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プロローグ
ここではない何処か
知ある者が感知出来ない遠い場所
そして管理する者にとっては近い場所
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「もう……持たない──」
女性の声が何もない空白の……白の空間に響く。
反響する物すらなく、その透き通るような──だが今はか細い声は何者にも届くことは無く消えていく。
「せめて……私の意識がある内に──」
白い空間と云ったが今現在──それは違うという事は周囲へと視線を転じた女性と同じ個所を向けると分かる。
(もう──あんなに黒く……)
女性の視界に捉えたのは空間の終わりの部分なのだろうか──端から淀む黒い存在が見て取れた。
「私が私で居られるうちに──」
女性はそう言いつつ片方の手を空間に翳す。
(くっ……)
もう片方の手は黒い存在の浸食を防ぐためだろうか──片方の手を自由にした結果押さえられていた黒い存在が女性へと浸食するスピードが上がったように思える。
「これで……少しは──私が例え壊れてしまっても持つはず」
(──お願い……どうか世界に少しだけでも安寧を)
女性の願いに応じてか掌から白銀の光と……何色かの光が生まれては──女性の翳した世界へと落ちていく。
そして、それを見届けた女性はそれが最後の抵抗だったのか……黒い存在は白い空間を──女性をも含めて加速度的に浸食していくのだった。




