頼まれごと(前編)
今日もバイトだ。昨日は急に劇が始まって疲れはしたが、なかなか楽しいとは思う。大半の客も楽しんでみていると意見もある。何よりも悪いことの予防線になっているのはいいことだと思う。
「こんばんは」
今日は夜の勤務だ。夜勤だ。夜のピークよりさらにあとの時間。
「あぁ、今日もよろしくね」店長が声をかけてくれた。
この人はいつもいる。もしかして、ずっといるのだろうか。ここには何度も足を運んでいるのだが、どの時間帯に行ってもこの人はいた。もしかして、ほとんど休んでないのだろうか。
そんなことを考えながらも支度を終えた。店に出て今日も仕事だ。
あー、人来ない。暇すぎるな。まぁ、仕方ないのかもしれない。だってもう、夜中の2時だし。
自動ドアが開いて客が入ってきた。やることもないので、自然とその人の観察をしてしまう。怪しいわけでもなくワイシャツにスーツをいているだけだ。何か特徴をあげるなら、少し顔が格好いいというところだろうか。彼は何かを探しているのか、店の中を回っている。やっぱり怪しいかもしれない。
「あの何かお探しですか」何かあったら困るので声をかけた。
「ああ、いや、怪しいよね。実は今日は子供の誕生日で。あれがほしいて言ってたんだよ」彼は頭をかいている。
あれを言われても何かわからない。
「あぁ、あれといってもわからないよね。ほら、今人気のアニメでさ、なんか腕に巻いて遊ぶやつなんだけど、いかんせんそういうのに疎くてね」
「あー、あれか。少々お待ちいただけますか」
思い当たる節があったので休憩室に回る。従業員は裏と呼んでいたりする。
そこにはバイヤーが買ってい高く売らないようにという理由で裏に置いてある。それをもって店の方に出た。
「えっと、これですかね」
「ああ、ああ、それだよ。ありがとう!」彼はものすごく喜んでいた。
子供のほしいものがあってよかった。
「それではお会計、しますね」
その言葉にはい、と答えて、会計を済ませた。
「本当にありがとうね。おもちゃ屋は閉まってるし、コンビニに置いてるって同僚が言ってくれたからここに来て見てよかったよ」彼は本当に嬉しそうだ。
「あの、それでもう一つお願いがあるんだ」真剣な顔で彼は言った。
「何でしょう」
「このおもちゃなんだけど、子供と嫁が取りに来るので渡しといてもらえますか」
自分で渡せない理由があるのだろうか。
「今日はこの後からもう仕事なんだよ。嫁には連絡してあるからさ」
「そういうことでしたら、お引き受けしましょう」
「ありがとう!」そう言っって彼は店の時計を見た。
「もうこんな時間か。それじゃ、悪いけどお願いね」
そう言い残して彼は出て行った。
後編も見てくれたら嬉しいです。