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第14話 「厨二設定は忘れた頃にやってくる」

 ◆ ◆ ◆


 作って即落ちた魔王城から俺たちはどうやって帰ろうかと思っていたところ、妹のスキルを思い出した。


 玲奈の〈支配〉の異能は相手の了承が必要なコピー系スキルである、四人でスキルを共有している。


 玲美=活発女子らしく肉体強化!ではなくなんとドッペルゲンガー。自分以外もコピーできるぞ!


 九玲=お洒落なおませな子はなんと千里眼! 壁とか無視してなんでも覗けるぞ!! きゃークレーちゃんのえっちー!


 玲音=婦女子メガネのこの子がテレポーターだ、どこにでも確認さえできればいけるぞ!! 姉貴とキャラが被ってるけど玲音は現実と趣味はちゃんと分別できる子だ! つまり姉貴はできないってことだね! この社会不適合者め!


 まぁ…………全員この場にいないんですけどね?


 チート大好きなつくろう読者の兄貴達だったらこの三つの異能さえあればどんな事ができるか大体わかった筈、だから説明もしないしそんな物騒な事にはならないしさせない。


 まぁチート初心者の作者(おれ)にはよくわからんが。てか小説で描写してないから分からない。


 四人がそれぞれの三つの異能を自在に使える、ソレが玲奈の“支配”の異能だ。


 ってか俺の知らない他の奴隷状態とかいう二人の異能については教えてくれなかった。

 あとで玲美に聞いてみよう、あの子アホの子だからお菓子あげれば教えてくれるはずだ。


「テレポートと千里眼で家に帰ろう」


「お兄様の命令なら、どの様な命令でも聞きます」


「ええ……玲奈? そういう事は軽々しく言ってはダメです」



 なんだろう? 魔王の契約に洗脳とかそんなのなかった筈だが? 俺の知ってる玲奈はもっとお淑やかで俺好みの女の子に育てた筈だ! こんな獣の顔をした子俺は知りません!



「あー、レージは何というか近しい人間の評価を見誤る傾向があるぞ? お母様は知らないが父君も妹達も姉もみんなレージのイメージと乖離してる。割とクソだぞお前の家族」


「酷い言いようだな! これは多分俺のせいだ! 俺が特異点だから起きてしまった出来事で妹も母様もねぇちゃんも父さんも何も悪くない!」


「あとレージ、特異点がどうこう転生がどうこう言っているが私にはお前がありもしない妄想に逃げてる様にしか見えん! まぁそこら辺の事はレージん家に行って話そう! オラ! 愚妹! さっさと私も連れてけ! 言っとくが私をここに置いていっても光の速さで追いつけるぞ?」


 そしてこんな女主人公も見たくなかった、汚い、ホモは汚い! 百合を返して!


 手を繋いだ状態で瞬間移動すると同じ場所に着く事ができるらしい、便利だ。



 異能とは要は魔術なんだけど異世界人はこの異能を学術的に習得している、テレポートもドッペルも、千里眼はちょっと特殊だけど才能のある村人なら魔眼のスキルとして使える。


 そう考えるといかにこっちの世界から異世界に手を出すのが馬鹿げてるかわかる。


 俺が今まで関わってきた人、巻き込んでしまった主要キャラ、そして名前も考えてなかった他の生徒たち、そいつらがみんな異世界人に殺される。


「絶対に、そんな事させねぇからな!」




 ◆ ◆ ◆



 レージん家。



 ヴィン!!



 三人一緒にテレポートした。

 俺の家、家といっても前世のオンボロアパートと比べるもなくかなりの豪邸だ。

 3階建てで石膏でできたお城の様な家、噴水付きの薔薇の園があり使用人が十五人居る。


 ぶっちゃけこの星の王族だからな、むしろ慎ましいくらいだ。


 俺の部屋は2階の陽の差す部屋である。

 火星からでも太陽はちょうど良い暑さだ。そういうのも全て母さんが環境を作ってくれたんだよな。


「王であるお前がいなくなっても、魔王城は分解したりしないのか?」


「アレはただの自然現象みたいなものだからな、分解できるならしてやりたい、…………元に戻してやりたいくらいだ」


「成る程、ふふふ」


「?」


 何やらリューコが悪い顔をしている、頼むから余計な事はしないでくれよ?


 俺の部屋はすごく殺風景だ、スタイリッシュなデザイナーデスクにシングルベッドに音楽を聴くためのスピーカー、あとは同じ服が何着かあるだけの小さい衣装棚。



 広さも前世と同じくらいの八畳一間くらいの大きさだ。


 昔から広い部屋は嫌いだ、無駄も嫌いだ。


 だからこんな部屋に妹と幼馴染はいてほしくない。


「はぁーこんな小さな部屋に三人はキッツイ」


「四人だぞ?」


 え?




 男だ。


 ここに居ないはずの男が机の椅子に座っていた。


 リューコも玲奈もまだ気が付いていない。



 違う、()()()()()()()



 声が聞こえてない、存在を認識できていない。



「ふむ、成る程やはり君か」



 その男は雄に195cmはありそうなガタイの良い男、紅い血のような色の髪の毛、左眼を隠しているかの様に片側だけ伸ばしているが不潔感がなく顎以上に伸びていない。

 少し面長だが色の白い薄ら笑う姿が凛々しく美しい。


 更に男は仮面をかぶっている、仮面舞踏会にしていそうな目だけを隠す仮面。実は仮面の形になった魔族のツノである。


 そこまでして目を隠している。


 黒いスタイリッシュな鋼の鎧と黒いマントをしている、全身真っ黒だ。



「魔軍総司令 ジン」


「そうだよ、私の存在も知っているか。ならば君が〈特異点〉か」



 七魔人の組織体制に異を唱え独自に魔軍なるものを作ってしまった最強の魔族。


 出自不明、年齢不詳、能力未知数。

 何故なら作者(おれ)が何も考えずにぶっ込んだキャラだからな。


 強すぎる竜子からヒロインを奪いされる()()()()()()()


 神聖レズビアンの陽菜ちゃんも紳士的すぎるジンの態度にちょっとコロっといっちゃいそうになったりしたしな。ならなかったけど。


 寝取られは歪んでいる。この世の異物、私は認めない。


 …………よし忘れた!


「ぬ?レージ!今お前私の知らない男の事を考えているな!」


 め、めんどくせぇ!! てか目の前に堂々としているのにこいつら気付いてないのか? グルで馬鹿にしてるんじゃ? そんなことする意味ないか。


「いや、お前ら見えないのか?」


「無駄だよ、格下に私の気配()察知できない。そこの今代の勇者は私より格下だと言う事だ」


 そうだ、その通りだよ。

 俺がそう言うふうに設定した、結局最終局面までジンには勝てなかった。


 無限の魔力量を持つ竜子に対してジンは竜子の純粋な全力の魔力を超えている。

 竜子が巨大ドラゴンを瞬殺してる間にドラゴンの上位種を何百体も倒せる。



 無限の火力を持つ竜子を一瞬の超火力で殺す本当の暗殺者だ。



 相性が悪い、性格の相性も悪い、この二人を会話させてはいけない。


「ちょっと俺トイレ行ってくる」


「お、それじゃあ私もついてくぞ! ホモだしな! 連れション!! ツレショニングだ!!」


「くんな! そしてなんで現在進行形なんだ! アホか!」



 ニヤリとジンは笑い俺の後をついてくる。


 廊下に出て俺一人、ただっ広い廊下を、ジンと歩く。



「判断力があるな、君は。あの場で戦えばあの勇者を殺してしまうと思ったわけだ」



 悔しいがその通りだ。



 俺の小説には圧倒的な力量差があったが生かされた、と明記している。


 竜子には誰も勝てない、だが勇者は誰よりも強い訳じゃない。


 成長した竜子ならもしかしたら一矢報いれるかもしれないが今は無理だ。




 ってか何しに来やがった!!?


「俺を殺しに来たのか?」


「そんな勿体無い事しない、君と、そうだな話をしに来たんだ」


「話?あ…………ま、魔王城のことか?」


 そうだ、こいつは使い魔をよこして竜子の動向を監視していたんだ、もちろん今までのことも見られていた。つまり魔王城を作ったこともモロバレだ。


「んー、いや君自身についてだよ。特異点、そして作者、異世界転生、この世界が君の作った世界であると言う話だ」


 あー、そっちですか! 確かに言ってましたね! ジンに監視されていると言う使い魔設定忘れて普通に言っちゃってましたねー!! 


 馬鹿だ俺ー!


 ジンとか言うその時のノリで作った厨二の塊も忘れてましたよ!

『僕のかんがえたさいきょうの敵』ですよ!


 主人公より強くしちゃったんですよ!


「アレは竜子を騙す為の嘘だよ」


 そう言うしかない。


「心が読める相手にか?」


「あの時はそんなこと知らなかったんだよ、てか見てたなら知ってるだろ?」


「私には嘘に聞こえなかったな、今代の勇者は嘘だと判断した様だが君の仕草から見てそんな風には思えなかった」


 当たりだ。

 やばいなコイツ、竜子みたいに確定情報から判断するタイプとは真逆、1000年と言う人生経験からくる勘と閃きで行動するタイプだ。


 そうジンは前回の第二異世界戦争の経験者だ、と言う設定である。

 しかし具体的にどんな出自でどんな事をしていたかなどは全然考えてなかった。



 だから作者(おれ)でさえコイツの行動が読めない。



 毒者人気はかなりあったが設定に関しては一切言及されて、してなかった、はず。

 だがどんな能力があるかは知っている。


 先代勇者から奪った蛇眼が両目にある、つまり竜子と同等の見切りスキルがある。


 そして奪った蛇眼と培ってきた戦闘センスにより初見殺し系の攻撃を平気でカウンターしてコピーしてしまう。


 そして元の持ち主より優れた技にしてしまう。


 最速最新最強無敵、更に魔族の中でもかなり人望があり戦争になっても他の魔族に負けることがない。

 戦うことに関しては全く隙がない。


 つまりコイツに逆らってはいけない。

 だからと言ってへりくだってもダメだ。


「その話はお前とはしない、ソレは竜子とだけする話であってお前じゃない」


「ほう……」


 殺気はない、少し強い言葉に思えるがこれ以外思いつかない。

 ソレにコイツに本当の話をしても何の意味がない、コイツが俺の仲間になるとは思えないからだ。


「やはり城を得た魔王は違うな、先代の魔王二代目もそうだったよ」


「魔王城はやらないぞ」


 支配領域に巻き込んでしまった人の責任がある以上勝手な口約束などできるものか。


「ふふ、やはり一城の将はどんな理由があろうと城を明け渡しはしないか? まぁ私の用事はそんな事ではない、君にもっと大きな城を与えることができる。異世界と君達が呼んでる私たちの世界だ」



 なんだと?

 何を言ってるんだコイツ?


 あの魔王城はかつてカムイが初代魔王が作った魔王城だ、おいそれと軽く渡していいものじゃない。


 何かのブラフか? 魔軍司令の言葉じゃないしありえない。



「警戒しているか? 当然だな、城を得た将がこんな話をそのまま納得してくれる訳もない、ならば簡単に私の目的を話そう。芦崎礼司、幼馴染みの竜子、今代の勇者を裏切れ」



 な、何?


「このふざけた戦争システムを壁の解放されたこの期間に私は終わらせたい、人と魔族は互いに混ざり合い交易し争い殺し合うべきだ。私はこの魔法を“壁システム”と呼んでいる、人の命を数として見てソレを守ることばかりで憎しみを増大させる愚かなシステムだ、単なる先送りと言っていいな」


 俺の考えた設定だ、だが怒りは湧いてこない。

 小説と現実は違う。

 実際にこんな世界があってはならないと思いながら作った。


 そういう意味では自業自得なのかもしれないが。


「だから今代の勇者を殺害、そして君は魔王として魔族をこの世界の唯一の人間の種族として非魔族を根絶してくれ」



「は?」



 何を言ってるんだコイツ。

魔王は高身長イケメンに言い寄られて困惑している。

アレ? 本当にホモじゃね?



次回、第15話 「極論」



☆こんばんわ、オニキです。

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