第53話:今日から公私共によろしく!
このお話は主人公目線で語り口のように綴っております。
私は何が起こったのかわからないまま少しの間固まってしまった。
だって…だってよ?目の前でイケメン社長が跪いてプロポーズするだなんて誰が想像出来る?しかもここ、会社よ?廊下よ?ロマンチックなんて程遠いわ…。あのファーストキスの時のロマンチックを遥かに超えるプロポーズを想像していたのに……………。まるで成り行きのような……………。
だけど
だけど……………。ずっと指輪を持って歩いていたの?
ねえ……………。
ずっとプロポーズしようって考えてくれていたの?
私が色々考え込んでいると要さんの眉が下がってきて段々自身のなさそうな、まるで捨てられそうなわんこのようにすら見えてきた。
〝こんな大勢の人の前でプロポーズするだなんて……………。〟
なんて勇気がいったのだろうか……………。私は胸の中がとても熱くなった。
「……………はい…。私でよければ喜んで。」
そう言って彼に微笑んだ。その瞬間に一斉に周りが「おめでとう!」コールになった。大勢の方が祝福してくれている……………!
……………ん?あれ?私……………
「奈々?」
要さんが驚いている。
「どうしたの。奈々……………。泣いている…。」
そうか…。私、泣いていたんだ……………。私は要さんに静かに首を横に振って
「嬉しくて……………。」
そう答えた。
要さんは感極まったようで私の唇にキスをした。私はもう恥ずかしくて恥ずかしくて……………。だけどもうどうにでもなれって感じで要さんにキスを返した。
それはもう周りからひゅ~ひゅ~言われちゃったけど、誰も止めようとはしなかった。
いや…ここ、会社の廊下だってば……………。
そんなハチャメチャなプロポーズから三か月。
要さんがあの手この手を使って式場の手配やら何やらをして今日が私達の結婚式だ。相変わらず要さんの手腕が発揮された。けど、どれだけ早く結婚したかったのよ?もう、要さんたら……………。
普通ならこんな豪勢な挙式を三か月で手配だなんて不可能だけど、お金持ちは出来るのね~って、まるで他人事のように関心していた私。
ドレスを着て時間まで待機していた時に要さんも準備を終えて私に会いに来てくれた。私を見るなり要さんは
「綺麗だ…。奈々。もう誰にも見せたくない!」
そう言って抱きしめてくれた要さん。あなたの方こそとっても素敵よ。そう思った瞬間、
「やっと奈々を俺だけのものに出来る!」
と口走ったものだから、要さんのいとこである金山さんが
「こら!思っても口にしない!」
と言って軽く頭をはたいていた。
「そうよ~。そんな事言ったら奈々ちゃん、緊張しちゃうじゃない。ね?今夜は……………」
やめて~~~!石川さん、それはトドメを刺すようなもの……………。
賑やかな控室となった。
「新婚旅行は会社の事を気にせずに楽しんできてね!」
「お世話かけます。」
会長と石川さんが私達の代理を務めてくれるので安心だ。
「間もなく挙式を始めます。ご参列の方は席へお願いします。」
会場担当者が声を掛けに来てくれた。
その声を聞いて皆が参列席へと移動したので、あれだけ賑やかだった部屋がシーンとなって私と要さんだけが残っていたのだ。
神聖な雰囲気が部屋中に広がる……………。要さんはさっきまでとは違って真剣な顔で私に宣言した。
「奈々、今日から公私共によろしく。」
「はい。要さん。」
「愛してる奈々……………。」
要さんがそっとキスをしようとしてきたので
「ダメです。口紅が乱れちゃう……………。」
私が口紅が乱れてたら皆に何をしてたんだと想像されるのが恥ずかしくてそう言うと要さんはそっと私の頬にキスをして
「さあ、行こう!」
私に手を差し出してきた。私はふふっと笑って要さんの手を取った。出会った当初はよく「誇れ!」って言われてたなぁ……………。私は思い出していた。そんな私の事をずっと見てくれていた要さんを好きになるのに時間はかからなかった。そんな彼との結婚式。私は彼のお陰で自分を誇らしく想えるようになった。新しく踏み出すその一歩はいつだって要さん、あなたと一緒がいい…。
ふわり~
ベールを揺らす風。
今日の風は間もなく暑い夏がやってくるのを感じさせるようだった。
────完────
ご覧下さりありがとうございます。ラストの方、何だか走った感が否めませんが、二人は順調に愛を育み挙式に至りました。結婚後の二人をどうか想像してみてください。
その後の二人を書くのも楽しいかもしてませんね。気が向いたら挑戦してみようかな?
長らくの応援ありがとうございました。
明日は短編読切でちょっと切ないお話を一つ投稿し、3月1日より連載を開始しようと思います。
以前投稿していた作品の続きにあたります。
お楽しみに!
──── 慧依琉────




