割り込み小話 『脳を破壊する可愛い妹』 ❤︎
私はただの女。
この歪んだ世界のつまらない人間どもに生まれた異物。
それが私。
この世界にあるものは醜い私ともっと醜い人間ども。
この世で綺麗なものはたった一人、私を産んだ聖母、芦崎玲子。
彼女は異能の女王と呼ばれた最強の異能者。
一人にひとつの異能が常識の時代に知られてるだけで百以上の異能を持つ星の導き手。
この火星に生命を創り出した有能で、強くて、でも支配欲はない人だった。
父親の盾一はその逆で支配欲の塊、正反対のニンゲンだ。
正反対だからこそ惹かれ合ったのかもしれないが。
だが私はあの男が嫌いだ。
あいつは私が小さい頃から私に対して何か含む目で見てきた。
私が将来的にSランクになる異能〈支配〉に目覚めた時も目の色を変えて頭を撫でてきた。
「やはり私の子だな」とかなんとか。
その時に撫でられた頭の感触が気持ち悪くて忘れられない。
そして私の兄と姉妹も嫌いだ。
あいつら全員母様の愛を平等に持っていくから嫌いだ!
特に兄貴! 礼司!
アイツは異能にも目覚めない役立たずの癖にいっつも母様に甘えやがって!
でも血縁の中で一番母様に似てるから酷いことはしないでやる。
だけど一番大っ嫌いだ!! 顔見たらいつも噛みついてやるんだ!
姉貴は…………なんだかいつも本を読んでて気持ち悪い。
そんなある日、私は暴漢に襲われた。
私を誘拐しようとしたらしいが、まぁ返り討ちにしてやろうと思ったのだが。
何故か兄貴がでしゃばってきてなんか誘拐された。
それを助けようと母さんが誘拐犯を追って行った、まぁ母さんならあんな奴ら殺せるだろう。
そう思い何もしなかったのが私の選択ミスだった。
母様は死んだ。
何故? 母様はこの星を地球化してから体が弱ってきて凡人以下の力しかなかったからだ。
殺された、母様が殺された。
それを目の前で見た兄貴がサイコキネシスという異能を目覚めさせたがどうでもいい。
母様がこの世から居なくなった。
それだけで私は、もう、心が折れた。
原因とかはどうでもいい、それでもう私は部屋に閉じこもることにしたんだ。
「どうして、何故、救助を遅らせたのですか?」
その声が何故聞こえたのか分からない、兄貴が盾一に刃向かった全てが脳に流れてきたんだ。
誰がやったのか全然分からないが、それはリアルタイムで起きていることだと何故か理解できてしまった。
と、いうかこれは誰かの感覚ととっかえられている?
兄貴を吹っ飛ばした誰かの視点で見せられている、なんの目的で??!
嗚呼、それにしてもサイコキネシスぐらいの異能であの五人、最初のSランクと呼ばれる火星歴と同じ年齢のアイツらに敵うわけないのに、あんなに必死に、ぼろぼろに、なって…………。
「私は何をしているんだよ?」
力があると自惚れて、母様の復讐も考えず、ただ絶望して、見下した兄貴より前に進んでいない!
泣きもせず、恥を恐れ、怒りもしない、知った気になってる力自慢のガキ。
あそこで勇気を振り絞って感情的に獣のようになってるお兄ちゃんに比べてなんて矮小な心。
あの姿を見て国政云々、みっともないとか屁理屈を言う奴がいたとしたらそいつは何も分かってない。
お兄ちゃんを。家族の感情を。人間として一番大事なものを理解できていない。
「ああ、それにしても、なんてみっともない姿ぁ、あ❤︎」
◆ ◆ ◆ ◆
私はそれから心を一変。
お兄様を最大限に愛することにしました❤︎
ボコボコにされて入院したお兄様を看病し、常に一緒に。
体を捧げようとしましたがお兄様の方に知識がなく断念、まぁ10歳じゃ仕方ない、私は7歳だったけど。
もうちょっと大きくなってからにしましょう❤︎
そんなこんなで私は中等部に入学、異能もSランクの中で上位の力を発揮した。
まぁ、隠れた〈強奪〉〈隷属〉とかは公表してないけどね!
どうやら私は母様のように複数の異能を持てる体質らしい。
でもこれを言うと盾一にまた撫でられて吐くしかないから絶対に公表しない。
あれから適当な女をあてがってお兄様に性の知識を植え込む事にしました。
お兄様を私が育てるのです。
そう、私だけのお兄様を、くひひひひ。
嗚呼でも最近あの青髪の女、タキガハラ・リューコとか言うSランクの女!!
可愛い、おっと間違えました。
カッコいいお兄様にああいう蛆虫が湧くのは仕方ない! だが問題なのはあの女がどうしようもなく強いこと!
異能〈肉体強化〉
Fランクが大半のありふれた異能なのに、あの女に関してはその強度が尋常ではなく、しかも肉体が強くなるという簡素な異能の効果の為攻略法がない。
私の強奪は格下専門だからアレは盗めない、というか『同じ異能で勝つ』という条件があるから絶対無理だし全異能を総動員しても絶対勝てない。
そんな女がお兄様を独占している、心すらも。
お兄様があの女にちょっかい出しているのを知っている、そしてそれが小学生が抱くような『好きな子にちょっかい出す』という可愛い心理だということも知っている。
だがそんな事をしていてはお兄様はこの世界の王になれない。
あの女はお兄様を王道から人道に踏み外す豚!
いつかはなんとかしないと、でも…………なんでしょう?この気持ち。
お兄様の心が取られるかもれないというのに、コレは。
「あは❤︎」
◆ ◆ ◆ ◆
キモ豚、じゃなくて私は自分の姉にその想いの正体を聞いた。
「んー、どういう事それ?」
豚と言っても今は太っていない、母様が死んでから『私、前世あった!!!コレゲーム内転生だ!!』とか訳のわからない事を言って急に体を鍛え始めデブから筋肉信仰者になった。
まぁぱっと見は私と並ぶくらいの体型だけど、でも背は負けている。
この女の思想は私には理解できない、ただ一回「女装させられた男子の表情が萌える」とか言ってお兄様に黒い女性用ドレスを着させて辱めた時だけは意気投合したがそれだけだ。
まぁお兄様を好きなのは同じだがベクトルが全然違うのだ。
本人は『努力はチート、理解しようとするところから腐女子魂は始まる』とか訳のわからん事を言っているが理解したくない。
あと『ジン×レーを成立させる!』『てぇてぇ!』とか意味不明な事を腐った目で言う。お兄様を見ながら。全く理解できない、自分の弟を腐った目で見るとか性への冒涜だ。
本当はこんな筋肉豚腐れ女に聞きたくはないんだけどあっちはそういう知識が豊富そうだから聞くしかなかった。
私のこの特殊な性癖を。
「それはね、NTRよ。この世で最も唾棄すべき異物」
「えぬてぃーあーる? なんですかそれ?」
私はお兄様が私じゃない女に奪われた妄想をすると滾ることに気がついたのです❤︎
「実の妹じゃなかったら消し炭にしてたわ」
因みにこの豚の異能は〈発火〉である。リューコと同じ単純異能で異常な強さを持つタイプだ、私が苦手なタイプの異能者だ。
「それはNDKと何が違うの?」
「全然違うわ、いい事? それは気のせいよ? 好きな子が寝取られて興奮するなんて生物学上間違ってるの!! 純愛こそが! ホモ純愛こそがこの世でもっともてぇてぇのよ!! 絶望した!! 唐突な寝取られ話に絶望した!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!! …………よし忘れた」
いきなり真顔になって私は恐怖する。
ちなみに私は心の中でこの状態の姉を『純愛過激派』とカテゴライズしている。
「ふぅ〜危うく愛しの妹に脳を破壊されるところだった! いい事?! 絶対忘れなさい!!」
「あ、はい」
そう言われると、そこまで言われると逆に忘れられなくなる。
嗚呼❤︎ お兄様が、あのピンク色の唇が青豚にむさぼられた事を妄想したら……ヤッベ、また下っ腹が…………❤︎
嗚呼嗚呼嗚呼❤︎
全部あの時、ボロボロになった貴方を見た事から始まったのです。
最初はお兄様を、心を汚すだけで我慢できたのに。
最近はお兄様が他の女に奪われる妄想じゃないと満足できない体になってしまいました❤︎
体が成長するたびにどんどん母様の様な体つき顔つきになるお兄様!! 仕草も、何もかもお母様になっていくっ! ずるい! 姉妹の誰よりお母様に似るなんて!! 絶対誘ってる!
お母様を失った私の性欲の吐口は貴方しか無くなってしまいました!!
もう貴方以外どうでもいいっ!!
嗚呼❤︎
好きです❤︎ お兄様……私にとって、私だけの私に都合のいい、お兄様❤︎
私の脳はもう手遅れです❤︎
嗚呼、いつかお兄様の頭を撫でたいなぁ❤︎
きひひひひ❤︎
安心してください私が破壊するのは百合好き男子の脳だけです!!
次回、第12話 「朔者」
☆こんばんはオニキです。
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