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勇者召喚


この世界は1つの巨大な大陸と無数の島々から出来ている。



「今から、勇者召喚の儀式を行います」



大陸の最南端にして唯一の王国・アベルティアの王城地下に位置する場所にそう呟く少女が居た。


真紅の長い髪の少女。名をリーゼアリア・シルコット・アベルティア…アベルティア王国の王女であった。


この世界において、勇者召喚は禁忌であった。


400年前、200年前、100年前…この世界には3度勇者が関わる大きな戦があった。


400年前の大量の勇者召喚によって世界は平和になったが、それは後に悲劇を生むきっかけにもなってしまった。


帰れない勇者たちによって世界に人間という種族が生み出され、それまで世界に住んでいた四つの種族は淘汰されていった。


そして、2度の悲劇を生み出した。


だからこそ、新たな悲劇を生み出さないように勇者召喚は禁忌とされていた。


しかし、リーゼアリアは勇者召喚を選んだ。新たに現れた魔王とその手足を倒すために。


それが愚かな行為とはリーゼアリアも理解していた。だが、やらなければならない理由があった。


そのためなら命を捧げても構わないとさえ思っていたのだ。


召喚に必要な【勇者の秘石】と呼ばれる宝石のうち見つけられた1つを使い、祈りを込める。


400年前の召喚では7つを使い29人の勇者たちを召喚出来た秘石はこの世界の理を超えた代物だった。


しかし、召喚された勇者たちを還す術には使えなかった。


一方的な召喚によって400年前の勇者たちは命をかけた戦いに否応無く巻き込まれ命を散らしていった。


200年前の勇者は幼い頃に捨てられ、戦いに直接加わらなかった事が理由で追われた。


そして、100年前の勇者は…


それを繰り返してしまうリーゼアリアの心情は察するにあまりあるものだった。


事情を話した瞬間、召喚した勇者に命を奪われるかもしれない。それも覚悟していた。



「我が名はリーゼアリア・シルコット・アベルティア。彼の地より魔王を討伐せし勇者たる者を我が前に」



召喚の儀式には言葉は不要だった。秘石に魔力さえ注げば良いのだ。しかし、リーゼアリアはそう力強く言った。王女の矜持などではない。ただ、魔王に捕らわれた親友を助けたいがためだけに強い人を願っての言葉だった。


そして、リーゼアリアの魔力を注がれた黒い勇者の秘石がそれに応えるように光り輝き出した。












「奏多…これはないだろ」



神の世界に来るまでは気を失っていたのか意識は無かったが、今ははっきりとしていた。


まるで、エレベーターで地上云千メートルへ上昇する感覚の中で足元に紙切れがあった。


「勇者求人情報」と書かれたそれには様々な世界と時代の勇者募集が載っていた。


魔物退治やら召喚獣としてやら…まあ、その1つに赤マルがしてあって、そこが俺の向かう場所らしい。


神の世界を経由して異世界に送られるなんてのはよくある話だとか言っていたが、選んで良いのかと引き返して問いただしたかったが今更だ。


向かうのはアベルティア王国の地下、対象勇者レベルは20以上…と言われてもレベルの概念は前の世界に無かったからどこまで通用するのか分からない。


というより、王国の地下なんて兵士とか沢山待ち構えてるだろうと。


魔王の雰囲気を出すために厨二よろしく紫紺のローブに禍々しい剣…黒髪というのもよろしくない可能性だってあるし。



「…脱ぐか?」



言ってはみたが、それは無いな。ただの変質者でしかない。


変態勇者とか言われたらただでさえメンタル弱ってる今の状態では立ち直れない。世界消滅魔法使うくらいに…いや、マジで。


まあ、奏多たちが召喚されてから数百年とはいえ時間経過してるから痛い奴としか思われない可能性だってある。


よし、自棄だ。厨二キャラでいってみよう。どうせ、キャラぶれまくりだったわけだし構わない。


アレクとして勇者である事を自らに強いたり、レトラとして魔王の振る舞いをしたりしているうちに本来の自分がどうだったかを忘れがちになっていたのだからと自らに言い訳をして召喚されて名乗る名前を考えた。





数分後…



「…我が名はトウマ・アレクトラ。魔王を極めし者なり」



などといかにもなポーズを格好つけて言っていた。本人はそんな事を言う自らを恥じていたが…


その姿を見ていた少女に気付くのはそれから数秒後の事だった。

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