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17話 2人きりの帰り道!

魔物の討伐後、現場は一気に慌ただしくなった。


ヘンリーは周囲の状況確認と報告のため、別行動で王都へ戻ることになった。



「ワシは先に戻る。後は任せたぞ」


そう言って、ヘンリーは別の馬車へと乗り込んだ。



残されたのは、琴葉とリヒトだけだった。



◇◇◇



帰りの馬車は、来た時よりもずっと静かだった。


車輪の音だけが一定のリズムで響く。



琴葉は窓の外をぼんやり見ていた。


枯れた大地は少しずつ緑を取り戻している。


さっきまでの恐怖が、まだ体の奥に残っている。



「……」



ふと、隣を見る。



リヒトはいつも通り無表情で座っていた。


視線は前。


微動だにしない。



(対面じゃなくて、横に座るんだ…。本当にこの人、さっき一瞬で倒した人と同じ?)



そう思ってしまうほど、静かだった。



けれど。



琴葉は気づく。



さっきより、少しだけ。


距離が近い。



馬車の揺れのせいかもしれない。


でも。



ほんの少しだけ、肩が触れそうだった。



意識すると、余計に落ち着かない。



「……あの」


琴葉は小さく声を出した。



リヒトがわずかに視線だけ動かす。



「さっきは……ありがとうございました」



言ってから、少し恥ずかしくなる。



リヒトは一瞬だけ沈黙し。



「……仕事だ」



それだけ答えた。



いつも通りの言葉。



なのに。



琴葉は少しだけ笑ってしまった。



「そっか」



その返事に、リヒトは何も言わない。



◇◇◇



また静寂が戻る。



でもさっきの空気とは少し違っていた。



重くない。



むしろ、少しだけ落ち着く。



琴葉はふと視線を落とす。



「……怖かったです」



ぽつりと、こぼれるように言った。



リヒトの指がわずかに動く。



琴葉は続ける。



「動けなくて」


「本当に何もできなくて」



笑おうとしたけど、うまく笑えなかった。



「……リヒトさんがいなかったら、たぶん」



そこまで言って、言葉が止まる。



リヒトはしばらく黙っていた。



そして。



「……見ていればいい」



短く言った。



琴葉は顔を上げる。



「え?」



リヒトは前を見たまま続ける。



「何かあったら、俺が止める」



それだけだった。



けれど。



琴葉の胸の奥に、少しだけ温かいものが残った。



「……うん」



小さく頷く。



窓の外には、帰り道の空が広がっていた。



その中で。



馬車は静かに進み続けた。

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