第11話 「即堕ち☆魔王城」
〈魔王スキル〉
拠点建設 魔王城
• 部下ができた時点で発動可能なスキル。
• 魔王とその部下のステータス、スキルによって範囲、効果、頑強さが決定する。
• 部下が増えればそれだけ強大な魔王城になる。
スラム街にその魔王城を建てる。
作者である俺がざまぁ要因の礼司に授けた『魔王』の力は残存勢力が原罪の七魔人のみとなった時のものだ。
原罪の七魔人。
創作ものによくあるキリスト教が元ネタの憤怒 (ラース)・怠惰 (スロウス)・嫉妬 (エンヴィー)・色欲 (ラスト)・暴食 (グラトニー)・強欲 (グリード)・傲慢 (プライド)の名前をパクった魔王の配下だ。
要はこの世界より魔術魔法が発展した異世界での魔族の七大代表選手達だ。
流石にその時ほどの力はない、多分俺の予想だと一軒家サイズの魔王城になる筈。
べきん、めきき、ベキベキ!!
「ん? へ? ちょ、大きすぎ!!」
スラム街は大きい、そこに住む人は確か50億人。
総人口の半分だ。
都心の貴族領は土地面積は火星の3割程、つまり7割がスラム街となっている。
これは親父が無能なのではなく単に時間が足りないと言うだけ、土地を安い賃金で開発して自分の領土にして良いと言う開発速度優先の法案で働いてもらってる。
だから本来はスラム街ではなく未開発地域というべきだが、異能という力のためか火星の人間は若干選民意識が高い。
貴族社会の再誕だが開発を効率的にするにはこれが一番だ、立場というのははっきりさせたほうが動きは早い。
この火星の貴族連中は少しでも下の人間を探して見下さなくては気が済まないのだ。まるで火星の猿どものように。
つまり今火星は半分を半分の特権階級がざまぁしてるわけだ。
だが善悪を問う場合ではない、火星はさっさと人間の領土を広める開発途上なのだから。人権問題なんてのは全部終わってからでいい。
まぁそのなんだ、ここまでご大層に前振りをしたのはこの表記が、信じられないからだ。
魔王城 侵攻範囲〈火星未開発区〉
未開発区。
って事はアレだ、この魔王城を発動させたら世界の半分を手に入れてしまうってわけだ。
親父が躍起になって争いを起こさない様に開発してる土地を、何も知らないガキの俺が、妹の異常な才覚を利用して?
だがこの時の俺は何も考えることができなかった。
余裕がなかった。
たった一つの目標のために。
「魔王城を建設する」
たった一言。
それだけで全てが叶った。
俺の脳内に直接火星の地表の半分が映像として流れてくる。
その地に住う人間の文化、日常、開発計画の全てをぶっ壊して再構築する。
このスキルはあくまで拠点建設のため攻撃はしない、だから家や土地を魔王城に置き換えてしまうのだ。
黒い鋼の材質、建築というにはお粗末な接合箇所などない魔王城が建設されていく。
天高く針の様な屋根が数十メートルに建ち、禍々しい魔王城が出来上がる。
確か俺の小説だと禍々しい暗い空になる筈だがどうやらそこまでの力はないらしい。
「ふふふはははは」
「お兄様素敵ですっ!!」
「いやいや、流石だ我が妹よ!」
瞬間移動、結果的にはそうなった。
このスキルが発動した途端魔王城の中心である魔王の間に部下ごと移動する。
そう、女勇者は部下ではない。
だから一瞬で逃げ果せることが出来たのだ。
「ぜ、絶大ではないか玲奈よ!わ、我が妹ながらとんでもない才覚よ!」
待てこの妹、俺の作品に描写も無いくせに七大魔人の誰より才覚があるってことになるぞ? なんで? 怖い、この妹怖い!!
「いいえ、これはお兄様の力です♡ お兄様ぁやっとあのメス豚を見限って私と共に一生を……」
目がやばい!
ダメだ、もうわかった。
竜子の言ってた事は本当だった、俺に今まで隠してきただけで本性はヤンデレだ。
ってかなんでこんなにみんな病んでるんだよ!!
俺が魔王だからか? 作者自身が病んでるからか??! ちくしょう! こんな事なら何も知らなきゃよかった!
「れ、玲奈? だから幼馴染のことを悪くいうな、それにな」
それに、多分だがこの魔王城は………。
◆ ◆ ◆ ◆
「ふぅ、まさかこんなことになるとはなぁ?」
私は竜子、つい3日か4日前勇者と言うものに覚醒して異世界からの侵略者を返り討ちにした美少女だ。
そして今日、手っ取り早く学校の剣に封印されてた魔王を解放してやったら何故か私に攻撃してきて空中戦になった。
正直そんなに強くなかったがそんな私のことが好きだと言ってくれた超絶イケメン幼馴染の礼司が魔王になっちゃって大変。
魔女に騙されたり実はやっぱりホモだったり、説得しようとしたらレージの凶悪妹にまた騙されて魔王城を作っちゃった☆
でもさすが私の礼司、いきなりこんな強大かつ巨大なものを作ってしまうなんて、ああやっぱり運命を感じちゃうなぁ☆
私の魔眼は状況を完璧に把握できる解析スキルがある。
礼司の魔王城は世界の半分ちょいを征服している、うーん礼司は可愛いんだが周りにいる家族は全然可愛く無いんだよなぁ?
父親は言わずと知れた征服欲の塊、愛する者の命と自分の命を秤にかけ容赦なく自分の命をとった薄情者、お陰でそんなに礼司が泣いたか考えようともしていないクズ。
妹ズはまぁ、玲奈以外は普通だが全員礼司に惚れている兄コンプレックス。
全部礼司が可愛いのが、じゃあなくってかっこいいのが悪い。
姉は、あいつのことは今は関係ない。弟フェチが強すぎて考えたく無い。腐ってる。
なんで礼司みたいな純粋な奴が育つのかわからない。
あいつは自分を復讐者だとか言ってるが結局は家族を巻き添えにできないヘタレだ、それに私に見てもらいたくてイジメを斡旋してしまうくらいの天邪鬼ちゃんだ。
自分でしたことなのに結局良心の呵責に耐えられなくてずっと私に自責の念を持ってる甘ったれ。うん可愛い。
まぁそれを知ってて今まで愉しんでた私は相当な変態かもしれない。
だってあんな綺麗な顔、純真な心、曇らせたいって思うのが女の子として当然の感情だろう、グヘヘへ。私は悪く無い。
そうだ。
だからこうなってしまったのは私のせいだ。
私が曇らせたから逃避のために作った設定、ありもしないこの世界の作者だとか言う妄想からも解放させてあげなくちゃならない。
「グヘヘへ」
私の片白翼は光の速度を再現できる、魔法で宇宙を破壊する事もない。
だから一瞬で魔王城の中心、礼司の元に行ける。
だがそれだけじゃつまらない、絶望させてもっと曇らせたい。
なんでだろう?レージが魔王だからなのかな?
いや違う、運命の人だからだ。
運命なら何をしてもしょうがないよね?
「にひ♡」
ヴァン!!!
ゼロから音速に急加速した。
魔法で影響は軽微にできたが感情が昂った私はむしろ周りを保護しなかった。
レージを抱こうとしたボロ屋は一瞬で崩壊した。
眼前に魔物。
先々日やってきた校舎を包むレベルの大きさのドラゴンが二体。
色は黒く魔王城カラーといったところか?
この魔物は無から生み出されたものだ、魔王城は建設されれば魔物が湧き出しそれを倒せば資源になるしエネルギーにもなる。
魔族であれば普通に倒せるがこの世界の人間には不可能らしい。
だから勇者の私はそれを二刀両断した。二体だからな。
そして背後から迫る四体の小型黒ゴブリン、5歳児並みの大きさだが素早く必殺の毒の小さい刃物を所持している。
まぁ食らっても死なないが、それではレーちゃんを絶望させられないから気付いてないふりして。
ブジャ!!
予備動作すら見えない光の速さで四斬。真っ二つ。八つに八つ裂き肉塊の出来上がり。
「見ているか? レージィ? お前の手に入れた魔王城、出来たてほやほやの内に全てをぶっ壊してやる。私に対しての暴言の言い訳を考えたか? それとも私に愛の告白か? いやそれでも許さん、魔王城のど真ん中でガタガタ震えて妹の命乞いをする準備を済ませるんだなぁ、ok?」
何処から私を確認しているのか分かってしまう、どんなに離れていてもレーちゃんの思考が私に入ってくる♡
だから私はカメラ目線でスマイルを向けてやった。怖がってるみたいだけど計算通り。
魔物の数は666体、今六体殺したから110倍の660体。
火星の半分以上を持つ魔王の領地のど真ん中。
そこに剣山のようなカタチの魔王城がある。
大きさは小国一つ分程度、上から見るとすると横倒しになったカタツムリの殻のように螺旋構造に魔王城は建設されている。
音速で休みなく進んでも城の中は空間が歪んでて何週間かかるかと言う距離になっているのだ。
まぁ普通なら城の壁を破壊して進むのが常套手段なのだろうが私はレーちゃんの曇った顔が見たいので順路通り進んで魔物を全てぶっ殺す❤︎
音速の何千倍かと言う速度でな。
びゅん、
音を文字通り置き去りにした。
何も聞こえない、全てが遅く流れ魔物も私のエクスカリバーに斬られる前に音速の圧力で壁に押し付けられ圧死する。
ベチャ!グチャ!ドチャ!ビッチャ!!
小型ゴブリン 計 014体〈戦士系10体、魔術師系4体〉
大型ゴブリン 計 006体〈戦士系6体〉
ムカデ形モンスター 計 023体 〈即死系毒持ち体長2メートル〉
小型クモ形モンスター 計 056体 〈痺れ毒持ち30体 技巧罠系26体〉
中型クモ形モンスター 計 027体 〈痺れ毒持ち7体 技巧罠系20体〉
大型クモ形モンスター 計 014体 〈技巧罠系14体〉
小型動物形モンスター 計 050体 〈直立猿45体 犬5体〉
大型動物系モンスター 計 150体 〈直立恐竜120体 熊30体〉
小型オーガ 計030体 〈体長2〜3メートル〉
中型オーガ 計099体 〈体長4〜6メートル〉
大型オーガ 計120体 〈体長10〜23メートル〉
ドラゴン 計077体 〈体長200メートル級〉
ぜぇんぶ殺したった。
多分モンスターの数や配置はあの病み女がしたものだな、大型の強大モンスターを囮にして小型の毒で殺しにかかっている。
物量系作戦に見せかけたトラップ多めの魔王城だな。
まぁ知性のないモンスターだから全て見え見えの動きだった。
魔王の間への大扉。
凱旋門のような大きさのこれまた真っ黒な扉だ、この中にあの二人がいる。
出来たばかりの魔王城、たったの数分でモンスターを全てぶっ殺したった。
「即落ち魔王城、ぷひひひ」
「クックック、きっとこの門の中でビクビク震えているに違いない。可愛い可愛い私のレーちゃん♡ ホモ勇者のリューコがやっちまいに来てやりました、よっと!」
扉を村雨モードでぶった斬る。
66のパーツに分解してぶっ壊した。
崩れ去るパーツ、そのパーツを避けながら進んで中に入ると、誰もいませんよ? などと言うことはなく予想通り二人がいた。
予想外だったのは、妹が拘束されていたこと。
縄で縛られ猿轡を口に巻かれ床に転がされ放置されていた、悦んでいるのを見るにおそらく自分から兄の礼司にしてもらったのだろう。
そして無視してレージはそこに座っていた。
魔王の間の真ん中、魔王の座、仰々しいドクロや人間の苦しむ様を象ったデザインの椅子に礼司がドヤ顔で座っていた。
何やら黒い制服も着ている、詰襟の学生服を椅子の悪趣味なアレンジにした様な面白い感じの上下服。
チッ、せっかく私が引き裂いたのに。
「よう、礼司待たせたな?」
「ああ、待ちくたびれたぞ女勇者」
ふむ、色々気になる所があるがどうでもいい、私のレージがそこにいる。
それだけで唾液腺が爆発していた。
今度こそ犯してやる。
少年は本当に処……童貞を失ってしまうのか!
次回礼司の真の力が解放される? 安心したまえ!
女勇者には絶対敵わない!!
第12話 「朔者」…………の前に割り込み小話。
次回、『脳を破壊する可愛い妹』
☆こんにちはオニキです。
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※普段は16:00以降の投稿になります。




