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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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紫電の邂逅


「どうするっ!? どうしよう!? どんどん数が増えてる気がするわ!」


 群れをなして追い立ててくるクローン体は数知れず。

 まるで通路に刻んだ足跡の分だけ数が増えているように思える。

 クローン施設が再起動して、また新しくクローンを造りだしているのか? それとも別のどこかに同じような水槽があって、そこからクローン体が合流しているのか。

 事の真相を知ることは叶わないけれど、とにかく今は逃げるほかない。

 あれだけの数を相手にできるほどこちらの戦力は多くないし、時間も暇もない。


「すこしでも足止めを」


 走りながら後方へと手を翳す。


「固定、構築、展開、始動」


 詠唱し、魔法を別働隊の後方――クローンたちの前方に顕現させる。


二天城壁にてんじょうへき


 通路を分断するように線が走り、光の壁が迫り上がる。

 それはオリジナルとクローンを遮断し、障壁となって立ち塞がった。

 しかし、光の壁は瞬く間に破壊されて粉々になって砕け散ってしまう。

 止められたのは先頭を走っていた数体だけ。

 後続のクローンたちによる物理的な攻撃によって突破されてしまった。

 属性攻撃に高い耐性を誇る魔法でも、物理的な衝撃にはめっぽう弱いからだ。


「なら」


 跳躍して別働隊の上空に移動し、右手をジャックフロストに変換。

 冷気を後方に放つことで分厚い魔氷の壁を構築し、クローンたちを堰き止める。

 けれど、これも瞬く間に融かされて突破されてしまう。

 風穴を開けたのは全身に炎を纏うクローン体。その足下には焼死した数体のクローン体が転がっている。

 奴らに仲間意識などなく、ただ己の欲望のみで動いていることが、それを見てよくわかった。

 奴らは撤退を知らない。群れが何割削られようと奴らは俺たちを追うのを止めたりしない。


「絶氷なら……でも」


 水と氷の複合技なら、奴らを堰き止められるかも知れない。

 しかし、複合技はかなりの魔力を消費する。気軽に使えるようなものじゃあない。後から後からクローンが増えている現状、悠長に魔力の回収もしている暇はないだろう。

 できればサンダーバードと戦うまでは温存しておきたい。

 そう結論づけて翼をはためかせ、先頭に舞い戻る。


「どうだった!?」

「どうにもならないな、今は逃げるしかない」


 それが最善だ。


「とにかく走れ! そうすれば――」


 打開策は見つかるはずだ。そう言葉を続けようとして、前方に嫌な色を見る。

 人工の光を反射して鈍く光る銀色の装甲。武装した遺物の数々が行く手を塞ぐように現れた。彼らは俺たちの生死を確かめるために送られてきたに違いない。

 そしてその前に姿を晒した以上、またサンダーバードの雷撃がくる。


「……いや」


 その様子はない。そもそも雷撃がまたくるのなら、遺物は偵察や巡回用の遺物でいい。なのに現れたのは武装した遺物たちだ。

 サンダーバードはすでに雷撃が意味をなさないことを予測して行動を起こしている。

 そして、俺たちの生存を知ったことで予測は確信に変わったはずだ。

 だから、サンダーバードは雷撃を撃ってはこない。

 むしろこのスタンピードを利用して俺たちを始末しようとするはず。


「だったら――」


 こっちにも、やりようがある。


「正面突破だ! 目の前の敵だけぶった切れ!」


 透明刀を携え、銀色の一群に斬り込む。

 決して足を止めることなく、眼前の遺物を斬り裂いて突き進む。

 殲滅はしない。そんな時間はないし、すべてを倒してしまっては都合が悪い。


「抜けたっ!」


 銀色の群れを正面から食い破り、突き抜ける。

 一点突破は成功し、遺物たちを置き去りにして先へと進む。


「追撃に注意しろい!」


 ドワーフの一人が警告する。

 後方に残した遺物たちを警戒してことだ。


「いや、大丈夫だ。遺物は後ろのクローンが始末してくれる」


 遺物とクローンは味方同士ではない。

 同じ施設から生まれたもの同士とはいえ、片方はサンダーバードに操られ、魔物を狩るように設定を書き換えられている。クローンにその気がなくとも遺物は襲い掛かるし、クローン自体も遺物に配慮を示したりしない。

 人工物とクローン体。二つがぶつかり合い、互いに互いをつぶし合う。

 それを背に駆け抜けた俺たちは、立ち塞がる扉を文字通り切り開いて通路から脱出する。


「ここは――」


 果てに現れるのは、見覚えのある光景だった。

 内壁を這うように伸びる丸太のような太さのコード。

 用途の見当すらつかない多種多様な機械類。

 数えるのも億劫になるほどの数多のアーム。

 組み上げられていく遺物たち。

 改造機械鳥を通して見た製造所の光景が、眼前に広がっていた。


「いよいよってところだな。サンダーバードの居場所は?」

「まだもうすこし先よ。方向は――」

「急いでくださいよ! クローンどもがそこまで来てる!」


 焦った表情で獲物を構え、別働隊のみんなが通路を警戒している。

 単純な数の暴力によって、遺物たちは排除されたようだ。

 クローンたちは先とすこしも変わらない様子で俺たちを追いかけてきている。


「えーっと、えと……あっちよ!」

「よし、行こう」


 リーゼを信じて指差された方向へと向かう。

 製造所内部を横断していると右から左からわらわらと遺物たちが現れる。

 通路から跳びだしたクローンたちも製造所内に氾濫し、そこら中で遺物とクローンとの戦いが繰り広げられていく。

 その最中、俺たちは正面の敵だけを切り伏せながら横断を続けていた。

 機械を踏みつけ、コードを跳び越え、アームをへし折り、組み上げられていく遺物を蹴飛ばした。クローンも遺物も一切の区別なく排除し、次なる空間へと足を運ぶ。


「――っ」


 扉を斬り裂いて進んだ先にある空間。そこで俺たちを待ち受けていたのは、イーエスを守護していた機械獣と同型の遺物だった。


「ここに来て、こいつか」


 今回は鹵獲の必要がないとはいえ、機械獣は紛れもない強敵だ。

 後ろからクローンたちも迫ってきている。無視していきたいところだが、こいつは俺たちを諦めたりはしないだろう。どこまでも追ってくるに違いない。


「しようがない。全員で一斉に――」

「いいや、ここはあっしたちに任せてくだせぇ」


 言葉を遮られ、同時にドワーフたちが機械獣に向かって駆ける。


「なっ、おい!」

「どうせ、後ろのクローンも止めておかなきゃならねぇ」

「俺たちがここで気張ります」

「だから、早いところケリをつけてくださいよ」

「頼みましたからね、二人とも」


 どんっ、と力強く背中を押され、ドワーフたちは機械獣に得物を振るう。

 背後からはすでに何体かのクローンがこの空間に入り込んでいた。こうなってしまっては乱戦は避けられない。それでも彼らはここで敵を抑えてくれるという。


「いきましょう、トオルくん。大丈夫、彼らはドワーフが誇る精鋭たちよ。このくらいピンチなんて難なく乗り越えられるわ」

「あぁ……そうだな」


 サンダーバードと戦うためには不確定要素は出来るだけ排除しておきたい。

 戦いの最中にクローンに乱入なんてされたら堪らない。

 ここは彼らに任せるべきなんだ。


「頼んだぞ」

「おうともさ! お前ら気張ろうぜ!」


 大斧が虚空を引き裂いてクローンを引き裂き、槍の穂先が機械獣の装甲に傷をつける。

 遺物もクローンもドワーフも入り乱れる戦場に俺たちは背を向けて駆けだした。


「あとすこし、もうすこし!」


 再び通路に入り、リーゼの案内でサンダーバードの居場所へと足を進める。

 角を何度か曲がり、現れる遺物を排除し、俺たちはついに到達した。


「この先に……」


 透明刀を振るい、巨大な鉄扉を斬り崩す。

 扉の残骸を避けながら奥へと進むと、広く空けた空間に出る。

 先の機械獣がいたところに似ているが、その規模が一回りほど大きい。

 中央には円形のフィールドがあり、それを取り囲むように様々な機械が配置されている。


「ここって、もしかして……試験場、なのかしら」

「試験場……あぁ、たしかに」


 言われてみれば街の工房にあった試験場によく似ている。

 造った遺物のテストを行うのに場所、ということか。


「ここに、いるのか?」

「えぇ、反応はここにある。ここにいるはずよ」


 手元の端末と睨めっこをしながらリーゼは答える。


「隠れてやがるのか?」


 サンダーバードを探して視線は彷徨い、自然と持ち上がる。


「ん?」


 見上げた天井、そこには不可解で大きな穴が空いていた。

 その破損具合からして建物の構造として造られた穴じゃない。何者かが作為的に天井に穴を開けたんだ。その何者かは古代文明の住人か、それとも――


「わかった! 上よ! この上にいる!」


 リーゼがそう叫んだ直後、天井の大穴から紫電が迸る。

 バチバチと音を鳴らして激しさを増すそれは、俺たちが追い求めていた者の来訪を意味していた。


「――アァッァァアアアァアァァアアアアッ」


 奇怪な鳴き声が木霊し、天井に空いた大穴から紫色の羽根が舞う。

 紫電を撒き散らし、周囲の機器を破壊しながら舞い降りる。

 サンダーバードは自ら姿を現した。


「ようやく会えたって感じがするな」


 紫色の大翼が羽ばたくたびに雷鳴が轟き、紫電を伴う風がびりびりと頬を撫でていく。

 その全長はサラマンダーを優に越え、羽ばたきの力強さはヒポグリフをも凌駕する。今まで戦ってきたどの魔物よりも、サンダーバードは強いだろう。

 だからこそ、俺にとって意味がある。


「あなたが頼みの綱よ、トオルくん。私も精一杯の援護をするわ」

「あぁ、頼んだ」


 イーエスで戦っているラシルドたちのことも心配だ。

 できるなら早期決着が望ましい。けれど、急いては事をし損じるとも言う。

 まずは冷静になってサンダーバードと戦おう。


「行くぞ」


 地面を蹴って飛翔し、サンダーバードと対峙する。

 つい俺がここに来た目的、ドワーフに協力した目的を果たす時が来た。

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新作を始めました。こちらからどうぞ。魔法学園の隠れスピードスターを生徒たちは誰も知らない
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