兄様だし」



アリエルアの俺に対する評価が厳しい気がする。でも、凄いメンバーなのは否定しない。後、そのメンバーが残念なのも…

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