吐血
同族を食らうことで強くなる。そして例外として脳無しを食らうことでも強くなれる。そんな衝撃的な事実を聞き、俺の身はたじろいでいた。
「それが・・・俺を狙う理由か・・・!」
「そう蛇と言っておる蛇ろぉ。面倒なことに生きたまま食らいつかねばならんらしいからのぉ。其方だけは殺せんの蛇よ」
なるほど・・・これが執拗に生け捕りにこだわっていた理由か。それにしても生きたまま食われる・・・絶対に経験したくない。
「教えてくれてどうもありがとう・・・だがな、余計に捕まりたくなくなったわ。ここでお前は・・・倒す!」
俺は重心を下げ臨戦体勢を取る。今魔法のストックはあいつの操血魔法を吸いまくったおかげで結構ある。遠慮なく使ってやる。
「倒す・・・のお。今の妾に勝てるつもりでおるのか?そんなものは--傲り蛇!」
蛇姫は真正面から突っ込んでくる。
そんな馬鹿正直に来られて対抗しないわけがない。
「ディアス!頼む!」
「ああ、任させた!--集い反旗を翻す民衆--」
「--縛り血線」
ディアスから流れていた血が、ディアス自身を縛りつけ拘束する。
「くっ!解け、ない!」
「安心せい、解いてやる--殺した後でのぉ」
「今解きなさいよ!--不視無光」
レヴィが右手から光を放ち、視界を塞ぐ。
「チッ--忌々しい光蛇・・・!蛇が--仕込みは終わっておる」
照らされる光であまり見ることは出来ないが、何やら足元に手を置いているようだ。一体何を--
「血に沈みし血脈よ・・・今、還れ--血脈の森林図!!」
足元から何か飛び出してきたのが見える。それは急速に枝分かれし、逃げ場を塞ぐ。それにしてもこれは--
--そうか、これは血だ!カミラに透過されてからずっと足元に沈殿していた血を操り放ってきたのか!
「--ぐっ!」
魔法が間に合わず、背後の壁に叩きつけられる。俺やレヴィはまだ受け身の体勢が取れたが、縛られているディアスはまともに直撃してしまう。
「--がはっ!・・・はぁ・・・はぁ・・・くそ、まともに・・・ぐっ・・・!」
ディアスは相当ダメージを負ってしまっている。壁に叩きつけられたことで血が流れ、さらにその拘束力は増していく。
「ディアス!大丈夫--」
「--他人の心配とは--余裕蛇のぉ」
少し目を離した隙に、再び一瞬で距離を詰められる。蛇姫は右手を振りかざしている。--くそっ!早い!
「(だがどうせくるって思ってたからな!これなら間に合う!)--異類無礙!」
よしっ!今回は間に合った。これならダメージはなく反撃が--
「--これは、防げんの蛇ろぅ?」
そう言いながら、蛇姫は上げた腕を振り下ろす。瞬間、何かが俺の腹で砕けた音がした。また骨を折られたか?そう思ったが、そうではない。その音の正体は、岩だった。蛇姫は岩を血で縛りつけ、俺に向かって飛ばしてきたのだ。決して小さくはない岩、成人男性の顔くらいはあろうかと言う岩が砕けるほどの投擲で、折れこそしなかったが腹にダメージを負う。
「--ぐっ!・・・こいつ・・・俺の魔法に対応してきやがった!」
「魔法で攻撃せねばいいん蛇ろう?で有れば--」
蛇姫は体を回転させ顔面を回し蹴り、もう半周し左足で胸を蹴り付けてきた。
「--ッ!んだよ物理も得意なんじゃねぇか!(仕方ない、あの技を使う--)血溜まり演舞・人畜の--」
「--造形が遅い!--地血の空!」
小さな円形の球を作り、それを雨のように振り叩きつける。当てられた部分から血が流れ、それすらも小さな刃に変えられ、操血される。
「さて、これで眠っておけ!--血脈の葬場」
骸骨の頭蓋に見立てられた血の塊が、俺に向かい振りかざされる。魔法を使う余裕がない。これでは負け--」
「--聖絶!」
目の前で五重に張られた光の壁が、蛇姫からの攻撃を防いでくれた。
「レヴィ!助かった!--地血の空!」
「ぐっ・・・!!どいつもこいつも小癪な・・・!」
レヴィのおかげで助かった。次は俺があいつを助ける番だ。
「レヴィ、一瞬だけ任せられるか?ディアスの拘束を解きたい」
「分かった。お願いね!」
「ああ!そっちも頼んだ!」
俺はディアスのもとに駆け出し、レヴィは必死に蛇姫の足を止める。
「光陰如箭!」
光の矢を放ち、相手を止めようと試みるが、糸状に変化させた血で地面を砕き、それを持ち上げ攻撃を防がれる。
「随分とまぁ鈍い光蛇のぉ。その程度では、何も貫けんわ!!--血塊の槍!」
血の槍を作り出し、勢いよく投擲する。
「--ッ!聖絶!!」
複数枚展開するが、尽く破れていく。一枚、また一枚と、ジリジリとその距離を詰めていく血の槍。ここでレヴィは決死の覚悟をする。
「(私の役目は時間稼ぎ。であれば、こうするのが一番いい--!)--解除!」
レヴィは何故か、槍から守っていた壁を取り払い、自身の手元へと戻す。
「私に出来ること、それは信じて時間を稼ぐことよ!--放たれる十の光玉!!」
貼った残り全ての壁を払い、光の玉を蛇姫を挟み込むように放った。槍との距離はほぼない。これでレヴィに避けると言う選択肢は消え去った。あとは槍が自身の体を貫くのを待つのみ。その瞬間、レヴィは景色がゆったりと見えた。
「(もう距離がない・・・今から魔法を使っても遅いでしょうね・・・多分私もここで離脱だけど--頑張って、2人とも--)」
「異類無礙!」「集い反旗を翻す民衆達!」
俺は急いで駆け寄り、右手を思いっきり伸ばし、レヴィへの攻撃を防ぐ。そして、ディアスは蛇姫の動きを硬直させる。
「--チッ!先ほどから虫けらがわらわらと--」
「--その虫けらに、貴方は負けるんだよ!一ノ舞--刻桜印・両蘭!!」
どこからともなく現れたカミラにより、蛇姫は吹き飛ばされる。そして、まるでそれを知っていたかのように、丁度吹き飛ばされた位置に光の玉が向かっていた。
「--なっ?!貴様らぁーーー!!!」
攻撃は直撃し、発光と爆発が同時に起こる。砂塵が吹き荒れ、蛇姫の姿が確認できない。
「みんな!まだ倒せてないだろう!今のうちにあそこに打ち込め!!」
「打ち付ける民衆の糾弾!」
「闇照らす神々の涙!」
「三ノ舞--飛蓮!旋蘭・飛び胞子!」
各人が技を打ち込む。そして俺も、右手に電撃を込め、そこに血を織り混ぜる。
「雷神の一撃・纏血拳!」
4人全ての攻撃が直撃し、さすがに「やったか?」と期待した矢先、砂塵の中から影が現れる。蛇姫は傷を負ってはいるものの、致命傷といった怪我ではなかった。
「くそ・・・この耐久力ありかよ・・・?!」
思わず愚痴を溢さずにはいられない。それほどの耐久力だ。
蛇姫は口を拭いながらジリジリと俺たちに近づく。
「貴様ら・・・やってくれおったのぉ。・・・魔法で防がねばどうなっていたか--よいか!貴様ら全員!妾が一瞬で殺して--ゔぉはぁ!!・・・なん蛇・・・これは・・・?」
俺たちを指差し、殺すと宣言したとき、蛇姫は突然口から血を吹き出し、その場に倒れ込んだ。
「なん蛇・・・これは・・・?!まだ10分たっておらん蛇ろうが・・・!!」
突然の敵のダウン。10分と言うワード。それら全てが・・・俺にはよくわからない。




