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第一話 『過去に戻った男』

 「チッ…あの野郎ども…」


 あの魔法使い共、相変わらず俺たちを盾に使いやがって。


 俺たち近接職は昔は超人気だった。子供たちはしきりに武道やボクシング等を習い、将来の為に頑張っていたものだ。

 俺もその一人で知り合いの拳闘士に頼んで教えてもらっていた。

 だが、魔法石に触ったあの日、俺の適性が高い物は近接職には無かった。

 ユニークスキルを持ってはいた。

 そのユニークが文字化けするという前代未聞の事が起こり、最初はチヤホヤされていた。

 が、その能力が分からず、使えないものと判断された日から俺はチヤホヤされなくなった。

 魔法職はこの頃あまりの弱さに注目されていなかった。

 一人で戦えない魔法使いと近接職。

 上の人達にとって、どちらが扱いが楽かは一目瞭然だろう。


 だから俺は近接職を選んだ。

 だが、俺は失敗した。

 後からチームなどを組むようになり、魔法職の有用性が判明し、使えなくなって数だけ多かった低級近接職はいい盾にされるようになった。


 「ハァ…俺、何してるんだろ。」


 まだ三十だから転職はギリできる。だが、高校がハンター高校で最終学歴が高卒の俺が雇ってもらえるとは思わない。

 努力が報われるのは少数の馬鹿強い近接職と魔法職の奴らだけだ。

 …今の俺は負け組だ。


 「チッ…タバコ吸うか。」


 俺は建物から出て側の道路で一服しだした。


 「ハァ……。」


 やっぱり、ハンターは辞めたくないな。


 俺はスマホで求人を探し、明日の探索の予定を入れた。


 「じゃあ、今日はもう帰るか。風呂屋寄ってこ…」


 その時だった。俺は身体が捻れる感覚と共に暗い折の中へ閉じ込められた。


 「ど、何処…」


 だが、焦りより先に驚きが来た。

 立てなかったのだ。

 捻れる感覚は錯覚じゃない。現実だったのだから。


 「…ッ!」


 痛みがない!下が熱い!夢じゃないな、何が起こった?!

 ……落ち着け…捻れる感覚、アレはダンジョンにはいる時の転送とかなり酷似していた。

 そして、この謎の空間。…聞いたことがあるぞ…これは、世界的にもかなりレアな自分とダンジョンがぴったり重なった瞬間に生成されることで起こる事象。

 詳しいことは分かってないが、一つだけ言える結論は、『生きて帰った奴は居ない』と言う事。

 …ハハッこういうことか!…なる程な。


 「こんな無様な人生有るかよ…クソッ…最後に墓参りくらいさせてくれたっていいじゃないか…」


 『確かにそうだな。人間。』

 「だろ?…え?」


 何とか頭を動かした先には一匹の大量の鎖に繋がれた一匹の狐…いや、九尾が居た。


 「モンスターか。喋るのは聞いたことねぇな。」

 『我はそんな下等生物では無い。それよりも良いのか?お前は時間が無いんだろう?』

 「モンスターじゃねぇのか?なら、天国への案内獣か?」


 あぁ…視界がぼやけて来た…後数十秒だな…


 『人間。今すぐ答えろ。お前は私の手を取るか?』


 手?それ何処だよ。お前は全部足やん。

 まぁでも天国に連れてってもらうのに逸れたら大変だからな。


 「あぁ。取る。」

 『契約成立。…いい選択だな。』


 そりゃどうも。







 …さて、天国はどんな所かな。


 そう言って目を開けて最初に見たのは見慣れた天井だった。


 「ほぅ。天国とは随分現実っぽいんだな。」


 起き上がって周りを見渡すと、いつも通りの机があった。


 「…あれ?」


 随分昔の子供部屋がこれそっくりだった気がするのだが…気のせいか?


 「確か、この机の引き出しを開けると…」


 教科書。


 「で、この一番下には…」


 友達が置いていったグラビア雑誌が隠されている。


 「…やっぱり俺の子供の頃の机だよね?」


 机の上の小型カレンダーを見る。

 ✕✕✕✕年4月。


 「…中3の最初…?」


 その時、誰かが上がってくる音がして俺は慌てて教科書を戻した。


 「何時まで寝てるんだ(かい)。今日からまた学校だろ?遅れるぞ。」


 そこに居たのは、もう何十年も顔を合わせられなかった人が居た。

 死ぬ直前まで会いたかった人がいた。

 俺は反抗期とか言うクソみたいなシステムのせいで、彼にお礼が言えなかったんだ。

 ずっと後悔してた。


 「…父さん…?」

 「何だ?お前、何で泣いてるんだ…?」


 俺はゆっくりと近づいていき、力強く抱きしめた。


 「父さんの匂いだ…父さんの匂いがする…」

 「?!…スンスンッ……俺そんなに加齢臭するか?」

 「するよ。けどね、それが良いんだ。」

 「え…何言ってんだ、キモッ…

 まぁ良いや。早く着替えないとレナちゃん来ちゃうぞ?


 …これから毎日消臭剤使うか……」


 そう言って彼は階段を降りていった。


 …俺は、死んで過去に戻ったらしい。


 これが夢でも良い。

 だから、もう二度と覚めないでくれ。

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― 新着の感想 ―
後からチームなどを組むようになり、魔法職の有用性が判明し、使えなくなって数だけ多かった低級近接職はいい盾にされるようになった。 →1人では弱い魔法職が馬鹿にされていた、ということはチームが組めるように…
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