魔王以上に兄として
「お兄ちゃん、何やってるのっ!」
「一応、世界が認める遺跡の1つだったんだよっ!」
「魔王にゃん、我輩以上の無慈悲魔王にゃん…」
「ここも観光地化する計画があったのに…あんまりです、兄様」
4人から責められる事になった。反省も後悔もしないが。当然だろう…
「こんなバカみたいに手の込んだもの作って、それで誰が犠牲になったと思ってるんだ。俺を先輩と慕ってくれ、俺の死を嘆き悲しんでくれた大切な奴らが死んだんだぞ。こんな洞窟にした連中の子孫だって滅ぼしたって構わない理由はある」
どのみち、洞窟はこうするつもりだった。召喚した連中、皆に勇者を押し付けた連中…もし、今の俺が400年前に行く力を持っていれば全てを捻じ曲げてでも変えていただろう。
灯里たちには笑っていて欲しかった。俺の死を乗り越えて幸せになって欲しかった…でも、召喚されてその幸せは訪れなくなってしまった。スキルなんてものがあっても、彼女たちは極普通の女の子だった。大人でもなければ創作物でしか戦いを知らない普通の子だ。それをこの世界の住人の押し付けで台無しにされた。
灯里は皆を犠牲にし殺したと、宇津木さんは考えが足りず友達を無駄死にさせたと、小夏は灯里を助けるために満足して死んだと言う…でも、召喚されなければそんな事は無かった。あの世界で生き続けていたなら、普通に喧嘩はしたかもしれないが仲良く大人になって俺の事を思い出に変えて幸せに生きていたはずなんだ。
もし、こうして皆と再会していなければ世界を破壊し尽くしていただろう。それほどの怒りはあるのだ。
「だからこそ、せめてお前らには笑っていて欲しい。じゃないとそうさせてしまったこの世界を許す事なんて出来ない」
結局は自己満足したいだけで、俺も押し付けてるだけなのだ。全部ぶちまけた。そして、笑顔を押し付けようとしてる。最低だな、ほんと…
「私たちもそうだったよ…世界が憎かった。お兄ちゃんを奪った世界が嫌だった。ドラゴンって何、普通の生活してたんだよ。朝起きてお兄ちゃんが居なくて笑顔になんてなれなかったよ」
「僕は…灯里は死に場所探してた。何度も手首切って睡眠薬とか飲んで。でも、皆が支えてくれた。それなのに…」
「わたしだって支えられてた。皆で支え合ってた。なのに、なのに…」
「難しい事はよく分からんにゃん。でも、小夏は笑おうって頑張ってたにゃん。最期まで笑って死ねたにゃん」
全員悲痛な顔してる。きっと俺もなんだろうな…俺が言えた言葉じゃなかったなと思う。俺たちは前世で繋がっているし、気持ちの大半は引き継ぎされたものだ。でも、だからこそ…
「過去とか前世とか関係ない。灯里ではなくリーゼアリアとしてアリエルアとして、小夏ではなくミケとして、宇津木さんやメアではなくイリーナとして笑っていてくれ、仲良くしてくれ。俺はそういう皆が見たい」
それは俺自身にも言い聞かせた言葉。藤島燈真でもアレクでもレトラでもなく今の俺としてどう生きたいか。俺の本質は結局何も変わってない。燈真であった頃もアレクとして生きていた頃もレトラになった後も、今でさえも…大切な人たちに笑っていて欲しい。
「それでも…」
「しつこい。それ以上言うなら召喚スキルだけじゃなくて前世の記憶も封印して奴隷商人にでも叩き売るぞ」
「お兄ちゃんが酷いっ!?」
「酷いのはお前らだ。自力で乗り越えて笑顔になれたら褒美に添い寝くらいしてやったのに…」
その呟きを聞いた途端、4人が作り笑顔になった…殴りたいほど気持ち悪い。やっぱり世界消そうかなって本気で思えてきた。
「まあ、姉小路さんと御字さんに再会するまでにきちんと考えとけ。もしかしたら、俺は2人を殺すかもしれないからな」
「「「えっ…」」」
イリーナ以外の3人は驚きの表情をしていた。まあ、俺だって出来るならそんな事はしたくはない。でも、そうなる可能性がある…その時に、俺を止められるのは間違いなくこいつらなのだから。止められなければ待っているのは過去以上に悲しいものというのに…




