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受付

 ついに今日は魔導祭本番。レヴィもアリアさんの家に集合し、一緒に会場に向かうことになった。


「--いよいよね、蓮、レヴィ!どう?緊張してる?」


「私はそんなにですね。言っても去年も出てるので」


 まぁレヴィからすれば、すべてのランクごちゃ混ぜだった去年までを経験してれば、今年のランク別ルールなんて緊張しないわな。


 レヴィが俺の方を向き、質問してきた。


「蓮、あなたはどうなの?ぱっと見緊張してそうには見えないけど」


「緊張?なにそれ美味しいの?って感じだ!みろよこの澄ました顔!いつも通りだろ?」


「ええ、確かにいつも通りのべ〜っとしてるわ」


「・・・のべ〜とした顔ってなに?」


 よく聞くけど実際どんな顔なのかいまいちわからんランキング上位に来る表現だと思う。


「まぁとにかく、俺は緊張なんか微塵も--」


「--そうだよね!今朝トイレにずっとこもってたのは緊張じゃないもんねぇ?」


 アリアさんがカミングアウトしてきた。


「き、緊張じゃねぇし!ただ今日試合だなぁって思ったら急に便意を催しただけだし!」


「・・・もう今日の試合いいから緊張の意味調べてきたら?」


 レヴィの当たりがなんかきつい。


「レヴィちゃん言い方が悪いわ僕傷つきましてよ」


「なにその喋り方・・・?」


 --と、ここでアリアさんが柏手のように手を打ち、俺たちの意識を戻した。


「ほらほら2人とも。話は終わり!そろそろ時間だぞ!」


 そろそろ時間、この言葉は緊張感を高める謎の魔力がある。誰でも使える魔法の言葉だ。


 それにより俺は緊張--はしてないがなんとなく一旦深呼吸した。なんとなくだ、他意はない。


「よし!そろそろ行くぞ!準備はいいか?2人とも?」


「ふぅー。はい!」「・・・大丈夫です!」


「よし、じゃあ行こうか!」


 こうして俺たちは会場へと向かい出発した。

 ----------------------

 会場は毎度お馴染みの闘技場。俺の初勝利の場所でもあり、初敗北の場所でもある。とにかく思い出深い所だ。


「--えっと、確かランクの低い順から始まるんですよね?」


 レヴィがアリアさんに質問をする。


 低い順、つまりEランクからSランクまで6ランク、それでもってそれぞれのランクでトーナメントが行われる。凄い時間がかかりそうだ。


「それにしても意外と観客いないんですね、凄いでかい大会って訳じゃないんですか?」


 俺の中に湧いた素朴な疑問をぶつけた。当たりを見渡すと実際あまり観客の姿は見えない。俺とディアス戦の方が来てたんじゃないかってレベルだ。


「最初はEランクだからな、興味ないから後から行くって奴が多いんだろうな。去年はこの時点で何倍も客がいたしな」


 ほんと、扱い悪いなEランク。ほんともうちょっと関心持ってあげて!そこから金の卵出てくんだから!


 俺が物思いにふけっていると、視界にディアスが映った。


「・・・ん?ディアス!久しぶりだな!って言っても1ヶ月そこらだが」


 声をかけられたディアスはこちらを向き歩いてきた。


「蓮か、まぁ確かに久々という感覚も分からなくはない。それより・・・ちゃんと修行したんだろうな?オレと闘う前に負けるなど許さんぞ!」


「へへっ!悪いな、俺は前とは別人のように強くなったんだぜ!お前こそ、俺と戦わないうちに負けないようにな!」


「蓮、一回戦敗退残念だったわね。でも大丈夫よ、来年もある!」


 何故かレヴィに微笑みながら励まされた。


「えっ?なに?なんで俺負けること確定?!」


「ごめんなさい、あまりにも負け役の台詞だったものだから・・・つい!」


「つい!・・・じゃねえよ!なに可愛く微笑みながら言ってくれてんの。余計に傷つくわ!」


「ふふっ!あ、そうだディアス!この間は本当にありがとう!改めてお礼を言うわ」


「この間?・・・ああ、ダンジョンの。そんな前のこと今更言わなくていい。それに前にも同じく謝られてるしね。特に気にしてないよ」


「ひゅぅー!イケメンだねディアスは。それに引き換え・・・」


 アリアさんがニヤつきながら後ろから揶揄してきた。正確には後ろなのでニヤついているのかは分からないが絶対そうだ。声色が浮ついてる。


「ほっといてください。どうせ俺はダメですよぉだ!・・・あっ、今気付いたが取り巻きもいたんだな」


「んなっ!もしかして取り巻きとは俺達のことか?!というか今更気づいたとはなんだ!」


「そりゃないっすよ指宿ーん!直接関わってないおれはともかく、カーフのことも忘れるなんて!顎を蹴り付けた中じゃないっすか!」


 いぶす菌?今こいつ俺のこと菌って言いやがったか?俺のこと病原菌扱いすんじゃねえよ、噛みつくぞコラ!


「コロニス!お前俺をいじるのも大概にしろよ!あんまりあれだとあれだぞ!・・・とにかくやめろ!」


「ディアス、お前の取り愉快だな」


「まぁ、そうだね。ほら君達、そろそろ行くよ。それじゃあ蓮、試合で会おう」


 ディアスは顔だけ後ろに向け、捨て台詞を吐き、離れていった。


「そうだ!約束忘れんなよー!俺、絶対お前に勝つかんなー!」


 去っていくディアスに大きめの声で届けた。それに対し、ディアスは歩きながら右手を少しあげ返答した。・・・なんだよちくしょう!様になんじゃねぇかよ。


 ディアス達と別れた俺たちは、会場に入った。ここで受付を行うらしい。イメージで言えば天下一武道会的な感じだ。


 ランクごとに受付の場所が違うようで、ここで一旦アリアさんとは分かれることになった。


「んじゃレヴィ、行こっか」


「えっ、・・・あ、ああ。そうね!」


 うーん。やっぱりなんか朝から変だよな。妙に当たりきつかったりなんかぼーっとしてたり。・・・風邪か?


 俺はレヴィの体温を確かめるため、手の甲を額に当てた。


「・・・・・・えっ?」


「ん〜、熱は無さそうだけど・・・顔色も別に悪く無さそゔぁ!」


 いきなり腹を殴られた。


「なに!急に!びっくりしたー!」


「び、びびびびっくりしたのは私の方よ!なに急に!セクハラ?!」


 レヴィは赤面し、身を守るようなポーズで後ろに下がった。


 まずい・・・今のはセクハラ案件だったのか・・・!二次元だとこれでこんなにたじろがれることないのにな・・・やっぱり元の世界で長いこと女子と関わりなかったからよく分からん。とにかく弁明せねば!


「ち、違うんだよ!なんか調子悪そうだったから熱とかあんのかなと思って!ただそれだけです!特に他意はございませんので!」


 レヴィは疑いの目を向けながらも、一応理解してくれた。


「・・・まぁ、あなたはそういうの天然でやるやつよね。許してあげる。だけど覚えときなさい!いきなりあんなのされるとびっくりするの!今後はやらないように!--分かった?!」


「りょ、了解であります!・・・で、レヴィさん?許してくれたのならもう少し近付いてもらっていいですかね?」


 物理的距離がたじろがれてから一切変わっていなかった。


「ソーシャルディスタンスよ。気にしないで。いずれ慣れるわ」


 ぜ、全然許してくれてねぇ!心理的距離が物理的に反映されている気がする。


「ふふっ!冗談よ!さっさと受付済ませましょう」


 レヴィはいつものように近づいてきてくれた。良かったー!変態扱いは免れたようだ。


 受付に向かい、歩いていると、急にレヴィは立ち止まった。


「おわっと!どうしたレヴィ?」


「その・・・あの・・・えっと・・・」


 レヴィは頬赤らめ、少しもじもじしながら、こちらに向いた。


「そ、その・・・ありがとうね。心配してくれて。それと、殴ってごめん」


 ・・・謝られた。正直時間差感謝は攻撃力が高い。うっかり惚れちゃうぞおい。


「いや・・・別に。仲間なんだし当たり前だろ?」


「・・・蓮・・・!」


「あっ!それと出来ることなら謝罪の方が先に欲しかったな、その方が萌えた!」


「萌え・・・?」


 レヴィは一瞬、?の顔を浮かべたが、その後笑い出した。


「はははっ!なによ萌って!・・・ほんと、あなたと喋ってると緊張とかどっかにいっちゃうわね!」


「あっ!お前緊張してたのかよ!1人だけ逃げやがって!ずるいぞ!」


「う、うっさい!ほらっ!さっさと受付行こっ!」


 レヴィは踵を翻し、結構な早足で受付へと向かっていった。その時のレヴィの顔は、なんだが凄い楽しそうに見えた。


「--ちょ待てよ!歩くの早えって!」


 こうして俺たちは魔導祭Bランクトーナメントの受付を終了、これでもう逃げ場はない。


「レヴィ、もしお前と当たっても手加減しねぇぞ!」


「当たり前でしょ!先輩冒険者として、姉弟子としてボコボコにしてあげるわよ!泣いてアリアさんに飛び込まないでね!」


 いよいよ、俺達の魔導祭が本格的に始まろうとしている。待ってろレヴィ、ディアス!・・・あと筋肉のおっさん。全員倒して優勝してやんよ!













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