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第47話『Dance in Zamaa』4/9

 

(役立たず共!! ヒトの言うこと聞かないで突っ込んで死にやがった!)


 時間稼ぎにもならなかったにしろ死んだ部下に酷い言いようの愚王。


「やばいですね、これはヤバい、やば過ぎでしょ」


 友人を殺された最後の護衛に語彙力などない。


 白髪の20歳。

 口元を大きな襟元で隠し目もグラサンで隠す。

 厨二的ファッション、全身黒のやばい奴。



『白髪鬼』 五寸(ごすん) 金丁(こんてい)


 異能〈虚限〉

 • 距離を操作する。

 • 時間なしで発動した瞬間敵の元に移動、又は敵から遠ざける事も逃げる事もできる。よって護衛に適している。

 • 礼司が幼少の頃に受けた攻撃である。



「お前だけは許さん、礼司に怪我をさせた張本人だからな」


 現在進行形で皆殺しの竜子さんに許されない。

 眉間に皺を寄せ無表情ではいられない。



「ふん!!! 無限空虚!!!」


 両手を竜子の前に出して何か技を出す。

 しかし見た目何も起きていない。


 ただ空間に揺れのようなものが現れる。


 なんの警戒もなく竜子はその揺れに触れる、するとそこから一向に前に進まない。


「見えない距離が発生しているな、成る程これがお前の異能か」


「そう!俺の異能〈虚限〉は距離を操作する!! 俺とお前の間には無限の距離が存在する! お前が王の元に届く事はない、これぞ完全護衛!!」


 空間自体は変わらない、ただおり紙のように距離という概念が多重に重なり無限と思(・)え(・)る(・)隔たりが存在している。


 竜子の表情は変わらない、動揺すらない。


「おい!! 五寸!そうじゃなくて僕をどこか遠くに逃がせ!」


「何言ってんですか、その力だと俺自身が王の場所が分からなくなるんですよ? 護衛ができなくなるんです、それじゃ護衛できないでしょうが」


「それでいいんだよ! お前に知られたら勇者に追跡されるんだから」


「な、何を言って! ダメだ!!」


 愚王でもこの戦いで竜子が負けるヴィジョンが湧かない。

 時間稼ぎの役割しかなく、間違いなく殺されると確信する。


「俺の異能〈虚限〉は無限の距離を爆発力に敵の前で解放して攻撃することができる!!死ね!」


 両手を重ね力を集中させる。



「お前の力に“無限”はない」


 竜子が解説を始める。

 五寸はたかを括っているのか攻撃の手を止めようとしない。


「さっきの即死男と一緒だ、敵にわざわざ自分の力を説明する馬鹿はいない。どんな力か知られずに正体不明の不意打ちをした方が効果的だからな。つまりお前の説明には意図的についた嘘がある、それは…………」


「うるせぇ死ねぇ!!!」


 ズゴ!


 空間と距離が連続して竜子に襲いかかる。


 全身に振動のような衝撃がぶつかる。

 だが、竜子の身体能力を凌ぐほどではなく若干後ろに下がった程度だ。


 ベッと汚く口内に溜まった血を吐き出す。


「成る程、真っ直ぐ当てるのではなく層を作って反復させて省エネで最大の攻撃力を完成させたのか、これは今の私でなければ骨がバキバキに割れていたな」


「その通りだ!! これが俺の力! 俺は護衛の中で攻防速全てにおいて最強!! 無敵!! あと何回か食らわせればお前を粉微塵にできる!! 死ね!!」


 ズゴ!!


 竜子は避けられる攻撃のそれを避けなかった。

 それは余裕ではない。


 怒りを忘れないためだ。


 ズゴ!!!


 距離が見た目にも離れていく、あの時の礼司のようにドアが直ぐ背後に。

 足についた赤い絨毯の皺が伸びる。

 その痛みに竜子の表情が今までにないくらいに怒りでつりあがる。




「─────────お前は、こんな攻撃を幼少の礼司にぶつけていたのか?!!」



 怒りの最頂点。



 元より生かすつもりなどなかったが、この男は敗北を刻(・)ん(・)で(・)か(・)ら(・)ぶち殺すと決めた。


 怒髪天、オーラで髪の毛が逆上がり人間如きに使う力を遥かに超えた魔力を貯める。


「ひぃ!!」


 瞬間、五寸は虎の尾を踏んだ、竜の逆鱗に触れた、そんな例えようのない恐怖を覚え全身が震えた。



 絶対的強者の理不尽な暴力。



 一瞬で攻撃の手をやめ逃げるための手に変える。



「無限空虚!!」


 瞬時に感じた実力差、それは今(・)ま(・)で(・)に(・)な(・)い(・)く(・)ら(・)い(・)の(・)距(・)離(・)を作る。


 そう、無限の距離ではない。


 仮に無限であるのなら地球を容易に破壊できる天文学的な熱量エネルギーを作れることになる。せいぜい数百キロメーター、それが無限空虚の限界値だった。


 しかし命の危機により4万キロメートルの距離を作ることに成功する。

 これは地球一周分の距離である。

 ただし距離だけの話なのでこれを質量にしても大した大きさにはならない、人間の血管全ての長さは二周半だというのだから。


 だが見えない距離が存在するのは確かだ、この力で持って自分だけでも逃げようとしたその時。


 安堵し、油断した。

 眼前敵の動きなど見ていなかった。




 竜子は一秒で地球を七周半回ることができる。



 光の世界──────────オン。




 光の速度を超え、1/10秒ともかからず一瞬で敵の前に現れた。


「んかわぁ!!!」


 凶悪な怒気を放つ竜子が突如距離を詰めたことにより変な声が出る。


(お前は簡単に殺さない)




 芦崎守礼無手勝流


 徒手空拳殺法


 音速拳乱れ打ち



 ぎゃん!!!!!!!!!



 音速による拳の攻撃。


 四肢に一撃ずつ、大胸筋に一撃。


 計五つの攻撃が一瞬で繰り出され一発分の音しか聞こえない。


 全身の骨が砕け内臓に骨がブスブス刺さる、しかし失血はさせない。


 いずれ死に至る必(・)殺(・)技である。


 ごきごきゃくきズムごみゅ!!


「あぎゃあああああああああっっっ!!!!!!」


 醜く転げ回り、消えない痛みに苦しみ出した。




「そこで礼司の肉体と心の痛みを少しでも味わって死ぬがいい」


 


 瞬殺ではなく致命傷で済んだ。


 そして愚王の護衛、ゼロ。


 恐怖の時間が始まった。


光の速度は真空中では秒速2億9979万2458mです。すごいですね。



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