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浮気をされた見習い魔女は、今日も元気にポーションを作ります 【第11章完結】  作者: サトウアラレ
12章

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宵闇の魔女の物語

薬師長との話の後、薬師長は王宮に戻るとそのまま薬師長を本当に辞めた。


陛下や師匠、その他主要な人達には根回しは終わっていたのだろう。薬師学園の事や、色々な事で忙しいと、コロンの方に引っ越してしまった。


「流石薬師長、いや、元薬師長か。私が小さな店を建てるのにひいひい言ってるのに、学園をもう建てているんですもの」


「ロゼッタ、何言ってるのよー。暇なのー?ロゼッタの引っ越しは今週ー?シラヌイ君達は今日から新店舗だったかしらー?」


「ええ。ランさんにも迷惑を掛けますが。なんだか、大勢で私の土地の整備と店を作ってくれましたので、信じられないスピードで建ってしまいましたよ。私も今週には向こうに引っ越しできますね」


「皆にはもう連絡済みー?」


「ええ。クリスさんにも相談したところ、転移が使えても、魔女や魔法使いが拠点とするにはやはり移り住むと言う事が大切の様ですからね」


「そうねー。多くの魔力を使う魔法使いや魔女がその場所にいると言う事は、魔力の淀みが無くなると言う事でもあるものねー。風のように、水の様に、そして流れ出る魔力を綺麗にするにはどうしたらよいのか、ロゼッタしっかり考えなさーい」


「むう。またランさんが難しい事を」


私が魔力の流れを考えていると、ランさんが演劇のポスターを指さした。


「ロゼッター?王都にいる間に、劇団の練習、行ってみなさいよー?」


「あ。そうでしたね」


「せっかく自分の舞台なんだものー。一度、観てみるといいわー」


「ちょっと恥ずかしいですけどね」


「恥ずかしがってきなさい。そして、自分の姿をよく見て来なさい。ロゼッタ。貴女は自分を外側から見る事が大切よー」


「外側?ランさんは難しい事ばかりですね…」


まあ、でもランさんの言う事は聞いておいて間違いない。急ぎの用事もないし、せっかくだからと、店を出て私がひょこっと王立劇場の練習場へ顔を出すと、俳優さん達が稽古をしていた。



「どうも、お邪魔していいのかしら?」


「これはこれは!!宵闇の大魔女様!!」


一人が私に気付くと一瞬、練習が止まったが、パンっと、私に声を掛けた年配の人が手を叩くと皆は私にきにせず練習を再開した。


「ラン様から、大魔女様が練習にお見えになると聞いていました、さあ、こちらへ」


「突然ごめんなさい。お邪魔じゃないかしら?」


「いえいえ、どうぞどうぞ」


ランさんが支配人に連絡をしている、と言っていた通り、私が顔を出したとたん、礼服を着た恰幅の良い男の人が走って私に挨拶にくると、舞台に近い席に案内され、私だけの劇が始まった。


「せっかくですので、最初から始めよう!」


その声掛けで、一度舞台が暗くなった。


一人きりになるのは久しぶりだ。あのホングリーの件からモラクスさんは出てこない。大分、無理も無茶もさせてしまったのだろう。私は理を全て無視して、大魔女になったのだから。


モラクスさんに負担を掛けてしまった。


モラクスさんとの絆は感じている。だけれど、モラクスさんは本の中で眠っているのか、本に魔力を流してもゴクゴクと飲み込むだけで、出てくることはなくなった。


アルちゃんからモラクスさんの本は私が預かり、マジックバッグに入れているが、変化はない。


優しくマジックバッグを触っていると、



「宵闇の大魔女様、ただいまから、本番通りの稽古をさせて頂きます。お目苦しい所もあるかもしれませんが、お愉しみ頂ければ光栄です」


「有難う」


私がそう答えると、「カラン、カラン」と、始まりの合図のベルがなり、舞台の傍にいる楽団が音楽を奏で始めた。



──物語は、王都の片隅の小さな薬局で薬を作っている見習い魔女が現れる所からだった。


暗い舞台の中央にパッと灯りが灯ると、一人の女の子が杖を振りながら頭を抱えていた。


『いけない!また失敗しちゃったわ!』


『あらら、何してるのー』


『材料、無駄にすんなよ?』


頑張り屋だけど、失敗ばかりしてしまう出来損ないの見習い魔女の女の子が舞台の上で笑っていた。


『はい!今度こそ!!』


見習い魔女の女の子は大魔女の師匠に怒られながら、優しい姉弟子に見守られ一生懸命にポーションを作り続けていた。


『あれ?あれは…』


ある日、魔女を夢見ていた女の子は恋人に裏切られている事を知る。


『なんで?どうして?』


見習い魔女の女の子は恋人と別れ、悲しみ、怒り、泣いていた。舞台でパタンと泣き疲れ、倒れ、心配していた姉弟子や師匠達にも眼もくれず悲しみに暮れていた。が、むくっと立ち上がった。


『私は何倍もいい女になってやるんだから!!!見てなさい!』


泣きはらした顔で女の子は杖を振って、一生懸命にポーションを作っていた。


『まったく』


『大丈夫かしらー?』


皆が心配してくれるのも気づかず、女の子は今までの何倍も努力をして、気付けば誰もが驚くような量のポーションを作り上げていた。


『こんな量を一人で?』


『信じられん…』


大勢が驚いている間に、コロンの端で起きた小さな魔物湧き。


軍団や大魔女の師匠が出発するのを見送る姉弟子と女の子はまだ、何も出来ないと、杖を握りしめていた。


『私は守られる人間になりたいわけじゃない。私は皆を守る。私は戦う。私は私の事が好きな私になるわ』


そう言うと、女の子は魔女になった。


音楽が流れ、女の子はどんどんと成長していった。頼りない見習いエプロンを外し、綺麗な魔女のローブを着た姿に変わった。


『さあ!ロゼッタちゃんのお祝いだ!』


玉ねぎ屋でのパーティーの様子では皆が楽しそうに踊っていた。


王族と思われる人達も出ている。軍団隊員も騎士と思われる人たちも、そして、素敵な獣人の男の子もくるくると踊っていた。


老いも若きも男も女もキラキラと笑う魔女の周りに集まり、皆が楽しく踊っていた。


大魔女の師匠はその様子を優しく見守っていた。


その後、魔女の女の子は大勢の友人が出来、仲間と笑い、そして素敵な人達も現れた。


『色々と見たい』


そう言うと、女の子は王都を離れ旅に出た。


魔女の女の子が魔法使い達や友人と幸せになれると思った時、舞台が急に赤く染まった。


不穏な音楽が流れ、叫び声や剣が何かを切るような音が聞こえた。


『なに?』


女の子が不安そうに王都に戻ると、オースティン大国に魔物湧きが起った事を知る。


『貴女はいかなくていいの!』


涙を流し、心配し引き留める姉弟子を残し、魔女の女の子は店を出ると杖を握りしめた。


『そう。行かなくていい。だけど、私は戦う事を選ぶの』


女の子は美しい髪をなびかせて舞台の上を飛ぶと、赤く燃える中へと消えて行った。


『私は宵闇の魔女。魔物達よ!滅びなさい!』



魔物の大群の中に降り立ち、杖を振るうと、一瞬で魔物を滅ぼし、軍団やホングリー軍団と思われる人達が魔物にとどめを刺し、大勢の領民を救っていた。


美しい光が舞台を包み、優しい音楽が流れると、魔物達は消えた。


魔女の女の子はオースティンを救い、王都へと戻った魔女に大勢の求婚者が現れていた。


『どうか、魔女様私の手を』


『お慕いしています』


『ずっとあなただけを』


「えー、こんなシーンは現実には無かったわね…」思わず私はぼそって言ってしまった。


その瞬間、舞台が急に暗くなると、魔女の女の子は観客に向けて手を差し出した。


『私は魔女。私は選ばれるんじゃないわ。私が選ぶ。私が選ぶのは、…貴方』


そう言って、魔女は優しく手を私の方に差し出して優しく笑うと幕は下りた。



──よかった。


パチパチパチ。


静かな劇場に私だけの拍手が響いた。泣きそうになった。泣くもんか、と必死に涙をこらえてしまった。



こんな、素敵な劇にして貰えてよかった。


幕が再び上がると、舞台上に俳優さん達が並んで皆で私に礼をしてくれた。私はパチパチと再び拍手をした後に、杖を振り、光の薔薇を作り、舞台上に降らせた。


「とても素晴らしかった。こんな素敵な劇にしてくれてありがとう」


私がそう言うと、俳優さん達の中には泣いて喜んでくれる人もいた。


「宵闇の大魔女様、有難うございました。宜しければ、舞台に上がって見ますか?」


「いいの?」


「ええ、勿論」


支配人に案内され、私は私の役で、私の何倍も可愛いと思う俳優さんと握手したり、現実の師匠よりもうんと背が高く、綺麗な師匠役の人と話したり、胸の大きさはランさんに負けていないランさん役の人からもサインを貰ったりした。


舞台の装置の説明を受けたり、皆の衣装を見せて貰ったり、獣人のお兄さんのサミュエル君役の人とも話が出来た。


長居していいのかな、邪魔じゃないのかな、と思ったが、支配人さんがお茶の準備もしてくれて、皆が使うという食堂で共にお菓子とお茶を飲んだ。


ゆっくりとした後、劇場の窓から私は出て、教会の塔に座った。



とても素敵な劇を見せてもらった。



王都の街を眺め下ろすと、夕飯の準備の時間なのか、煙が上がり、家路を急ぐ人々の流れを見る事が出来た。


皆の帰る場所を守る事が出来たのかしら。


私は魔女になって、欲張りになった。欲しい物が増えた。したい事も、行きたい所も、やりたい事も。


街を眺めていると、初めて師匠と会った場所を見つけた。


「あ、あそこだったわ」


唇をかみしめて、悔しくて、泣くもんかって思いながらも、これからどうしたらいいのか分からなくて。そんな時に上から声が聞こえて。


「よー。うちにくるか?」


師匠に声をかけて貰った時、逆光で師匠の姿は見えなかった。大きな影が見えて、師匠の小さな姿は何も見えなかった。


でも、気付いたら頷いていた。


それからランさんと出会って、師匠よりもランさんに色々教えてもらったんだ。


必死に仕事を覚えたっけ。


名無しの薬局の方に目をやるが、名無しの薬局は丁度見えなかった。ただ、ランさんと一緒に食べた、チョコケーキのお店は分かった。


「ロゼッタ。私はー、力もないのー。魔力もないのー。だけどー。私は私のやり方で人を救う事ができるのよー?それはね、知恵とお金よー」と教えてくれた。


「私はねー。やりたい事があるのー。だからお金が沢山いるのよー」


ランさんは謎に満ちている。


「ひひひ。ロゼッタ。お前は優しいなア。私とは違う。いいか、私を目指すなよ?お前はお前だ。真似もするな。欲しがるな。羨むな。お前は自分に勝てよ。お前は弱さを知っている。そういう奴の方が強いんだ。私はな、無敵だからな。弱さを知る事は無理だな」


ひひひ、と楽しそうに笑う師匠。師匠とランさんの事を私は今でも良く知らない。でも、それでいい。私はランさんの凄さも師匠の優しさも、知っているから。


王都の街を眺めていると、色んな思い出の場所が目を着いた。


良い事も悪い事も、楽しい事も悲しい事も。でも全部今の私になっている。


あんな事がなければよかった、そう思った事もある。だけれど、後悔はした事はない。


だって私には素敵な姉弟子のランさんと、最高の強い師匠が傍にいてくれたから。


パンと勢いよく立ち上がると私は東の空を見た。


「さあ、私の店へと向かいますか」


私は『名無しの薬局・雷鳴の聖域店』へと飛んだ。








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