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十神経

 爆撃音が国中に響く。熱を纏った衝撃が、その規模を物語っている。


「くそっ、なんだこの騒ぎ!・・・まさか十脳(セレブロス)の奴らが!」


 この時、俺は心の傷をえぐった。もしこれが俺目的の犯行なのだとすれば、やはり俺はここにいるべきではないのではないか?これほどまでに無関係な人たちを巻き込んでまで固執したいとは思わない。思えない。


 爆発の発生源へと辿り着く。すると、そこには3人の人影が薄らと浮かび上がった。


「人影・・・ってことはやっぱそういうことなんだよな・・・」


 嫌な予想が当たった。これで俺に居場所はない。・・・仕方がない、受け入れるべきだ。俺は意を決しその人影に呼びかけた。


「お〜い!お前らの標的はー!ここにいるぞー!」


 すると、俺の掛け声に合わせるように目の前で爆発が起こり、奴らを妨げる土煙が晴れていく。


「ーーへぇ、自分から出てくるたぁ、ちっとは肝の座ったやつじゃねぇか!ぶっ殺し甲斐がありそうだ!」


「暑苦しいね、溶けてしまいそうだ」


「・・・アナタ、自分から出てくるなんてバカなんじゃないですか?誰に聞いてもそういうと思うんですが()


 現れたのは全員見たことのない奴ら。右から順に、金髪で上半身裸、頭にはバンダナを巻いた輩のような口調なやつ。口元に鱗のようなものがついている。


 そして次に薄い青の髪に厚着をした中性的な顔立ちの男。なんだかやる気がなさそうに見える。心なしか体がぶよぶよしているのは気のせいだろうか?


 そして最後に白い髪に真っ白な、まるで中華服のような見た目の服を着た女。初対面でバカと言ってくる失礼なやつだ。真っ白な姿の中、左目のみが黄色だ。


「んで、お前らって何者?俺の予想だと脳無しを探しにきたモンスターさんだと思っているんですがどうでしょう?」


「んだよ分かってんのか、つまんねぇの。ま、殺すときにゃ関係ねぇがな」


「それにしても本当に釣れたね。脳が溶けてるのかな?」


「溶けてるのはアナタよ音。まぁ簡単に釣れたってのには同感だけど。ーーこんにちは脳無しさん。ワタシたちは十神経(ネルビオ)十脳(セレブロス)の直属の部下よ。因みにワタシは華蛇(かだ)様の十神経ーー音蛇(オトジャ)。よろしくお願いします音!」


 十神経・・・あの化け物たち10体とは別に、部下10体も倒さにゃならんのか?ーーそれにしても十神経、十脳じゃないってことは、まだ脳無しを食べてないってことだ。ということはつまり、今日ここに来たのはーー


「俺を食べて十脳に上がるため・・・ってことか?」


「へぇ、今の問答でそこまで辿り着くか!どうだ温粘(オンネン)、脳は溶けてなかったみたいだぜ!」


「比喩だよ比喩。そんなことも分からないなんて硬竜(コウリン)、溶けてたのはキミだったのかもしれないね」


 今のやり取りでなんとなく分かった。硬竜とかいうやつは竜頑(リュウガン)ってやつの部下で、こっちの青髪は鷹卑(オウヒ)ってやつの部下だ。華蛇の部下ってやつだけ合ってない気もするが、そっちの2人はそれでしっくりくる。


「まぁ何にせよ、こんなことされたら大人しく帰すわけにはいかねぇな。ついでに言うと、大人しく喰われてやる気もないから安心しろ」


 その時、硬竜と呼ばれていた輩がニヤリと笑う。


「今回はなぁ、俺たち十神経の中から早い者勝ちで脳無しを喰らうらしい。だからーー真っ先にオレが殺すぜ!」


 猪突猛進で襲ってきた硬竜。何をしてくるか分からない、俺は用心して異類無礙(アクセプト)を使用する。


「硬さはーー強さっ!!」


 奴は腕に何かを纏うということもなく、ただ殴りかかってきた。もしかして上司から俺の魔法について聞いているのだろうか?


 咄嗟に構えた俺の腕にやつの拳が直撃する。その威力は魔法を使っていないにも関わらず10メートルほど後方に吹き飛ばされた。


「ッ!魔法なしでこの威力かよ・・・そういう魔法に頼らない肉弾戦法してくる奴は苦手だぜ俺」


 奴は俺の魔法を聞いており、その対策として魔法を使わず殴りつけてきた。てっきりそう思っていたのだが、何故か奴は唖然として立ち尽くしている。


「・・・なっ・・・何で魔法が発動してねぇんだ?」


「・・・えっ?お前ら俺の魔法聞いてんじゃないの?もしかしてノープラン?」


 この光景に後ろの2体は呆れたり頭を抱えている。


「はぁ・・・何故竜頑様から聞いていないんです?バカなんですか?音ぇ?」


「それに関しては今更だと思うけど。まぁいいや、その分ボクが食べれる可能性が上がる」


 悪態をつく2体。俺も半ば呆れながら奴らを見ると、青髪のやつの腕が片方なくなり、裾が風で舞っていた。


「ん?お前その腕ーー」


「飲み込めーー拘束粘液(ボク)


 足元から突如粘り気のありそうな液状のものが飛び出し、俺を絡め縛る。


「くっ!何だこれ?ネバネバするしなんかうねうねしてんだが!くっそ、異類無礙(アクセプト)!」


 俺は魔法を発動し、この謎の粘液を吸収しようとする。しかし、どういうわけか一向にこの謎の物体は姿を消さない。


「なっ!なんだこれ?!魔法じゃねぇのか?」


「だから言ったろ?ボクだって。ーー拘束も済んだ、あれは魔法じゃ吸収できない。準備は万端。さぁ、爆ぜろーー自己犠牲的燃焼サクリファイス


 絡みつく粘液が急激に赤く染まり始め、何やらコポコポと音を立て始めた。


「ちょっと待て熱っ!!とにかく異類(アクセ)ーー」


「遅い」


 実際遅かった。魔法の発動は間に合わず、絡みつく粘液は完全に真っ赤に染まり、激しい音とともに爆発を起こした。


 とてつもない量の煙が上がり、周囲には爆発により飛来した地面や石がかけらとなりそこたら中に飛来する。


「おいおい、完全に粉々にして食えなくなったらどうするんだよ?殺していいのは外見までだぜ」


「あの火力では少なくとも生きていないでしょう音。あぁ残念、今回の十脳昇進は温粘ーーん?」


 音蛇が見たのは土煙越しの2つの人影。両方とも四肢の1つたりとも欠損していない。


 土埃が晴れ理由が現れる。そこには、彼らの目的が2つとも並んでいた。


「・・・へぇ、アナタがねぇ」


「くるとは思ってたけど・・・これは予想外だ。脳が溶けそう」


「・・・はっ!いいねぇ。ず〜っと俺はお前をぶん殴りたいと思ってたんだぜーー蛇姫(だっき)!!」


 土埃が晴れた時、俺も初めて理解した。俺は守られたのだ、蛇姫から伸びた血の壁に。


「蛇姫・・・!お前なんで」


「妾の行動を其方が管理する権利はない。ーーそれにしても、久しいのぉ。其方ら全員ーー妾以下じゃったのぉ」


 煽る蛇姫。考えの全く違う3体が、この時全く思いを抱いたーー


「「「この雌・・・殺す」」」





最後までご覧いただき、ありがとうございます!

ブックマークなどしてくださっている方々、更新の励みになっております。

皆さまがたくさん見てくださっているおかげで、100話まで投稿できました。いつも本当に励みになっています!

これからも出来るだけ毎日投稿頑張ります!


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