第47話『Dance in Zamaa』3/9
即死では竜子の速度には対応できない。
即死では遅すぎたのだ。
もう殺すと決めていた竜子に勝てる早さはない。
礼司の魔王としての決断は竜子から思考すると言う余計なタイムロスを省いてくれている。
魔王が脳で勇者が手足。
見事なコンビネーションと言える。
竜子側に納得できる理由と褒賞を約束してあとは機械の様に動くだけ。
「ま、待てよお前!! 近づくな!」
茶髪の男、体は大きくハミィのいない時のまとめ役。
リーダーの雰囲気を持つ。
だが彼もまた女を道具としか思っていない。
しかし、今自分の前で仲間を惨殺した。
もう油断できる要素などない。
「そういえばお前にはまださっきの回答をしていなかったな?」
「へ?」
「へ、じゃない。お前だろう?さっきの即死バカに『女は男に絶対勝てない』とか吹き込んでいたのは?」
一応全員分の記憶を読んでいた。
正確には思い出した記憶だけに限られるが、本人もいつ話したかすら覚えてない男子同士の下卑た会話。
「男は女を貫くと言う構造上絶対女なんかに負けない。のだろう? まぁ女で処女の私はお前の友達を貫いてしまったがな?」
血の滴るエクスカリバー。
その恐怖より更なる恐怖。
(なんでお前がそのこと知ってるんだよ?!! なんでアイツに言わないで俺が言ったって知ってるんだよ!!!??)
竜子にとって礼司以外の男も女も同じ置物。
礼司の大事にする置物以外は区別が難しい、だから相手の気持ちをいちいち考えて話したりはしない。
だから本人に反論するなどと言う雑念がなく、問題を共有する全ての罪だとしか思っていない。
例えるなら、血を吸った個体の蚊に憎しみを持たず、蚊全体に殺意を持って殺虫剤で殺すのと同じ感覚だ。
否、虫にかける情もないからそれ未満だろう。
(異能!!! 全力解放!! 数ヶ月激痛に苛まれてもいい!! この女をぶっ殺す方法を教えやがれ!!)
『茶髪大賢者』 ツアー・ラピスドア
異能〈調査〉
• 個人、団体区別なく正確な情報を知る事ができる。敵に会う前に逃げる事ができるため護衛に有用。
• 個人の場合は異能の正体 (見れるのはひとつ)、身体能力、身長、体重、スリーサイズ、視力、病気などを知る事ができる。敵状視察、弱点調査に優れており喧嘩で有用。
• 団体の場合は人数、居場所、敵の場合は作戦などを知る事ができる。
• 上記の全てを知るには相当の頭痛、腹痛、腰痛などを受ける、女性と性的な事をすると和らぐ。
• 知る事ができる情報は彼の常識内のことに限る。
(激痛があってもこの女の体で慰めればいい!! 顔はいいからなぁ? 俺の相棒で毎晩泣かせてやるぜサイコ女が!!)
「分かってきたぜ?お前の体格、筋力、ちょっとだけ豊満なスリーサイズぅう!! 病気はなし! 最近思いを馳せた男の子が傷ついているのにそれを愉しんでる事に悩みを抱えている! じ、自分で殺したくなったら嫌だから?? クッソ病んでるなお前!」
「成る程な、私は自分をそう思っているのか、続けろ」
「は! 強がってられるのも今のうちだ! お前の弱点を丸裸にしてやる!!」
「ほう…………便利な異能だな」
(この力で俺はどんな局面でも生き延びてこれた、組織の秘密を握ってのしあがったり、女の弱点を掴んでヒトのモン奪ったりな!? 女なんざ俺の上でヨガるだけの肉人形だぜ!!)
竜子の弱点が術者にだけ見えるウィンドウで表示される。
「テメェの弱点は! 好きな男の子の命令! 魔王! 幼馴染の可愛さ! 自分より強い奴! 恋人の妹! 自分の性別! ホモになれない性別に生まれた事! 運命! 同年代女子と話が合わない事! 幼馴染みの性的趣味が気に入らない事! 幼馴染の姉にホモ談義で勝てない! …………なんだこれ?」
無駄に多いだけでどんなに見ても碌な弱点がない。
「乙女に弱点は多いものだよ、男にはそういうのわからんだろうな」
彼女は処女である。
(お前みたいな乙女がいるか! ふざけんな!! もう一回だ! 弱点調査! 調査!! 調査!!!!)
ズキン!!!!!
数分後に来るはずの脳内の激痛。
ツアーに異能の代償が前払いで襲ってくる。
圧倒的な能力差から来るリスクを払って得られた情報。
(な、なんだこれ?)
「ああ、それは言わなくていいぞ? 成る程やっぱりそれが私の本心か、ヨシ!! もうお前を生かす理由がなくなった」
弱点。
それは十分ではない事。
後ろめたい事、弱み。
竜子の悩みは自分の弱点を知ることができない事だった。
それはつまり自分の本心がわからない。
他者の心は読めても自分の心が読めない。
弱点とは自分の願いのようなモノ、ツアーの異能はその願望を知る良い機会だと思った。
ツアーは利用されたのだ。
おぞましい弱点がツアーの脳内に駆け巡った。
それを読心した竜子に訪れた表情は、満面の笑み。
そして直ぐに無表情に変貌し、殺意をぶつける。
やっと茶髪大賢者は思い至った。
この女を殺せる弱点は存在しない。
「意識がなくなる前に教えてやる、お前の抱いた女どもはベッドの上でお前にイカされた事はないぞ? おまえの独りよがりに合わせていただけだ、女とはそう言う生き物だ」
「な、何を!!?」
礼司に見せるようなエグい笑顔はそこになく淡々と事実だけを言う乙女がそこにいた。
「それに女は男のモノを優しく包み込む、ジャンケンで言うならパーだ。グーの男がパーに勝てるわけないだろうが」
男性との経験など全くない処女は女の敵に遠慮はない。
「ふざける、なが」
ブシュ、ぶぴゅる、
腹から血が噴き出す。
距離はとっていた、まさか目に留まらない速度で剣を振ったとは考えもつかない。
それが数秒前に受けた攻撃であったなど知りようもない。
どちゃ、ぼちゃん、どちょ、
中身を床に落として力が抜ける。
膝を落としそのままうつ伏せで倒れ込んだ。
茶髪は大量失血によりショック死する。
「まぁお前のものは、この程度だけどな」
中指を立てて処女は感情なく殺した相手に吐き捨てた。
(だが私の本心を知れたのは収穫だった、ククク礼司をどう料理するかこれで決まりだ)
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