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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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幽霊の自宅


「こっちですよー」


 滑空するように地面すれすれを浮遊する梨々花。その後を追って、死者の国を歩く。

 城下町のどこにいても、視線を上に向ければ不気味な古城が目に入る。同時に、星のように輝く怪しげな火の玉も。

 この国に入った途端、空気が冷たくなったように感じるのは、たぶん気のせいではないのだろう。道行く人々は一人残らず半透明で、実体を持っているのは俺だけだ。

 だからか、誰もが俺に視線を向け、けれど拘わろうとはせずに通り過ぎていく。

 どうやら注目はされるものの、この国にいることを許されているようだった。それはそれであまり嬉しくないことではあるけれど。


「つきましたー」


 案内されて辿り着けたのは、これまた古びた一軒家。窓は割れ、天井が剥がれ、壁には枯れた蔦や蔓が這っている。生前の街にあればお化け屋敷として有名になっていたこと間違いなしな、そんな家だった。


「まぁまぁ、遠慮せずに入ってくださいー」


 そう言いつつ、梨々花は家の壁をすり抜けた。


「……」

「あぁ、すみませんー」


 したり顔で壁から顔だけを出してくる。


「入り口は反対側でしたー。ふっふー」

「まったく」


 やれやれと言った感じで裏に回る。そこにはたしかに玄関口があった。朽ち果てていて、もはや扉の役割を果たせていなかったけれど、彼女たちには関係ないのだろう。

 とはいえ、破壊することのないように慎重に隙間から骨格を通し、俺は半ば空き巣のように梨々花宅にお邪魔した。


「意外と散らかってないな」


 外観からして内側も、と覚悟していたけれど、意外にも片付いていた。

 まぁ、とはいえ、あくまでも外観と比較して、なのだけれど。普通に腐った木片とかが隅のほうに転がっているし。あれ、多分玄関扉の残骸なんだろうな。


「いらっしゃいませー」


 相変わらずの気怠げな出迎えの言葉を受け、リビングに相当する場所に到着する。

 室内、と言っていいかもわからない穴だらけの部屋には、淡い光を放つ人魂が浮かんでいる。蝋燭の代わりだろうか? これが普通の人間の家だったなら、迷わず悪趣味だと思っていたところだ。


「お茶でも淹れましょうかー?」


 そう言いつつ梨々花は台所へと向かい、棚を探る。

 幽霊が茶を飲むのか? という疑問を抱えつつ、その様を視線で追っていると、埃だらけの棚からそれらしい袋が出てくる。呑んだら絶対に腹を壊す奴だと、一瞬で理解した。


「いや、折角だけど遠慮しておく」

「えー、せっかく見つけ出したのにー」

「探さないと見つからない場所にあった時点でもう危険物だろ、それは」

「まぁ、いいですけどねー」


 そう言ってぽいっと袋をゴミ箱に捨てた。

 仮にも人に勧めたものをその場で捨てるなよ。


「じゃあ、本題に入りましょうかー」


 梨々花がベッドに座ったので、こちらも椅子に腰掛ける。

 酷くぐらついていつ壊れるかも定かじゃないが、まぁ大丈夫だろう。


「ケルベロスを倒す方法ですけどー。基本的にあれは死者の攻撃じゃ死にませんー」


 死者の攻撃では殺せない。


「冥界の番犬ですからねー。死者に対しては無敵ですー」

「無敵か……」


 俺の虹霓刀が封じ込められたのも、そのせいだったか。

 どれだけ魔物の遺骨を吸収しても所詮死人は死人だ。甦れた訳じゃない。死人である俺の攻撃は、ケルベロスには届かない。


「でもー、あなたは違うんですー」

「違うって?」

「あなたは死人ですけど、魂はまだ生きてるじゃないですかー」


 この状態をまだ生きているとするなら、たぶんそうだ。

 肉体は死しても、魂だけは現世に留まっている。


「よくわかったな」

「まぁ、私ゴーストなんでー」


 死者だからこそ、生者がわかるか。


「だから、かなり威力を封じられますけど、通るには通るんですよー。攻撃がー」


 続けて、梨々花は言う。


「あの虹色の刀。あれ、本当なら咥えられた時点で掻き消えちゃうんですけど、残ったじゃないですかー」

「……封じられはすれど、封じ切れはしないのか」


 例えるなら強制的に火力が十分の一くらいに落とされる感じか。

 十分の一は体感だけれど、ダメージを九割ほどカットされるのはかなりの痛手だな。それでも完全に無効化されるよりかははるかにマシだけれど。

 どうやっても長期戦になる。経験上、戦闘が長引いてよかったことは一度もない。


「そこで、ですー」

「うん?」

「私がお手伝いしますよー」

「手伝い? どうやって」

「ふっふー」


 不敵に笑いつつ、彼女はとある部屋の扉を開ける。

 そこにはくすみ一つない、とても丁寧に手入れされた、一つの楽器があった。


「私、得意なんですよー。ハープ」


 聞いたことがある。

 ケルベロスは美しい音色を聞くと、眠ってしまうのだ。

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